先程あった歴史遡行軍の襲撃は、一人の刀剣男士の活躍によってすぐさま終幕した。
　攻めてきた五体の歴史修正主義者に気付くと、百メートルはあったであろう距離をコンマ一秒で移動し、三秒かからずに殲滅した、そんな本日のMVPはへし切長谷部である。
　ちなみに、れきしゅーは長谷部が来る前にかなり暴れてくれたので、庭はめちゃくちゃ。さらに、俺が我が子のように大切にしていた美しい錦鯉も、今では腹を上にしてぷかぷか浮いているだけの屍になった。
　そして俺は、その屍の近くで倒れて血を流していた。

　長谷部は敵の殲滅後すぐに俺の側に来た。早いね、お前。
　そして、俺の体を慎重に抱き上げると、顔をくしゃ、と歪めた。

「ああ、主、俺がいながらこんな……。俺は、俺は……」

「気にすんなよ長谷部。確かに俺のかわいいにしきちゃん（錦鯉の名前。初期刀の蜂須賀がつけてくれた）が死んじゃったのは辛いけど、でも、お前が生きてくれているんだからそれで十分だよ。庭はほら、ネットで業者を手配すればすぐ直せるから何も問題ないし。俺だって、ちゃんと今こんな感じでなんとかなってるからさ。だからそんなに落ち込むなよ」

「俺は、今すぐ刀解されるべきなのでしょう。しかし、今、やらねばならぬことができました。それが終わるまで、どうか、俺の勝手な行動をお許しください」

「もう、長谷部は大げさだなぁ。まあ、頑張ってよ。とりあえずこの状況を皆に報告しないとな。頼んだぞ、長谷部」

「迅速に、成し遂げます」

　うんうん。さすが、俺の頼れる長谷部だ。
　俺は全く怒ってないからさ。だから、そんなに気にすんなよ。お前はいつもよくやってくれてるし。このくらい何てことないさ。とは言っても、お前は気にするんだろうな。そりゃそうだ。主が死んじゃったんだもんな。

　まあとりあえず、早く俺のためにいい感じの墓建ててくれよな！さすがに野ざらしとか、しょぼすぎる墓だと俺泣いちゃうからね。というか、死んだ実感が湧かなくて、なんだろう、多分俺の死に一番ついて行けてないの俺な気がしてきたな。

　つーか、俺死んじゃった訳だけど、この本丸って解体されるのかな。それとも引き継ぎの人が来てくれる？　まあどちらにせよ、いろいろと未練たらたららしかった俺はまだ成仏できそうにないので、しばらくここにいると思うけどね！