鶴丸国永
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「主、どうだい、鶴らしくなったかい?」
そう言って自身を飾る薔薇の花を見せて来たときは、何だ、案外似合うじゃないか、と素直に褒めた。
それを聞いた鶴丸は、耳を赤くして照れていたので、ますます鶴っぽくなったんじゃないの、と言ったら、私に薔薇の花を一輪押し付けてから、怒って出ていってしまった。
その後、縁側から庭をぼうっと眺めているのを発見したので、後ろから近づいて驚かせそうとした。しかし、肩に触れる予定だった右手は、あと少しというところであっけなく、振り向いた鶴丸に捕まってしまい、逆にこちらが驚いてしまった。
「どうだ、驚いたか?きみは気配を消すのが下手くそだなぁ。俺だったら、もっと上手くやるぜ」
「神様と一緒にしないでよ。私普通の人間なんだから。それにしても、凄い反応速度でびっくりしたわ。流石鶴丸。伊達に毎日長谷部に追いかけ回されてないね」
本丸では日常のひとつとなったその風景を話に出すと、鶴丸は今朝のそれを思い出したのか、苦い顔をした。
「好きで追い回されてるんじゃないぞ。勝手に追いかけてくるんだ。逃げるしかないだろう」
追いかけられる理由を自分で作っておいてよく言う。しかし、機動おばけの長谷部との鬼ごっこはかなり良い鍛錬になっていることだろう。機動では敵わないため、長谷部を撒くためにいつも知恵を働かせている。戦場でかなりトリッキーな戦い方をしているのは、こういうところに起因するんだろうか。
「この本丸は、良いところだな」
何の脈絡も無く、鶴丸はそう言った。
「そうね。……いきなりどうしたの?」
「ここは暗くないし、狭くないし、驚いてくれる仲間がいる。……なぁ、俺のすていたすの総合値は、かなり低いんだろう?」
どうしてそれを、そう聞く前に鶴丸はその答えを教えてくれた。
「きみが支給してくれた端末でな、調べたんだ。俺達は分霊だから、それぞれの個体に大きな違いは生まれにくい。だから、俺の能力も低いはずであるんだ。でも、きみは俺を使ってくれる。ずっと、心配だったんだ。見た目だけを求められて居るんじゃないかって」
「まあ、中にはそういう本丸もあるかもしれないけど」
「でもきみは違った。俺に刀としての能力を要求して、使って、評価してくれた。俺は今、とっても満たされてる」
そう言うと私の手を引き、後ろから抱き込むような姿勢になった。驚いて固まっている私をよそに、鶴丸は大きな爆弾を落とした。
「なあきみ、好きだ。初めて会ったときから、きみに呼ばれたあの日から」
「……驚いた。何もそんな質の悪い冗談言わなくても」
「冗談なんかじゃないさ。本気だ。きみも、分かってるだろう。なあ、返事をくれないか」
「ナマエ」
今度は鶴丸が固まる番だった。私を抱き込む姿勢は変わらないが、明らかに硬直している。
「きみ、一体何を」
「私の真名」
「それは分かっているさ! でも、なんで、これは冗談なんかじゃ済まされないんだぞ。万が一隠されでもしたらどうするんだ」
「私の返事。分かるでしょう。それに、あなたは神隠しなんてしないもの。そうでしょう?」
そう言って鶴丸の方を向き、してやったとばかりに笑うと、鶴丸も困ったように笑ったあと、真剣な顔をした。
「まったく、きみには敵わないなぁ。ああ、きみが俺を見ているうちは隠さない。だが、他の誰かに靡いたり、俺の前からいなくなるようなら、直ぐに隠させてもらうからな」
それでいい、と返事をすると、先程よりも強い力で抱きしめられた。鶴丸は気づいていなかったようだけど、私も、彼が顕現したその日から、彼に惹かれていた。ずっと意識していたいた相手と、想い合っていたことが分かったのだ、嬉しくないはずがない。
「これからもよろしくね、鶴丸」
「ああ、もちろんだ。末永く、共にあろう」
なんて幸せなのだろう。きっとこれからは、もっともっとお互いを支えあっていける。私は有頂天だった。
だから、私は、私を抱きしめている鶴丸の笑顔が酷く歪んでいたことになんて、気づけなかった。
そう言って自身を飾る薔薇の花を見せて来たときは、何だ、案外似合うじゃないか、と素直に褒めた。
それを聞いた鶴丸は、耳を赤くして照れていたので、ますます鶴っぽくなったんじゃないの、と言ったら、私に薔薇の花を一輪押し付けてから、怒って出ていってしまった。
その後、縁側から庭をぼうっと眺めているのを発見したので、後ろから近づいて驚かせそうとした。しかし、肩に触れる予定だった右手は、あと少しというところであっけなく、振り向いた鶴丸に捕まってしまい、逆にこちらが驚いてしまった。
「どうだ、驚いたか?きみは気配を消すのが下手くそだなぁ。俺だったら、もっと上手くやるぜ」
「神様と一緒にしないでよ。私普通の人間なんだから。それにしても、凄い反応速度でびっくりしたわ。流石鶴丸。伊達に毎日長谷部に追いかけ回されてないね」
本丸では日常のひとつとなったその風景を話に出すと、鶴丸は今朝のそれを思い出したのか、苦い顔をした。
「好きで追い回されてるんじゃないぞ。勝手に追いかけてくるんだ。逃げるしかないだろう」
追いかけられる理由を自分で作っておいてよく言う。しかし、機動おばけの長谷部との鬼ごっこはかなり良い鍛錬になっていることだろう。機動では敵わないため、長谷部を撒くためにいつも知恵を働かせている。戦場でかなりトリッキーな戦い方をしているのは、こういうところに起因するんだろうか。
「この本丸は、良いところだな」
何の脈絡も無く、鶴丸はそう言った。
「そうね。……いきなりどうしたの?」
「ここは暗くないし、狭くないし、驚いてくれる仲間がいる。……なぁ、俺のすていたすの総合値は、かなり低いんだろう?」
どうしてそれを、そう聞く前に鶴丸はその答えを教えてくれた。
「きみが支給してくれた端末でな、調べたんだ。俺達は分霊だから、それぞれの個体に大きな違いは生まれにくい。だから、俺の能力も低いはずであるんだ。でも、きみは俺を使ってくれる。ずっと、心配だったんだ。見た目だけを求められて居るんじゃないかって」
「まあ、中にはそういう本丸もあるかもしれないけど」
「でもきみは違った。俺に刀としての能力を要求して、使って、評価してくれた。俺は今、とっても満たされてる」
そう言うと私の手を引き、後ろから抱き込むような姿勢になった。驚いて固まっている私をよそに、鶴丸は大きな爆弾を落とした。
「なあきみ、好きだ。初めて会ったときから、きみに呼ばれたあの日から」
「……驚いた。何もそんな質の悪い冗談言わなくても」
「冗談なんかじゃないさ。本気だ。きみも、分かってるだろう。なあ、返事をくれないか」
「ナマエ」
今度は鶴丸が固まる番だった。私を抱き込む姿勢は変わらないが、明らかに硬直している。
「きみ、一体何を」
「私の真名」
「それは分かっているさ! でも、なんで、これは冗談なんかじゃ済まされないんだぞ。万が一隠されでもしたらどうするんだ」
「私の返事。分かるでしょう。それに、あなたは神隠しなんてしないもの。そうでしょう?」
そう言って鶴丸の方を向き、してやったとばかりに笑うと、鶴丸も困ったように笑ったあと、真剣な顔をした。
「まったく、きみには敵わないなぁ。ああ、きみが俺を見ているうちは隠さない。だが、他の誰かに靡いたり、俺の前からいなくなるようなら、直ぐに隠させてもらうからな」
それでいい、と返事をすると、先程よりも強い力で抱きしめられた。鶴丸は気づいていなかったようだけど、私も、彼が顕現したその日から、彼に惹かれていた。ずっと意識していたいた相手と、想い合っていたことが分かったのだ、嬉しくないはずがない。
「これからもよろしくね、鶴丸」
「ああ、もちろんだ。末永く、共にあろう」
なんて幸せなのだろう。きっとこれからは、もっともっとお互いを支えあっていける。私は有頂天だった。
だから、私は、私を抱きしめている鶴丸の笑顔が酷く歪んでいたことになんて、気づけなかった。
1/2ページ