太郎太刀さんは知ってる ※男主
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お昼が過ぎた頃だろうか。
今や暖かささえ分からない俺の体。ただただそこにあるだけの思念体。不便すぎる。
しかし今の時間は分かる。間違いなく昼だ。その証拠に、昼休憩中であろう今剣と岩融が俺の目の前でじゃれ合っている。
この本丸では昼休憩を全員取っていた。最初の頃は無かったものだ。きっかけは長谷部だった。常に主命を欲しがり、本丸にいるのに何故か赤疲労になっているという怪奇現象が起こるので、それの解決策として導入した。ちなみに効果は絶大だった。ワーカホリック良くない。
それにしても、こいつらの遊びって人間にはなかなかハードなんだよなー。高い高いとかもう人間技じゃない。高さが異常。やばい。「あるじさまもなげてもらってみてください」って言われたことがあったけど、多分俺がやったら落ちてくるときに意識が他界他界しちゃう。無理。軽い紐無しバンジーみたいなもんだよアレ。
今剣は「わー! 岩融よりたかいですよー! すごいです!」と喜んでいるが、それを聞いた岩融がさらに勢いをつけて投げるものだから、審神者心配になっちゃう。というかあの高さから自由落下してくる今剣を余裕で受け止められる岩融って何なんだ。あ、神様か。なるほど納得。
と、そこに我らがオカンこと燭台切光忠がやってきた。スパダリ化する本丸とオカン化する本丸とで分かれる彼だが、我が本丸の燭台切光忠は後者である。献立作りから掃除洗濯、果ては出陣までこなす、この上なく頼れるオカンだ。そして何故かたまにJKのようなノリと話し方をする。つまるところJK系オカンである。
「ああ、いたいた。休憩になるやいなやすぐに飛び出していくからびっくりしたよ。ここにいたんだね」
「燭台切光忠、どうかしましたか。あっ! 分かりました、岩融にたかいたかいをしてほしいんですね」
「おっと、そうだったのか。気付かなくてすまなんだ。もっと気軽に声をかけてくれて良いんだぞ」
「うん、違うからね。無しよりの無しだからね。第一、大きさ的に無理があるよ」
「俺はいけると思うぞ」
「そう? それじゃあ今度大太刀や槍も呼んでどこまでいけるか試してみよう。って、そうだ、こんな話をしにきたんじゃないんだよ。君たちのことを石切丸さんが探していたよ。なんだか大切な話があるらしいから早く行ってあげてね」
「そうだったのか、手間をかけたな。すぐに行こう」
「よーし、どちらがはやくつくか、しょうぶです!」
「おうとも! 負けないぞ」
そうしてものすごい速さで去っていく二人を見送ると、光忠はふと俺の墓の方を見た。
「主くん」
「あのね、今日のお昼ご飯はオムライスだったよ。主くんの好物だね」
うわそれ俺も食べたかった。
「そういえば、最初に作ったオムライスは大失敗だったね。真っ黒に焦げちゃってさ。それでも君は食べてくれたよね。しかも『美味しい』って言ってくれたんだ」
そういえばそうだったな。でもあれは焦げてても美味しさ認識できたぞ。当のお前めっちゃ落ち込んでたけどな。
「そこからだったんだ。僕が料理を頑張ろうって思ったのは。君にもっと美味しいって言ってほしくて、レシピ本を強請ったこともあったね」
光忠といえば料理だと思って、沢山買ってきてお前に驚かれたっけ。
「君が沢山買ってきたときは驚いたよ。でも、とても嬉しかった。期待に応えようと頑張れたのも君のおかげさ。試作品は絶対に一番最初に君に食べてもらってたんだ。なんて言ったって君のために料理をしているからね」
そうだったのか。それは知らなかった。お前の料理はハズレがなかったから、味見の依頼が来たときはいつもラッキーって思ってた。
「僕が料理を作ると、君は本当に美味しそうに食べてくれた。僕にとってそれは何より嬉しいことだったし、もっと美味しいものを作ろうという気持ちにもなれた。だから、僕は料理が好きなんだ」
「僕の料理を食べて、美味しいと言ってくれる皆が好きなんだ。美味しいと言ってくれる君が大好きなんだ。だから、君がいなきゃ、君が美味しいって言ってくれなきゃ、僕の料理には意味がないんだ」
「また、会えるかな、主」
「こんなにも慕って、求めているのに、僕は君の本当の名前さえ知らないんだ。もしも次会えたら、その時は主従としてじゃなくて、友達として会いたいな。一緒に出かけたり、一緒に料理したり。やってる事は大したことないけれど、でも、そこに上と下の関係なんて無いんだ。そんな幸せな世界を、僕はいつか、きっと……」
「ああ、暗い話は良くないね。楽観的に行こう。それじゃあ主、僕は次の機会のために料理の腕を磨くよ。楽しみにしておいてね」
次会うときには、最高の料理を振る舞うよ
そう言い残して、眼帯をした伊達男は母屋へ戻っていった。
今や暖かささえ分からない俺の体。ただただそこにあるだけの思念体。不便すぎる。
しかし今の時間は分かる。間違いなく昼だ。その証拠に、昼休憩中であろう今剣と岩融が俺の目の前でじゃれ合っている。
この本丸では昼休憩を全員取っていた。最初の頃は無かったものだ。きっかけは長谷部だった。常に主命を欲しがり、本丸にいるのに何故か赤疲労になっているという怪奇現象が起こるので、それの解決策として導入した。ちなみに効果は絶大だった。ワーカホリック良くない。
それにしても、こいつらの遊びって人間にはなかなかハードなんだよなー。高い高いとかもう人間技じゃない。高さが異常。やばい。「あるじさまもなげてもらってみてください」って言われたことがあったけど、多分俺がやったら落ちてくるときに意識が他界他界しちゃう。無理。軽い紐無しバンジーみたいなもんだよアレ。
今剣は「わー! 岩融よりたかいですよー! すごいです!」と喜んでいるが、それを聞いた岩融がさらに勢いをつけて投げるものだから、審神者心配になっちゃう。というかあの高さから自由落下してくる今剣を余裕で受け止められる岩融って何なんだ。あ、神様か。なるほど納得。
と、そこに我らがオカンこと燭台切光忠がやってきた。スパダリ化する本丸とオカン化する本丸とで分かれる彼だが、我が本丸の燭台切光忠は後者である。献立作りから掃除洗濯、果ては出陣までこなす、この上なく頼れるオカンだ。そして何故かたまにJKのようなノリと話し方をする。つまるところJK系オカンである。
「ああ、いたいた。休憩になるやいなやすぐに飛び出していくからびっくりしたよ。ここにいたんだね」
「燭台切光忠、どうかしましたか。あっ! 分かりました、岩融にたかいたかいをしてほしいんですね」
「おっと、そうだったのか。気付かなくてすまなんだ。もっと気軽に声をかけてくれて良いんだぞ」
「うん、違うからね。無しよりの無しだからね。第一、大きさ的に無理があるよ」
「俺はいけると思うぞ」
「そう? それじゃあ今度大太刀や槍も呼んでどこまでいけるか試してみよう。って、そうだ、こんな話をしにきたんじゃないんだよ。君たちのことを石切丸さんが探していたよ。なんだか大切な話があるらしいから早く行ってあげてね」
「そうだったのか、手間をかけたな。すぐに行こう」
「よーし、どちらがはやくつくか、しょうぶです!」
「おうとも! 負けないぞ」
そうしてものすごい速さで去っていく二人を見送ると、光忠はふと俺の墓の方を見た。
「主くん」
「あのね、今日のお昼ご飯はオムライスだったよ。主くんの好物だね」
うわそれ俺も食べたかった。
「そういえば、最初に作ったオムライスは大失敗だったね。真っ黒に焦げちゃってさ。それでも君は食べてくれたよね。しかも『美味しい』って言ってくれたんだ」
そういえばそうだったな。でもあれは焦げてても美味しさ認識できたぞ。当のお前めっちゃ落ち込んでたけどな。
「そこからだったんだ。僕が料理を頑張ろうって思ったのは。君にもっと美味しいって言ってほしくて、レシピ本を強請ったこともあったね」
光忠といえば料理だと思って、沢山買ってきてお前に驚かれたっけ。
「君が沢山買ってきたときは驚いたよ。でも、とても嬉しかった。期待に応えようと頑張れたのも君のおかげさ。試作品は絶対に一番最初に君に食べてもらってたんだ。なんて言ったって君のために料理をしているからね」
そうだったのか。それは知らなかった。お前の料理はハズレがなかったから、味見の依頼が来たときはいつもラッキーって思ってた。
「僕が料理を作ると、君は本当に美味しそうに食べてくれた。僕にとってそれは何より嬉しいことだったし、もっと美味しいものを作ろうという気持ちにもなれた。だから、僕は料理が好きなんだ」
「僕の料理を食べて、美味しいと言ってくれる皆が好きなんだ。美味しいと言ってくれる君が大好きなんだ。だから、君がいなきゃ、君が美味しいって言ってくれなきゃ、僕の料理には意味がないんだ」
「また、会えるかな、主」
「こんなにも慕って、求めているのに、僕は君の本当の名前さえ知らないんだ。もしも次会えたら、その時は主従としてじゃなくて、友達として会いたいな。一緒に出かけたり、一緒に料理したり。やってる事は大したことないけれど、でも、そこに上と下の関係なんて無いんだ。そんな幸せな世界を、僕はいつか、きっと……」
「ああ、暗い話は良くないね。楽観的に行こう。それじゃあ主、僕は次の機会のために料理の腕を磨くよ。楽しみにしておいてね」
次会うときには、最高の料理を振る舞うよ
そう言い残して、眼帯をした伊達男は母屋へ戻っていった。