隣の伊達さん
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春、それは別れの季節でもあり出会いの季節でもある。
今までは実家暮らしで堕落の限りを尽してきたが、この春から変わろうと心に決め、ひとり暮らしをするために二階建ての家を借りた。二階建ての家と言っても2LDKのそこまで広く無い、だがひとり暮らしには十分過ぎるくらいの家である。
何故マンションやアパートを借りなかったのかと言われると大した理由は出てこないが、この家を借りたのは新築だったからである。
実家暮らしだったため自分の荷物を新居へ運ばないといけなかったが、幸いそこまで多くもなく、ファミリーカーで2往復すれば余裕で運べる量だったので親の車を借りて運ぶことになった。
新居に着きドアを開けると、新築独特の匂いがした。今日からここで生活すると考えるとわくわくする。荷物を運ぶだけ運んで、次の荷物を取りに実家へ戻ろう。
2回目の荷物の輸送では、父に荷物を載せた車を運転してもらい、私は自分の車に乗って、効率的に車と荷物を運ぶことに成功した。
父はこの後用事があるようで、荷物を地面に下ろすとさっさと帰って行った。
さて、残りの荷物も運び入れてしまおう、と段ボールを持ち上げようとすると
「おや、君は新しくここに住む人かな」
と声をかけられた。
誰だろうと思い顔を上げると、そこには眼帯をした、夜の帝王のようなイケメンが立っていた。
驚いて凝視する私に、イケメンは蜂蜜色の目を数回瞬かせた後、はっとして話し始めた。
「ああ、いきなりごめんね。僕は伊達光忠。そこの家に住んでるんだ」
そこ、と指さされた方を見ると、私の家の隣に建つ一軒家があった。私の家とは違い、大きな家だ。
いや待て、そこに住んでいるということはお隣さんということなのか。隣人への挨拶は色々と片付いた後でしようと思っていたのに。人生とはなかなかうまくいかないものである。
「そうでしたか。まだ荷物の運び入れが終わっていなくて……、こんな状態で申し訳ありません。私はミョウジナマエです。今日からここに住むことになりました。よろしくお願いします」
本当は菓子折りを持って挨拶に行こうとしていたが、そんなもの今日は用意していない。なんてタイミングの悪さだ。しかも、高そうなシャツとスラックスを着こなすイケメン伊達さんに対して、私はスキニーパンツに安物のTシャツ、さらには軍手というオシャレさの欠片もないような格好だ。ついていなさすぎる。
そんな私の心境を知らない伊達さんはニコニコと笑って話を続ける。
「うん、よろしくねミョウジさん。僕のことは気軽に光忠って呼んでよ。ああ、荷物運ぶの大変そうだね、手伝おうか?」
話しかけられたときから薄々気づいてはいたが、このイケメンは大変にコミュ力が高い。一気に情報が流れ込んできて、混乱してしまいそうだ。
「えっと、あの、お気持ちは嬉しいんですけど、御迷惑になってしまうとおもうので、大丈夫です」
お気持ちだけいただきます、と言おうとしたが、それを言う前に
「迷惑になんてならないよ。むしろ暇なんだ。手伝わせてくれないかい」
と完璧な受け応えをされてしまい、
「じゃあ、お願いします」
と答えるしかなかった。
イケメンでコミュ力の高い隣人は見た目よりも力持ちらしく、私が一つ運ぶのがやっと、という重さの段ボールを一気に2つ、ときには3つ運んでいった。おかげで想定した時間よりもだいぶ早く終わった。ラッキーだったな、私。
イスやお茶の1つでも用意出来れば良かったのだが、あいにく荷物はまだ段ボールの中なので、何も無い玄関で立ち話しかできない。
「ありがとうございました。おかげさまでかなり早く終わりました」
そうお礼を言うと、ニッコリ笑って
「ううん、僕も良い暇つぶしになったし」
と返してきた。
「何か御礼が出来たら良かったんでしょうけど、本当にすみません。落ち着いたら、後で改めてご挨拶に伺いますね」
伊達さんには、考えていた菓子折りよりももう少し良いものを用意しよう、とそう思った。
「お礼なんて良いよ。あっ、でも、うちに来るなら三日後以降にしてくれると嬉しいな。明日と明後日は僕、家にいないからさ」
挨拶する上で相手の都合を優先するのは当たり前のことなので、もちろん、と返す。
「そうだ、LIME交換しようよ。この辺の地理にも慣れてないと思うから、何か困ったことがあったら頼ってくれていいからね」
そう言って、流れるような動作で無料通話アプリLIMEのアカウントをお互いに登録すると、「それじゃあ、またね」と言って去っていった。
なんだか嵐のようなお隣さんだった。けどまぁ、悪い人ではないのだろう。今後のご近所付き合いは円滑にいきそうで、安心した。
今までは実家暮らしで堕落の限りを尽してきたが、この春から変わろうと心に決め、ひとり暮らしをするために二階建ての家を借りた。二階建ての家と言っても2LDKのそこまで広く無い、だがひとり暮らしには十分過ぎるくらいの家である。
何故マンションやアパートを借りなかったのかと言われると大した理由は出てこないが、この家を借りたのは新築だったからである。
実家暮らしだったため自分の荷物を新居へ運ばないといけなかったが、幸いそこまで多くもなく、ファミリーカーで2往復すれば余裕で運べる量だったので親の車を借りて運ぶことになった。
新居に着きドアを開けると、新築独特の匂いがした。今日からここで生活すると考えるとわくわくする。荷物を運ぶだけ運んで、次の荷物を取りに実家へ戻ろう。
2回目の荷物の輸送では、父に荷物を載せた車を運転してもらい、私は自分の車に乗って、効率的に車と荷物を運ぶことに成功した。
父はこの後用事があるようで、荷物を地面に下ろすとさっさと帰って行った。
さて、残りの荷物も運び入れてしまおう、と段ボールを持ち上げようとすると
「おや、君は新しくここに住む人かな」
と声をかけられた。
誰だろうと思い顔を上げると、そこには眼帯をした、夜の帝王のようなイケメンが立っていた。
驚いて凝視する私に、イケメンは蜂蜜色の目を数回瞬かせた後、はっとして話し始めた。
「ああ、いきなりごめんね。僕は伊達光忠。そこの家に住んでるんだ」
そこ、と指さされた方を見ると、私の家の隣に建つ一軒家があった。私の家とは違い、大きな家だ。
いや待て、そこに住んでいるということはお隣さんということなのか。隣人への挨拶は色々と片付いた後でしようと思っていたのに。人生とはなかなかうまくいかないものである。
「そうでしたか。まだ荷物の運び入れが終わっていなくて……、こんな状態で申し訳ありません。私はミョウジナマエです。今日からここに住むことになりました。よろしくお願いします」
本当は菓子折りを持って挨拶に行こうとしていたが、そんなもの今日は用意していない。なんてタイミングの悪さだ。しかも、高そうなシャツとスラックスを着こなすイケメン伊達さんに対して、私はスキニーパンツに安物のTシャツ、さらには軍手というオシャレさの欠片もないような格好だ。ついていなさすぎる。
そんな私の心境を知らない伊達さんはニコニコと笑って話を続ける。
「うん、よろしくねミョウジさん。僕のことは気軽に光忠って呼んでよ。ああ、荷物運ぶの大変そうだね、手伝おうか?」
話しかけられたときから薄々気づいてはいたが、このイケメンは大変にコミュ力が高い。一気に情報が流れ込んできて、混乱してしまいそうだ。
「えっと、あの、お気持ちは嬉しいんですけど、御迷惑になってしまうとおもうので、大丈夫です」
お気持ちだけいただきます、と言おうとしたが、それを言う前に
「迷惑になんてならないよ。むしろ暇なんだ。手伝わせてくれないかい」
と完璧な受け応えをされてしまい、
「じゃあ、お願いします」
と答えるしかなかった。
イケメンでコミュ力の高い隣人は見た目よりも力持ちらしく、私が一つ運ぶのがやっと、という重さの段ボールを一気に2つ、ときには3つ運んでいった。おかげで想定した時間よりもだいぶ早く終わった。ラッキーだったな、私。
イスやお茶の1つでも用意出来れば良かったのだが、あいにく荷物はまだ段ボールの中なので、何も無い玄関で立ち話しかできない。
「ありがとうございました。おかげさまでかなり早く終わりました」
そうお礼を言うと、ニッコリ笑って
「ううん、僕も良い暇つぶしになったし」
と返してきた。
「何か御礼が出来たら良かったんでしょうけど、本当にすみません。落ち着いたら、後で改めてご挨拶に伺いますね」
伊達さんには、考えていた菓子折りよりももう少し良いものを用意しよう、とそう思った。
「お礼なんて良いよ。あっ、でも、うちに来るなら三日後以降にしてくれると嬉しいな。明日と明後日は僕、家にいないからさ」
挨拶する上で相手の都合を優先するのは当たり前のことなので、もちろん、と返す。
「そうだ、LIME交換しようよ。この辺の地理にも慣れてないと思うから、何か困ったことがあったら頼ってくれていいからね」
そう言って、流れるような動作で無料通話アプリLIMEのアカウントをお互いに登録すると、「それじゃあ、またね」と言って去っていった。
なんだか嵐のようなお隣さんだった。けどまぁ、悪い人ではないのだろう。今後のご近所付き合いは円滑にいきそうで、安心した。
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