太郎太刀さんは知ってる ※男主
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蜂須賀を見送った後、俺の状態について少し考えてみた。
俺は今、幽霊もどきになっている。原因は不明。未練を無くせばワンチャン成仏できるのかと思ったが、俺の思い残したことが多すぎてどうしていいか分からない。というか、大して大きくもない悩みを抱えているだけで成仏できないなんて、現世は実は幽霊だらけだったりするのではないだろうか。むしろどうやったら成仏できるのだろう。アレか?もう無理なのか?もしかして最初から成仏なんて不可能だったのか?そりゃ、思い残したことは少なくはない。むしろ多い。
冷蔵庫のプリン食べず終いだったなとか、あと五日遅ければ光忠のローストビーフにありつけていたのにとか、鶯丸に美味しいお茶の淹れ方を教えてもらう予定だったのにとか、あれ、もしかして俺食べ物のことの事しか考えてない?
というのは半分冗談で、もっと審神者をやっていたかったという思いが強く残っている。
短くない時間を共に過した仲間たちと、その思い出作りを続けていたかった。
だってそうだろう。いくら最前線にいるとはいえ、その自覚はあまりなかった。本丸というおかしな次元に籠城して。敵を直接倒すのは刀剣男子で。しかも本丸ではほのぼのとした日常が繰り広げられて。そりゃ楽しくもなる。だって俺は白兵戦なんてやらないから。毎日笑って、たまに悩んだり怒ったり泣いたりして。自分が戦場にいることを自覚する場面が少なすぎた。明日死ぬなんて考えたこともなかった。
何度も言うが、俺は俺の死を認められていない。自覚がない、と言う方が正しいのだろう。もしかしたらそれこそが俺が成仏できない第一の理由かもしれない。
ならば、自分が死んだことを理解したその時なら俺はきちんと成仏できるのだろうか。
滔々と溢れてくる疑問は止まることがない。不毛な気がしてきたのでこの辺でやめておこう。
ふと、目の前に小さな影が現れた。何だろうと思い顔をあげると、そこには俺の可愛い初鍛刀、五虎退が立っていた。
「あるじさま、僕、あるじさまがいないと心が空っぽになりそうなんです」
ああああもう涙がこぼれ落ちそうじゃないか。頑張ってこらえてるなんて、どこまで健気なんだこの子は。くそ、抱きしめてやりたいのにこの実態のない思念体では無理。なんて俺は無力なんだ……。
「あるじさまに最初お会いしたときから、僕は随分強くなりました。ぜんぶぜんぶあるじさまのおかげです。僕はたくさん泣いてたくさん迷惑をかけました。きちんとお礼ができなくてごめんなさい。本当は、ちゃんと、言いたかったんです」
今聞いた!! 主ちゃんと聞いたよ!! 大丈夫だよ!! 俺の初鍛刀がこんなに可愛い!!!
というか五虎退が強くなったのは一重に君の努力があったからだよ、誇りに思ってる。
ふと、五虎退の雰囲気が変わった。どこか張り詰めたような、そんな空気。
「……あるじさまは、生まれ変わりを信じますか?ぼくは信じてます。だから、またあるじさまに会えるその日まで、僕は泣きません」
柔らかい髪を揺らし、不安げに瞳を潤ませながら、ゆっくりと話し出した。
それは、小さな彼の、大きな決心だった。
「あるじさまに逢うためだったら、僕は五兆の敵だって斬ります。あるじさまへの道を阻むもの全てを斬ってみせます」
「だから、これは僕が最後に流す涙です。僕の意思を貫くための、最後の涙にします」
そう言って五虎退は、その眼から一筋涙を流した。いつもだったら、その後堰を切ったようになるが、どうやら今回の彼の決意は生半可なものではなかったらしい。
強い意思を宿した眼が俺の墓を見つめている。
「あるじさま。僕は本気ですよ」
しばらく俺の墓を見つめた後、少しだけ、不安そうにその眼が揺れた。
「でも、もしもまたあるじさまに会えたら、それまで我慢した涙を、流してもいいですか」
うん、うん。いいよ。その時はきっと俺も一緒に泣くから。
小さいと思っていた彼は、いつの間にか大きくなっていたようだった。
俺は今、幽霊もどきになっている。原因は不明。未練を無くせばワンチャン成仏できるのかと思ったが、俺の思い残したことが多すぎてどうしていいか分からない。というか、大して大きくもない悩みを抱えているだけで成仏できないなんて、現世は実は幽霊だらけだったりするのではないだろうか。むしろどうやったら成仏できるのだろう。アレか?もう無理なのか?もしかして最初から成仏なんて不可能だったのか?そりゃ、思い残したことは少なくはない。むしろ多い。
冷蔵庫のプリン食べず終いだったなとか、あと五日遅ければ光忠のローストビーフにありつけていたのにとか、鶯丸に美味しいお茶の淹れ方を教えてもらう予定だったのにとか、あれ、もしかして俺食べ物のことの事しか考えてない?
というのは半分冗談で、もっと審神者をやっていたかったという思いが強く残っている。
短くない時間を共に過した仲間たちと、その思い出作りを続けていたかった。
だってそうだろう。いくら最前線にいるとはいえ、その自覚はあまりなかった。本丸というおかしな次元に籠城して。敵を直接倒すのは刀剣男子で。しかも本丸ではほのぼのとした日常が繰り広げられて。そりゃ楽しくもなる。だって俺は白兵戦なんてやらないから。毎日笑って、たまに悩んだり怒ったり泣いたりして。自分が戦場にいることを自覚する場面が少なすぎた。明日死ぬなんて考えたこともなかった。
何度も言うが、俺は俺の死を認められていない。自覚がない、と言う方が正しいのだろう。もしかしたらそれこそが俺が成仏できない第一の理由かもしれない。
ならば、自分が死んだことを理解したその時なら俺はきちんと成仏できるのだろうか。
滔々と溢れてくる疑問は止まることがない。不毛な気がしてきたのでこの辺でやめておこう。
ふと、目の前に小さな影が現れた。何だろうと思い顔をあげると、そこには俺の可愛い初鍛刀、五虎退が立っていた。
「あるじさま、僕、あるじさまがいないと心が空っぽになりそうなんです」
ああああもう涙がこぼれ落ちそうじゃないか。頑張ってこらえてるなんて、どこまで健気なんだこの子は。くそ、抱きしめてやりたいのにこの実態のない思念体では無理。なんて俺は無力なんだ……。
「あるじさまに最初お会いしたときから、僕は随分強くなりました。ぜんぶぜんぶあるじさまのおかげです。僕はたくさん泣いてたくさん迷惑をかけました。きちんとお礼ができなくてごめんなさい。本当は、ちゃんと、言いたかったんです」
今聞いた!! 主ちゃんと聞いたよ!! 大丈夫だよ!! 俺の初鍛刀がこんなに可愛い!!!
というか五虎退が強くなったのは一重に君の努力があったからだよ、誇りに思ってる。
ふと、五虎退の雰囲気が変わった。どこか張り詰めたような、そんな空気。
「……あるじさまは、生まれ変わりを信じますか?ぼくは信じてます。だから、またあるじさまに会えるその日まで、僕は泣きません」
柔らかい髪を揺らし、不安げに瞳を潤ませながら、ゆっくりと話し出した。
それは、小さな彼の、大きな決心だった。
「あるじさまに逢うためだったら、僕は五兆の敵だって斬ります。あるじさまへの道を阻むもの全てを斬ってみせます」
「だから、これは僕が最後に流す涙です。僕の意思を貫くための、最後の涙にします」
そう言って五虎退は、その眼から一筋涙を流した。いつもだったら、その後堰を切ったようになるが、どうやら今回の彼の決意は生半可なものではなかったらしい。
強い意思を宿した眼が俺の墓を見つめている。
「あるじさま。僕は本気ですよ」
しばらく俺の墓を見つめた後、少しだけ、不安そうにその眼が揺れた。
「でも、もしもまたあるじさまに会えたら、それまで我慢した涙を、流してもいいですか」
うん、うん。いいよ。その時はきっと俺も一緒に泣くから。
小さいと思っていた彼は、いつの間にか大きくなっていたようだった。