三日月宗近
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ここは相模国の中でもかなり普通な成績を収める、かなり普通な私が運営する、かなり普通な本丸であった。先週までは。
先週から何故か刀剣男士が私の真名を手に入れようとしてくるのだ。
七日前は三日月が来た。
私が庭を眺めながら縁側でお茶を飲んでいると、音もなく隣に座ってきた。びっくりするのでやめてほしい。そして何食わぬ顔で私のお茶請けのおせんべいをバリバリ食べながら、庭についてあれこれ質問し始めた。
「なあ主、どうやら景趣を春に変えたようだが、何かあったのか」
「うん、資金に余裕がありすぎたからね。皆が楽しめるように、今後も景趣は購入していこうと思うよ」
そんな当たり障りのない話から始まって、あの桜は何と言う種類なのか、池の近くに咲いている花は手折っても良いのか、池で鯉を飼わないか、など、どれも普通の質問ばかりしてきた。が、不穏になり始めたのは、庭に短刀たちが出てきて遊び始めてからだった。
「なあ主、あの花は何という花なのか解るか?」
「うーん、分かんない。歌仙にでも聞けば分かるんじゃないかな」
まるで今日の晩御飯を聞くかのような軽い口調だった。
「なあ主、主の真名はなんと言うのだ」
何を言われたか一瞬わからなかった。
「何を言っているの、冗談でもそんなこと聞かないでよ。聞いちゃ駄目なことくらい分かってるでしょ」というのがやっとだった。
すると三日月はほけほけと笑って、「すまんな、じじいゆえ、色々と忘れてしまうのだ」と言った。じじいゆえで規則まで忘れられてたまるか。
その出来事があまりにも衝撃的すぎて、夢だったんじゃないかとすら思った。
6日前も三日月だった。
朝、顔を合わせたのでお早う、と言ったら、お早う、と帰ってきた。そしてその後、「ところで主の真名を教えてはくれないか?」と言ってきた。何がところでなのか全く分からない。適当にはぐらかしてその場を離れた。
5日前も三日月だった。
お昼休みに執務室まできて、「主、このじじいに真名を教えてくれ」とドア越しに喋りかけてきた。ふざけるな、と言って追い返した。
4日前も三日月だった。
寝る前にバッタリ会った三日月に、おやすみ、と言うと
「おやすみあるじ。真名を教えてくれ」と囁いてきた。
もはや文の前後に全く繋がりが無いどころか接続語がない。国語のワークを買ってやるから寝ろ、と言って寝室に駆け込んだ。ぶっちゃけ夜の三日月宗近は謎の迫力があるので寄って来ないでほしい。
3日前も三日月だった。
夜中だったが、寝室のドアを叩く音が聞こえて起きた。何事かとドアをあけると三日月がいた。
「主、夜分にすまんな。真名を教えてくれ」
この非常識じじい、と閉め出した。
2日前も三日月だった。
明け方だった。寝室のドアの前に目覚まし時計を置いて、午前4時頃に鳴らしてくれた。目覚まし時計が「主、真名を教えてくれ!真名を教えてくれ!」と鳴っていたのでなんの躊躇もなくハンマーで粉砕して二度寝した。
昨日も三日月だった。
おやつの時間に来て、「この柏餅をやるから主の真名を教えてくれ」と、大量の柏餅が乗った皿を差し出してきたので、ダイエット中だと断っておいた。
何だ三日月しか来ねえじゃねえかと思ったただろう。しかしそれが問題なのだ。
三日月が来るようになってから他の刀剣男士と会わなくなった。賑やかだったはずの本丸が、今では私の足音が響くだけになった。誰もいないのだ。
ふと鏡に写った自分の顔を見てみると、とんでもないことに気づいてしまった。
瞳に、三日月が浮かんでいる。
間違いなく三日月宗近の眷族になっている。どういうことだ。まだ真名は握られていないはずなのに。
嫌な気配がしたので後を振り返ると、三日月宗近が、いた。
「はっはっは、驚いたろう、主。主が自分から真名を教えてくれるのを待っていたんだがなぁ、もう飽きてしまった。」
まさか、そんな、いやありえない、が、自分がこうなっている理由が1つしか考えられなかった。
「とうに主の真名は知っておったよ。たがまあ、無理やり隠すのは可哀想かと思ってな、自分から教えてくれるのを待ったんだが、なかなか教えてくれなかったからな。俺は気が長い方だと思っていたが、流石に六年も焦らされてはなぁ。任期も終わりそうだったし、丁度良かったのではないか。なぁ、ナマエ」
なんだ、6年も前から私は詰んでいたのか。
悪態をつこうとして開いた口からは、乾いた笑いが出るばかりだった。
先週から何故か刀剣男士が私の真名を手に入れようとしてくるのだ。
七日前は三日月が来た。
私が庭を眺めながら縁側でお茶を飲んでいると、音もなく隣に座ってきた。びっくりするのでやめてほしい。そして何食わぬ顔で私のお茶請けのおせんべいをバリバリ食べながら、庭についてあれこれ質問し始めた。
「なあ主、どうやら景趣を春に変えたようだが、何かあったのか」
「うん、資金に余裕がありすぎたからね。皆が楽しめるように、今後も景趣は購入していこうと思うよ」
そんな当たり障りのない話から始まって、あの桜は何と言う種類なのか、池の近くに咲いている花は手折っても良いのか、池で鯉を飼わないか、など、どれも普通の質問ばかりしてきた。が、不穏になり始めたのは、庭に短刀たちが出てきて遊び始めてからだった。
「なあ主、あの花は何という花なのか解るか?」
「うーん、分かんない。歌仙にでも聞けば分かるんじゃないかな」
まるで今日の晩御飯を聞くかのような軽い口調だった。
「なあ主、主の真名はなんと言うのだ」
何を言われたか一瞬わからなかった。
「何を言っているの、冗談でもそんなこと聞かないでよ。聞いちゃ駄目なことくらい分かってるでしょ」というのがやっとだった。
すると三日月はほけほけと笑って、「すまんな、じじいゆえ、色々と忘れてしまうのだ」と言った。じじいゆえで規則まで忘れられてたまるか。
その出来事があまりにも衝撃的すぎて、夢だったんじゃないかとすら思った。
6日前も三日月だった。
朝、顔を合わせたのでお早う、と言ったら、お早う、と帰ってきた。そしてその後、「ところで主の真名を教えてはくれないか?」と言ってきた。何がところでなのか全く分からない。適当にはぐらかしてその場を離れた。
5日前も三日月だった。
お昼休みに執務室まできて、「主、このじじいに真名を教えてくれ」とドア越しに喋りかけてきた。ふざけるな、と言って追い返した。
4日前も三日月だった。
寝る前にバッタリ会った三日月に、おやすみ、と言うと
「おやすみあるじ。真名を教えてくれ」と囁いてきた。
もはや文の前後に全く繋がりが無いどころか接続語がない。国語のワークを買ってやるから寝ろ、と言って寝室に駆け込んだ。ぶっちゃけ夜の三日月宗近は謎の迫力があるので寄って来ないでほしい。
3日前も三日月だった。
夜中だったが、寝室のドアを叩く音が聞こえて起きた。何事かとドアをあけると三日月がいた。
「主、夜分にすまんな。真名を教えてくれ」
この非常識じじい、と閉め出した。
2日前も三日月だった。
明け方だった。寝室のドアの前に目覚まし時計を置いて、午前4時頃に鳴らしてくれた。目覚まし時計が「主、真名を教えてくれ!真名を教えてくれ!」と鳴っていたのでなんの躊躇もなくハンマーで粉砕して二度寝した。
昨日も三日月だった。
おやつの時間に来て、「この柏餅をやるから主の真名を教えてくれ」と、大量の柏餅が乗った皿を差し出してきたので、ダイエット中だと断っておいた。
何だ三日月しか来ねえじゃねえかと思ったただろう。しかしそれが問題なのだ。
三日月が来るようになってから他の刀剣男士と会わなくなった。賑やかだったはずの本丸が、今では私の足音が響くだけになった。誰もいないのだ。
ふと鏡に写った自分の顔を見てみると、とんでもないことに気づいてしまった。
瞳に、三日月が浮かんでいる。
間違いなく三日月宗近の眷族になっている。どういうことだ。まだ真名は握られていないはずなのに。
嫌な気配がしたので後を振り返ると、三日月宗近が、いた。
「はっはっは、驚いたろう、主。主が自分から真名を教えてくれるのを待っていたんだがなぁ、もう飽きてしまった。」
まさか、そんな、いやありえない、が、自分がこうなっている理由が1つしか考えられなかった。
「とうに主の真名は知っておったよ。たがまあ、無理やり隠すのは可哀想かと思ってな、自分から教えてくれるのを待ったんだが、なかなか教えてくれなかったからな。俺は気が長い方だと思っていたが、流石に六年も焦らされてはなぁ。任期も終わりそうだったし、丁度良かったのではないか。なぁ、ナマエ」
なんだ、6年も前から私は詰んでいたのか。
悪態をつこうとして開いた口からは、乾いた笑いが出るばかりだった。
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