太郎太刀さんは知ってる ※男主
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今剣達が去り、その後何事もなく夜が明けた。
きっと、今日もまた誰かの話を聞いて、そして誰にも気付かれずに一人で相槌を打つのだろう。俺、一体いつになったら成仏できるんだろうか。
それにしても、昨日の石切丸の話していたことが気になってしかたがない。
後継が、決まった。それは喜ばしいことでもあったし、同時に寂しいことでもあった。今まで俺たちが積み上げてきたものが、今度は俺以外の彼らによって引き継がれる。今後どんなに苦しいことがあって、それを乗り越えたとしても、楽しいことがあって笑いあったとしても、俺はもう二度とその輪のなかに、新しい記憶に入ることはできない。他だひたすらここで彼らを見守ることしかできないのだろう。それはきっと歯痒いことだ。手を差し伸べてやることはできないし、逆に手を差し伸べてももらえない。
なにより、彼らに忘れられることが怖い。俺の存在に気づいてもらえないことも、もう誰とも話せないことももちろん辛いが、それよりも、忘却される恐怖よりはマシだ。刀剣男士は、持ち主を慕う。作り手や顕現した者もしたってはくれるが、元が物である彼らは、なによりも所持されることを望む。自らを振るってくれる者こそ、彼らが一等慕うべき相手なのだ。
新しい審神者はどんな人なのだろう。優しい人だと良いな。刀剣男士を正しく振るい、正しく導いてくれる人。それこそが彼らにとっての優しさになるだろうから。
そうだ、後任で思い出した。先日鯰尾は、「新しい審神者が来たら刀解してもらう」と言っていた。そう思っている奴が他にもいる、と。聞いた時は慕われていることが嬉しくて深く考えられなかったが、昨日の石切丸の「彼らにもよく言い聞かせないと」という台詞から、もしかして、刀解されたがってる奴らは、まだきちんと言い出せていないのではないか、と不安になった。
考え過ぎかもしれないが、それが原因で本丸内がピリピリした空気になるのは良くない。みんなには自分の今後についてしっかり話し合ってほしい。まあ俺がそう思ったところでどうしようもないけどさ。
それでも、彼らの穏やかな日々を願ってしまう。もう誰かに干渉することなんてできないのに、幸せであれと願い、自分の存在を忘れてほしくないと望んでいる。なんとも身勝手なことだ。だがまあ人間そんなもんだろう。欲深くない人間などいないんだ。俺も含めて。だから死んでもなお、届くことのない幸せを願いつづけ、そしていつか、それが決して叶わないという現実を受け入れて泣くのだろう。ひょっとしたら受け入れられないかもしれないが。
そう憂いてため息をつくと、母屋の方に大きな人影が見えた。あれは……、太郎太刀だ。どうやら本日最初の訪問者は彼らしい。内番の時の服装で、ゆっくりと、景色を楽しむ用にして辺りを見回しながらこちらへと向かってくる。彼はどんな話をしにきたのだろう。
ようやく表情が分かる位の距離になった。太郎太刀の表情は読み取りにくいので何を考えているかはよく分からないが、そこまで落ち込んでいる様子は無い様に見えるので、ひとまず安心だ。
見えるはずもないと分かっていながら、ひらひらと手を振ってみる。おーい、おれだよー。
「は」
そんな声の後、合うはずの無い視線が、かち合った。
きっと、今日もまた誰かの話を聞いて、そして誰にも気付かれずに一人で相槌を打つのだろう。俺、一体いつになったら成仏できるんだろうか。
それにしても、昨日の石切丸の話していたことが気になってしかたがない。
後継が、決まった。それは喜ばしいことでもあったし、同時に寂しいことでもあった。今まで俺たちが積み上げてきたものが、今度は俺以外の彼らによって引き継がれる。今後どんなに苦しいことがあって、それを乗り越えたとしても、楽しいことがあって笑いあったとしても、俺はもう二度とその輪のなかに、新しい記憶に入ることはできない。他だひたすらここで彼らを見守ることしかできないのだろう。それはきっと歯痒いことだ。手を差し伸べてやることはできないし、逆に手を差し伸べてももらえない。
なにより、彼らに忘れられることが怖い。俺の存在に気づいてもらえないことも、もう誰とも話せないことももちろん辛いが、それよりも、忘却される恐怖よりはマシだ。刀剣男士は、持ち主を慕う。作り手や顕現した者もしたってはくれるが、元が物である彼らは、なによりも所持されることを望む。自らを振るってくれる者こそ、彼らが一等慕うべき相手なのだ。
新しい審神者はどんな人なのだろう。優しい人だと良いな。刀剣男士を正しく振るい、正しく導いてくれる人。それこそが彼らにとっての優しさになるだろうから。
そうだ、後任で思い出した。先日鯰尾は、「新しい審神者が来たら刀解してもらう」と言っていた。そう思っている奴が他にもいる、と。聞いた時は慕われていることが嬉しくて深く考えられなかったが、昨日の石切丸の「彼らにもよく言い聞かせないと」という台詞から、もしかして、刀解されたがってる奴らは、まだきちんと言い出せていないのではないか、と不安になった。
考え過ぎかもしれないが、それが原因で本丸内がピリピリした空気になるのは良くない。みんなには自分の今後についてしっかり話し合ってほしい。まあ俺がそう思ったところでどうしようもないけどさ。
それでも、彼らの穏やかな日々を願ってしまう。もう誰かに干渉することなんてできないのに、幸せであれと願い、自分の存在を忘れてほしくないと望んでいる。なんとも身勝手なことだ。だがまあ人間そんなもんだろう。欲深くない人間などいないんだ。俺も含めて。だから死んでもなお、届くことのない幸せを願いつづけ、そしていつか、それが決して叶わないという現実を受け入れて泣くのだろう。ひょっとしたら受け入れられないかもしれないが。
そう憂いてため息をつくと、母屋の方に大きな人影が見えた。あれは……、太郎太刀だ。どうやら本日最初の訪問者は彼らしい。内番の時の服装で、ゆっくりと、景色を楽しむ用にして辺りを見回しながらこちらへと向かってくる。彼はどんな話をしにきたのだろう。
ようやく表情が分かる位の距離になった。太郎太刀の表情は読み取りにくいので何を考えているかはよく分からないが、そこまで落ち込んでいる様子は無い様に見えるので、ひとまず安心だ。
見えるはずもないと分かっていながら、ひらひらと手を振ってみる。おーい、おれだよー。
「は」
そんな声の後、合うはずの無い視線が、かち合った。