太郎太刀さんは知ってる ※男主
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幽霊でも夢を見るらしい。
夜になって、一人寂しく墓の上に座っていると、意識がフワフワとしてきた。
そうしているうちに眠ってしまったらしく、夢の中と思しき真っ暗な、知らない場所にいた。
周りは木が生い茂っていて、月明かりでかろうじて見える一本道には、誰かの足跡がついていた。
俺は興味本位でその足跡を辿った。
足跡はどこまでも続いていて、終わりが見えない。これはいったい誰の足跡なんだろう。それが知りたくて、時間も忘れて、夢中でそれを追いかけた。
そうしていつの間にか、本丸にたどり着いていた。
足跡は本丸の中へ続いていていた。ずっと辿って行くと、母屋を通り過ぎて、俺の墓のある庭へと出た。
俺の墓の前。そこに、得体の知れない何かがいた。黒く靄のかかった何か。それは禍々しく、そしてどこか悲しそうに見えた。
黒い靄はしばらく動きを見せなかった。ただずっと墓の前に立っているのだ。よく観察すると、口と思わしき部分が何やらモゴモゴと動いていた。俺はそれが何を言っているのかが気になって、ゆっくりと靄に近づいた。
俺が距離を詰めていくごとに、靄は次第に人の形になっていった。だいたい俺と同じくらいの背丈になると、靄の中に赤い光が見えた。それは黒い靄の中で、異様にギラギラと光っていた。
俺はその光に見覚えがある。
生きていた頃に嫌と言うほど見た、あの赤い光。俺の最後の日にも見た、あの赤い目。
その人型は、どうやら歴史修正主義者であるらしい。
なんて夢だ。自分の本丸内に歴史遡行軍がいるなんて。まあ、自分の最後を鑑みると、こんな夢を見るのも仕方がないか。
人型は暫く口を動かしていたが、結局何を言っているのかは分からなかった。
やがて口の動きを止めると、今度は何かを探すようにゴソゴソと動き始めた。やがてそれは、懐から一本の刀を取り出した。
簡素な暗赤色の鞘に収まったそれは、おそらく太刀だろう。
人型はそれを大切そうに両手で持つと、俺の墓へと近づき、しゃがみこんだ。
そうしてそのまま刀をズブッと、墓石の下、俺の遺骨がある辺りへ沈めた。
まるで生クリームへ苺を埋めるような、そのくらい柔らかそうな感じで、刀は沈んでしまった。
それと同時に、俺の左胸、およそ心臓がある辺りに、何か暖かさを感じた。
人型はすくっと立ち上がると、また口を開いた。
「後は、お前次第だ」
始めて聞いたそれの声はノイズが混じったような濁ったものだったが、何故かその一言は俺の耳にはっきりと届いた。
俺次第? いったいどういう意味なのだろうか。いや、夢に意味を求めるなんておかしなことか。深く考えるのはよそう。
暫く逡巡していると、人型が出口へ向かって歩き出した。
それをぼーっと眺めていると、人型が庭の向こうへ消える瞬間、一度こちらをふりむいた。
ありえない。ありえないことだが、その時何故か、あのギラついた赤色と目があった気がした。
恐ろしく思って後退りすると、そこではっと目が覚めた。
俺は寝たときのままの、墓石の上に座った体勢だった。赤い朝日が池にキラキラと反射していて眩しい。なるほど、きっとこれをあの赤い目だと思ったんだな。
夢の内容を思い出し、まさかな、と思って辺りを見渡してみるが、そこには墓が荒らされた形跡も無いし、誰かの足跡なんて一つもなかった。もちろん心臓の辺りが暖かいなんてことない。
全く、不思議な夢だったな。
夜になって、一人寂しく墓の上に座っていると、意識がフワフワとしてきた。
そうしているうちに眠ってしまったらしく、夢の中と思しき真っ暗な、知らない場所にいた。
周りは木が生い茂っていて、月明かりでかろうじて見える一本道には、誰かの足跡がついていた。
俺は興味本位でその足跡を辿った。
足跡はどこまでも続いていて、終わりが見えない。これはいったい誰の足跡なんだろう。それが知りたくて、時間も忘れて、夢中でそれを追いかけた。
そうしていつの間にか、本丸にたどり着いていた。
足跡は本丸の中へ続いていていた。ずっと辿って行くと、母屋を通り過ぎて、俺の墓のある庭へと出た。
俺の墓の前。そこに、得体の知れない何かがいた。黒く靄のかかった何か。それは禍々しく、そしてどこか悲しそうに見えた。
黒い靄はしばらく動きを見せなかった。ただずっと墓の前に立っているのだ。よく観察すると、口と思わしき部分が何やらモゴモゴと動いていた。俺はそれが何を言っているのかが気になって、ゆっくりと靄に近づいた。
俺が距離を詰めていくごとに、靄は次第に人の形になっていった。だいたい俺と同じくらいの背丈になると、靄の中に赤い光が見えた。それは黒い靄の中で、異様にギラギラと光っていた。
俺はその光に見覚えがある。
生きていた頃に嫌と言うほど見た、あの赤い光。俺の最後の日にも見た、あの赤い目。
その人型は、どうやら歴史修正主義者であるらしい。
なんて夢だ。自分の本丸内に歴史遡行軍がいるなんて。まあ、自分の最後を鑑みると、こんな夢を見るのも仕方がないか。
人型は暫く口を動かしていたが、結局何を言っているのかは分からなかった。
やがて口の動きを止めると、今度は何かを探すようにゴソゴソと動き始めた。やがてそれは、懐から一本の刀を取り出した。
簡素な暗赤色の鞘に収まったそれは、おそらく太刀だろう。
人型はそれを大切そうに両手で持つと、俺の墓へと近づき、しゃがみこんだ。
そうしてそのまま刀をズブッと、墓石の下、俺の遺骨がある辺りへ沈めた。
まるで生クリームへ苺を埋めるような、そのくらい柔らかそうな感じで、刀は沈んでしまった。
それと同時に、俺の左胸、およそ心臓がある辺りに、何か暖かさを感じた。
人型はすくっと立ち上がると、また口を開いた。
「後は、お前次第だ」
始めて聞いたそれの声はノイズが混じったような濁ったものだったが、何故かその一言は俺の耳にはっきりと届いた。
俺次第? いったいどういう意味なのだろうか。いや、夢に意味を求めるなんておかしなことか。深く考えるのはよそう。
暫く逡巡していると、人型が出口へ向かって歩き出した。
それをぼーっと眺めていると、人型が庭の向こうへ消える瞬間、一度こちらをふりむいた。
ありえない。ありえないことだが、その時何故か、あのギラついた赤色と目があった気がした。
恐ろしく思って後退りすると、そこではっと目が覚めた。
俺は寝たときのままの、墓石の上に座った体勢だった。赤い朝日が池にキラキラと反射していて眩しい。なるほど、きっとこれをあの赤い目だと思ったんだな。
夢の内容を思い出し、まさかな、と思って辺りを見渡してみるが、そこには墓が荒らされた形跡も無いし、誰かの足跡なんて一つもなかった。もちろん心臓の辺りが暖かいなんてことない。
全く、不思議な夢だったな。