黒竜騎士団時代の話
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『家督を継ぐ予定のある者は交流のある他国の騎士団へ入団する』
ウェールズ家のしきたりにより、パーシヴァルがフェードラッヘの黒竜騎士団に入団して数ヵ月が過ぎた。
彼は、団長であるジークフリートの一騎当千の強さを目の当たりにし、その武勇に憧れを抱くようになった。ジークフリートの背中に少しでも追い付きたい一心で、自主的な鍛錬をこなす日々を送っている。
今も中庭で一人剣を振るい、しばしの休憩を取っていた。
「ごめんなさい、今少しだけ大丈夫かしら?」
そこへ遠慮がちに声を掛けてくる女性がいた。
パーシヴァルと同じ鎧を身に着けているということは、彼女も騎士団員だ。同期の中で見たことがないため、先輩だろう。あまりムゲにするわけにもいかず、パーシヴァルは了承する。
彼女はもう一度謝罪と感謝を述べ、優雅にお辞儀をした。
「ミョウジ家のナマエと申します。子供の頃に、ウェールズ家にはお世話になったことがあって、ご挨拶したいと思っていたの。貴方は幼かったし覚えていないかもしれないけれど……」
「……いえ、記憶しております」
パーシヴァルは、予想だにしない展開に固まりそうになる頭を必死に回転させる。
ナマエ・ミョウジ――たしかに、ウェールズで何度か共に過ごした少女の名だった。
覚えている。というより、思い出したの方が正しい。
彼女の言葉通り、子供の頃のことだ。それから、何年もずっと会っていない。その名前を思い返すことすら久しぶりだ。
こんなところで再会するなんて夢にも思わなかった。
それに、ナマエはいたって一般的な貴族の娘だったはず。将来の話を聞いたことはなかったが、まさか騎士団に入っているとは。
「中々声を掛ける機会が無くて、こんな形の挨拶になってしまってごめんなさい」
「俺の方こそ気付かずに申し訳ありませんでした。ご無沙汰しております」
子供の頃の無邪気なものとは全く違う会話に、不思議な心地になる。
しかし、新兵のパーシヴァルが礼を欠くことはできない。
彼には、他国の騎士団で家名を汚す真似は許されないという気負いもあった。一挙手一投足が評価される立場なのだから、気を抜けない。
「ここには私たちの二人だけだし、そんなに畏まらないで」
パーシヴァルの緊張をほぐすように、ナマエは穏やかに微笑んだ。
ふふ、と口元に手を当てる動作に上品な印象を受ける。
亜麻色の髪がふわりと揺れた。その髪の色も翡翠の瞳も、記憶にある少女と一致するものだ。
それでも、どうにも今の彼女と結び付かない。昔のナマエとは話し方も仕草も何もかもが違っていた。何年も経っているのだから、変化しているは当たり前なのだが。
自分の目線より下にあるナマエの頭にも不思議な気持ちになる。昔は自分が彼女を見上げていたのに、すっかり逆転していた。
どことなく居心地の悪さを感じていると、ナマエが「あまり邪魔をしてはいけないわね」と切り出した。
「また会えて嬉しかったわ」
ナマエが立ち去ったのを見送り、ほっと肩の力が抜ける。妙に緊張してしまった。
思いもよらない相手が騎士団にいて、知っている雰囲気から大きく変わっているのだから、理解が追い付かないのも無理はない。
パーシヴァルはそう自分を納得させつつも、狼狽えてしまうことを情けなくも感じる。
再会の喜びよりも今はただ困惑の方が大きかった。
ウェールズ家のしきたりにより、パーシヴァルがフェードラッヘの黒竜騎士団に入団して数ヵ月が過ぎた。
彼は、団長であるジークフリートの一騎当千の強さを目の当たりにし、その武勇に憧れを抱くようになった。ジークフリートの背中に少しでも追い付きたい一心で、自主的な鍛錬をこなす日々を送っている。
今も中庭で一人剣を振るい、しばしの休憩を取っていた。
「ごめんなさい、今少しだけ大丈夫かしら?」
そこへ遠慮がちに声を掛けてくる女性がいた。
パーシヴァルと同じ鎧を身に着けているということは、彼女も騎士団員だ。同期の中で見たことがないため、先輩だろう。あまりムゲにするわけにもいかず、パーシヴァルは了承する。
彼女はもう一度謝罪と感謝を述べ、優雅にお辞儀をした。
「ミョウジ家のナマエと申します。子供の頃に、ウェールズ家にはお世話になったことがあって、ご挨拶したいと思っていたの。貴方は幼かったし覚えていないかもしれないけれど……」
「……いえ、記憶しております」
パーシヴァルは、予想だにしない展開に固まりそうになる頭を必死に回転させる。
ナマエ・ミョウジ――たしかに、ウェールズで何度か共に過ごした少女の名だった。
覚えている。というより、思い出したの方が正しい。
彼女の言葉通り、子供の頃のことだ。それから、何年もずっと会っていない。その名前を思い返すことすら久しぶりだ。
こんなところで再会するなんて夢にも思わなかった。
それに、ナマエはいたって一般的な貴族の娘だったはず。将来の話を聞いたことはなかったが、まさか騎士団に入っているとは。
「中々声を掛ける機会が無くて、こんな形の挨拶になってしまってごめんなさい」
「俺の方こそ気付かずに申し訳ありませんでした。ご無沙汰しております」
子供の頃の無邪気なものとは全く違う会話に、不思議な心地になる。
しかし、新兵のパーシヴァルが礼を欠くことはできない。
彼には、他国の騎士団で家名を汚す真似は許されないという気負いもあった。一挙手一投足が評価される立場なのだから、気を抜けない。
「ここには私たちの二人だけだし、そんなに畏まらないで」
パーシヴァルの緊張をほぐすように、ナマエは穏やかに微笑んだ。
ふふ、と口元に手を当てる動作に上品な印象を受ける。
亜麻色の髪がふわりと揺れた。その髪の色も翡翠の瞳も、記憶にある少女と一致するものだ。
それでも、どうにも今の彼女と結び付かない。昔のナマエとは話し方も仕草も何もかもが違っていた。何年も経っているのだから、変化しているは当たり前なのだが。
自分の目線より下にあるナマエの頭にも不思議な気持ちになる。昔は自分が彼女を見上げていたのに、すっかり逆転していた。
どことなく居心地の悪さを感じていると、ナマエが「あまり邪魔をしてはいけないわね」と切り出した。
「また会えて嬉しかったわ」
ナマエが立ち去ったのを見送り、ほっと肩の力が抜ける。妙に緊張してしまった。
思いもよらない相手が騎士団にいて、知っている雰囲気から大きく変わっているのだから、理解が追い付かないのも無理はない。
パーシヴァルはそう自分を納得させつつも、狼狽えてしまうことを情けなくも感じる。
再会の喜びよりも今はただ困惑の方が大きかった。
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