太郎太刀さんは知ってる ※男主
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朝って、気持ちがいいな!(白目)
嘘です審神者震え上がってます。チビりそう。幽霊だからチビれないけど。
俺がこんなに気分で朝を迎えたのは、さっきまで目の前にいた鯰尾藤四郎が原因だ。
「主さん、俺、主さんに謝らなくちゃいけないことがあるんです」
そう言って神妙な顔をするものだから、何だ何だと身構えた。
「俺、投石兵に馬糞投げさせてたんです」
お前が出陣帰りに時々馬糞くっつけて来てたのはそれが原因か。薄々気づいてたよ。だってお前だし。
「ついでに言うと、嫌いな食べ物は主さんの器に移してました」
もっと早く言えばよかったですね。なんて申し訳なさそうな顔で言うものだから、できれば知りたくなかった、と思ってしまった。
なぜ起きて早々こんな間違った方向にヘビーな話を聞かなくてはならないのか。
あと、やたら俺の皿に人参が入ってると思ったらそういうことだったのか。
人参は俺の好物だったから、てっきり光忠や歌仙辺りが入れてくれたものだと思っていた。まあ何だ、利害の一致があった訳だし、それは良いか。
「でもでも、俺悪いことばっかりしてたわけじゃなくってですね。廊下に置いてある花瓶の中身、入れ替えてたの俺なんですよ。主さん気付いてましたか?」
驚いた。
「最初は誰かがやってたんでしょうけど、そのうち誰も触らなくなったみたいだったから。何だか気になっちゃって。これを綺麗にして花でも挿しておけば主さん喜ぶかなーって思って、やり始めんですけどね。俺のことだから途中で投げ出すかと思ってたんですけど、結局惰性でダラダラとお世話しちゃってました。何ででしょうね」
とても、驚いた。
あの花瓶は、鯰尾が購入したものだった。といっても、今目の前にいる鯰尾ではなく、かつてこの本丸にいた、一振り目の鯰尾藤四郎である。
審神者になりたてで、まだ右も左も分からない俺の所にやってきた四振り目の刀は鯰尾藤四郎だった。ちなみに三振りは先日ここに来た光忠だ。
俺の審神者人生で、唯一、折ってしまった刀。悔やんだって悔みきれない。あんなに人間臭くて、馬糞臭くて、いつも明るく笑っていた彼は、あまりにもあっけなく折れた。理由は簡単、俺の采配ミスだった。引き際を弁えなかった俺のせいで未来を閉ざされた分霊。それが、一振り目の鯰尾藤四郎だった。
帰還させた部隊が持ち帰って来たのは、何の偶然か、同位体の鯰尾藤四郎だった。
もう誰も折ってはならないと心に決め、戦術や敵の情報収集を近侍に心配されるほどしはじめたのもその頃からだ。
おかげさまで何度か成績上位本丸ランキングに名を連ねたこともあった。そのときは皆で祝宴を開いたっけ。楽しかったなぁ。
話がそれてしまったが、何が言いたいのかというとつまり、彼は一振り目の鯰尾藤四郎が残した、ここにいた証である花瓶を、大切にしてくれていたわけだ。
なんだろう、俺、涙出そう。
お前に早く一振り目の話をしておけばよかった。今更の後悔だ。今の話を聞いたら尚更そう思う。
何となく話を切り出せなくて、先延ばしにしていたら、いつの間にか伝えることなどできなくなっていた。
ごめんな、鯰尾。
「主さん」
「俺、あとひとつだけ、黙ってたことがあるんです」
「俺、自分が二振り目なの、知ってました。黙っててごめんなさい。皆言ってくれないから、気付くの遅かったんですよ。でも、流石に毎日皆と過ごしていれば流石に分かりますって。こっそりこの本丸の記録調べたら一振り目の記録があって、そこでやっと確信しました。俺は二振り目だって。最初に顕現したとき、主さんが泣きそうな顔だったのも納得がいきました。それと、あの花瓶が、一振り目の俺が残したものってことも知ってます。だから、どうしても気になっちゃったんです。きっと一振り目の俺は、主さんに喜んでほしくてこの花瓶を買ったんだろうなって思いました。それじゃあ、いなくなった一振り目の代わりに俺がやろうって考えて、それからは毎日お世話してたんですよ。花を触るなんて初めてのことだったから、最初の頃は本当に大変で、失敗ばかりでした。見るに耐えない出来になっちゃって。主さん気づいてましたか?できれば知らずにいてほしいなぁ、あはは。歌仙さんにいろいろ教えてもらってようやく、なんとか普通に見れるようになったんですよ」
えへへ、頑張ったんです。
なんて言って悲しそうに笑う目の前の神様を見ていると、心が痛い。なんで死んだりしたんだ俺は。
「主さんも、亡くなるなら、早く言ってくださいよ。そうしたら、俺全部話してたのに。今更言ったって、何にも、なんの返事も返って来ないじゃないですか」
「あなたの次の主なんて、いらないんです。だから俺、刀解してもらおうと考えてるんです。あなた以外に従う気なんてありませんから。俺の主はあなただけで良い。きっと、他にもそう思ってるやつはいますよ。後任が来たら、すぐに刀解してもらいます」
そうしたら、またいつか、会えると良いですね。
そう言い残して母屋へと去っていく鯰尾を見送りつつ、とんでもない事件が発生していたことに戦慄した。
鯰尾は先程「この本丸の記録を調べた」と言っていた。一振り目の情報を手に入れていることから、おそらく出陣記録を見ている。
しかし、それこそが問題なのだ。
出陣記録には特殊な技術が使われており、審神者以外の者が閲覧するとこんのすけに連絡が行き、すぐさま審神者へと知らせることになっている。
俺は今までにそんな報告をもらったことなど一度もない。
つまり、誰かがあの記録を覗いていても俺には分からないのだ。
それだけならまだ良い。しかし問題は中身だ。出陣記録と言ってはいるが、その実中身は秘匿すべき情報の寄せ集めだ。神隠しが起こりそうになった場合の手引や、ゲートが壊れた際に時の政府管轄の審神者お助けセンターへ移動する方法、こんのすけに秘密を托した際のパスワードの設定方法、果ては審神者の真名まで乗っている。不味すぎる。何が1番やばいかって、オレの真名だ。間違いない。
鯰尾は一振り目の記録しか見ていないかもしれないが、そんな危ないものがセキュリティがかかっていない状態で放置されていたとは。何もなくて良かった。悪用なんてされてはたまったものではない。
何か嫌な予感がするけど、きっと気のせいだよな! 俺、みんなのこと信じてるから!まじで!
嘘です審神者震え上がってます。チビりそう。幽霊だからチビれないけど。
俺がこんなに気分で朝を迎えたのは、さっきまで目の前にいた鯰尾藤四郎が原因だ。
「主さん、俺、主さんに謝らなくちゃいけないことがあるんです」
そう言って神妙な顔をするものだから、何だ何だと身構えた。
「俺、投石兵に馬糞投げさせてたんです」
お前が出陣帰りに時々馬糞くっつけて来てたのはそれが原因か。薄々気づいてたよ。だってお前だし。
「ついでに言うと、嫌いな食べ物は主さんの器に移してました」
もっと早く言えばよかったですね。なんて申し訳なさそうな顔で言うものだから、できれば知りたくなかった、と思ってしまった。
なぜ起きて早々こんな間違った方向にヘビーな話を聞かなくてはならないのか。
あと、やたら俺の皿に人参が入ってると思ったらそういうことだったのか。
人参は俺の好物だったから、てっきり光忠や歌仙辺りが入れてくれたものだと思っていた。まあ何だ、利害の一致があった訳だし、それは良いか。
「でもでも、俺悪いことばっかりしてたわけじゃなくってですね。廊下に置いてある花瓶の中身、入れ替えてたの俺なんですよ。主さん気付いてましたか?」
驚いた。
「最初は誰かがやってたんでしょうけど、そのうち誰も触らなくなったみたいだったから。何だか気になっちゃって。これを綺麗にして花でも挿しておけば主さん喜ぶかなーって思って、やり始めんですけどね。俺のことだから途中で投げ出すかと思ってたんですけど、結局惰性でダラダラとお世話しちゃってました。何ででしょうね」
とても、驚いた。
あの花瓶は、鯰尾が購入したものだった。といっても、今目の前にいる鯰尾ではなく、かつてこの本丸にいた、一振り目の鯰尾藤四郎である。
審神者になりたてで、まだ右も左も分からない俺の所にやってきた四振り目の刀は鯰尾藤四郎だった。ちなみに三振りは先日ここに来た光忠だ。
俺の審神者人生で、唯一、折ってしまった刀。悔やんだって悔みきれない。あんなに人間臭くて、馬糞臭くて、いつも明るく笑っていた彼は、あまりにもあっけなく折れた。理由は簡単、俺の采配ミスだった。引き際を弁えなかった俺のせいで未来を閉ざされた分霊。それが、一振り目の鯰尾藤四郎だった。
帰還させた部隊が持ち帰って来たのは、何の偶然か、同位体の鯰尾藤四郎だった。
もう誰も折ってはならないと心に決め、戦術や敵の情報収集を近侍に心配されるほどしはじめたのもその頃からだ。
おかげさまで何度か成績上位本丸ランキングに名を連ねたこともあった。そのときは皆で祝宴を開いたっけ。楽しかったなぁ。
話がそれてしまったが、何が言いたいのかというとつまり、彼は一振り目の鯰尾藤四郎が残した、ここにいた証である花瓶を、大切にしてくれていたわけだ。
なんだろう、俺、涙出そう。
お前に早く一振り目の話をしておけばよかった。今更の後悔だ。今の話を聞いたら尚更そう思う。
何となく話を切り出せなくて、先延ばしにしていたら、いつの間にか伝えることなどできなくなっていた。
ごめんな、鯰尾。
「主さん」
「俺、あとひとつだけ、黙ってたことがあるんです」
「俺、自分が二振り目なの、知ってました。黙っててごめんなさい。皆言ってくれないから、気付くの遅かったんですよ。でも、流石に毎日皆と過ごしていれば流石に分かりますって。こっそりこの本丸の記録調べたら一振り目の記録があって、そこでやっと確信しました。俺は二振り目だって。最初に顕現したとき、主さんが泣きそうな顔だったのも納得がいきました。それと、あの花瓶が、一振り目の俺が残したものってことも知ってます。だから、どうしても気になっちゃったんです。きっと一振り目の俺は、主さんに喜んでほしくてこの花瓶を買ったんだろうなって思いました。それじゃあ、いなくなった一振り目の代わりに俺がやろうって考えて、それからは毎日お世話してたんですよ。花を触るなんて初めてのことだったから、最初の頃は本当に大変で、失敗ばかりでした。見るに耐えない出来になっちゃって。主さん気づいてましたか?できれば知らずにいてほしいなぁ、あはは。歌仙さんにいろいろ教えてもらってようやく、なんとか普通に見れるようになったんですよ」
えへへ、頑張ったんです。
なんて言って悲しそうに笑う目の前の神様を見ていると、心が痛い。なんで死んだりしたんだ俺は。
「主さんも、亡くなるなら、早く言ってくださいよ。そうしたら、俺全部話してたのに。今更言ったって、何にも、なんの返事も返って来ないじゃないですか」
「あなたの次の主なんて、いらないんです。だから俺、刀解してもらおうと考えてるんです。あなた以外に従う気なんてありませんから。俺の主はあなただけで良い。きっと、他にもそう思ってるやつはいますよ。後任が来たら、すぐに刀解してもらいます」
そうしたら、またいつか、会えると良いですね。
そう言い残して母屋へと去っていく鯰尾を見送りつつ、とんでもない事件が発生していたことに戦慄した。
鯰尾は先程「この本丸の記録を調べた」と言っていた。一振り目の情報を手に入れていることから、おそらく出陣記録を見ている。
しかし、それこそが問題なのだ。
出陣記録には特殊な技術が使われており、審神者以外の者が閲覧するとこんのすけに連絡が行き、すぐさま審神者へと知らせることになっている。
俺は今までにそんな報告をもらったことなど一度もない。
つまり、誰かがあの記録を覗いていても俺には分からないのだ。
それだけならまだ良い。しかし問題は中身だ。出陣記録と言ってはいるが、その実中身は秘匿すべき情報の寄せ集めだ。神隠しが起こりそうになった場合の手引や、ゲートが壊れた際に時の政府管轄の審神者お助けセンターへ移動する方法、こんのすけに秘密を托した際のパスワードの設定方法、果ては審神者の真名まで乗っている。不味すぎる。何が1番やばいかって、オレの真名だ。間違いない。
鯰尾は一振り目の記録しか見ていないかもしれないが、そんな危ないものがセキュリティがかかっていない状態で放置されていたとは。何もなくて良かった。悪用なんてされてはたまったものではない。
何か嫌な予感がするけど、きっと気のせいだよな! 俺、みんなのこと信じてるから!まじで!