6.力
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日辻と樺根にどんな顔をして会えばいいのか。
ただでさえ気が進まないのに今更になって眠気が襲ってきて、学校へ向かう速度は鈍い。
同じカーキ色の制服を着た生徒達が、ナマエをどんどん追い抜いていく。
それでも学校に着き、のろのろと下駄箱を開けると何かが落ちてきた。
拾い上げてみれば、数枚の写真。
そこに映るものに息を呑んだ。
瞬時に眠気も吹き飛んでいく。
写真には、男子生徒を殴る日辻の姿があった。
慌てて他の写真を確認するが、どれも同じだった。
アングル、相手は変わっても、捉えているのはひたすらに誰かに暴力を振るう日辻。
中には、日辻の顔――普段からは想像もつかないような、恐ろしい形相――がはっきり映っているものもある。
「こんな……っ」
ナマエは一目散に駆け出した。
日辻はどこに居るのか……。
頭で考えるまでもなく、何故か足が自然にそこへ向かった。
そして、見てしまった。
日辻が八木沼を殴る、その瞬間を。
なおも、日辻は拳を振り上げようとする。
「ひっ、つじくんっ…!!」
ナマエは、無我夢中で二人の間に飛び込んだ。
「ミョウジさん……!?」
驚いたように目を丸くする日辻。
「止めて、お願い!!」
自分より幾分大きな手を、ナマエはぎゅっと両手で包み込んだ。
掌にぬるりとしたものが付着する。おそらくは、八木沼の血だ。
「そっか……見られちゃったか……」
「お、おい、ミョウジ……危ねぇぞ……」
後ろで八木沼が忠告したが、ナマエは聞き入れなかった。
「嘘、だったの……?樺根君を殴ってないっていうのも――ううん、樺根君だけじゃない……他の人も」
「……そう、知られちゃったんじゃしょうがない。そうだよ、僕がやったんだ」
悪びれもせずに、彼は頷いた。
「どうして……」
「どうしてだって? そんなの簡単だよ。結局必要なのは強さだったんだ。僕達のしてきたことが何か身を結んだかい? ずっと続けてきても、何も変わらなかった。それがどうだ……。僕がやり方を変えた途端、学校も変わったんだ。みんな僕の言うことを聞く。力――強い力にみんな従うんだ。だから、これは必要なことだったんだよ」
「そんな……」
日辻は、ナマエの手を振り解いた。
ナマエの体がぐらりと揺れる。
「おかしいよっ! たしかに……私達のしてきたことを、みんな馬鹿にしてきた! だけど、いつか、いつか変わるって信じてきたのに……。日辻君いつも言ってたじゃない!暴力なんて絶対にダメだって!」
「そう。樺根もそんなことを言って僕に反抗した。だから……――。やっぱり相手を動かすには力ずくが一番なんだよ」
ナマエの視界が涙で滲んだ。
日辻の姿が、いつになく遠く見える。
「……こんなことで、誰かを自分の思い通りにしたって、虚しいだけだよ……。おねがい……元の日辻君に戻って……」
パァン!!
「っ!!」
樺根にそうしたように、日辻はナマエにも力で訴えた。
ナマエは目を見開いて震える。
「酷いなぁ。君はきっと僕の味方でいてくれると思ったのに! あの時の返事は嘘だったの!?僕はちゃんとナマエが好きなのに!」
そうして、また殴る。
「あっ……」
ナマエが痛みに顔を歪める。
堪えきれなくなり、涙が頬を伝った。
「黙ってたんじゃ、わからないよ! 何か言ってよ!」
「うぅ……!」
「お、おい……!」
女にも容赦の無い日辻を、八木沼が止めようとする。
「黙れ!」
しかし、日辻の一撃で彼もまた大人しくなる。
やっぱり、力なんだ。
ナマエも、八木沼も、反抗出来ない。
ただ、日辻の行為を受け入れるしかない。
なんて、強い力。
その充足感に、日辻の顔に歪んだ笑みが広がる。
ナマエはへたり込んでしまった。
手で殴られた頬をおさえ、嗚咽を堪えている。
「……いいかい、君は僕のモノだ。今度おかしなことを言ったらタダじゃすまさないよ」
日辻はキツイ口調で言い放った。
それから、一つ宣言した。六道骸の元へ殴り込む、と。
日辻と八木沼が去った後も、ナマエはしばらくそこから動く気になれずその場でうずくまっていた。
「ひつじく……ど……して……――」
……――そして、樺根がやってきて今に至る。
「フィ、フィナーレ……?」
「そうです。この喜劇もついに幕引き……。楽しみですねぇ。いえ、少々心惜しい気もしますかね」
「……あなた、いったい……」
樺根と同じ顔だが、雰囲気が全く違う。
日辻だって、変わってしまった。
だが、そうではない。もっと、大きくなにかが違う。
樺根は一体、何者……?
彼は答えずに薄く微笑む。
ナマエは寒気に襲われた。日辻に殴られた時とは比較にならないような恐怖。
「では、出番が来るまでしばらく眠っていただきましょうか」
樺根の目が光を帯びる。
その途端、本当にそのまま眠り落ちてしまった。
ただでさえ気が進まないのに今更になって眠気が襲ってきて、学校へ向かう速度は鈍い。
同じカーキ色の制服を着た生徒達が、ナマエをどんどん追い抜いていく。
それでも学校に着き、のろのろと下駄箱を開けると何かが落ちてきた。
拾い上げてみれば、数枚の写真。
そこに映るものに息を呑んだ。
瞬時に眠気も吹き飛んでいく。
写真には、男子生徒を殴る日辻の姿があった。
慌てて他の写真を確認するが、どれも同じだった。
アングル、相手は変わっても、捉えているのはひたすらに誰かに暴力を振るう日辻。
中には、日辻の顔――普段からは想像もつかないような、恐ろしい形相――がはっきり映っているものもある。
「こんな……っ」
ナマエは一目散に駆け出した。
日辻はどこに居るのか……。
頭で考えるまでもなく、何故か足が自然にそこへ向かった。
そして、見てしまった。
日辻が八木沼を殴る、その瞬間を。
なおも、日辻は拳を振り上げようとする。
「ひっ、つじくんっ…!!」
ナマエは、無我夢中で二人の間に飛び込んだ。
「ミョウジさん……!?」
驚いたように目を丸くする日辻。
「止めて、お願い!!」
自分より幾分大きな手を、ナマエはぎゅっと両手で包み込んだ。
掌にぬるりとしたものが付着する。おそらくは、八木沼の血だ。
「そっか……見られちゃったか……」
「お、おい、ミョウジ……危ねぇぞ……」
後ろで八木沼が忠告したが、ナマエは聞き入れなかった。
「嘘、だったの……?樺根君を殴ってないっていうのも――ううん、樺根君だけじゃない……他の人も」
「……そう、知られちゃったんじゃしょうがない。そうだよ、僕がやったんだ」
悪びれもせずに、彼は頷いた。
「どうして……」
「どうしてだって? そんなの簡単だよ。結局必要なのは強さだったんだ。僕達のしてきたことが何か身を結んだかい? ずっと続けてきても、何も変わらなかった。それがどうだ……。僕がやり方を変えた途端、学校も変わったんだ。みんな僕の言うことを聞く。力――強い力にみんな従うんだ。だから、これは必要なことだったんだよ」
「そんな……」
日辻は、ナマエの手を振り解いた。
ナマエの体がぐらりと揺れる。
「おかしいよっ! たしかに……私達のしてきたことを、みんな馬鹿にしてきた! だけど、いつか、いつか変わるって信じてきたのに……。日辻君いつも言ってたじゃない!暴力なんて絶対にダメだって!」
「そう。樺根もそんなことを言って僕に反抗した。だから……――。やっぱり相手を動かすには力ずくが一番なんだよ」
ナマエの視界が涙で滲んだ。
日辻の姿が、いつになく遠く見える。
「……こんなことで、誰かを自分の思い通りにしたって、虚しいだけだよ……。おねがい……元の日辻君に戻って……」
パァン!!
「っ!!」
樺根にそうしたように、日辻はナマエにも力で訴えた。
ナマエは目を見開いて震える。
「酷いなぁ。君はきっと僕の味方でいてくれると思ったのに! あの時の返事は嘘だったの!?僕はちゃんとナマエが好きなのに!」
そうして、また殴る。
「あっ……」
ナマエが痛みに顔を歪める。
堪えきれなくなり、涙が頬を伝った。
「黙ってたんじゃ、わからないよ! 何か言ってよ!」
「うぅ……!」
「お、おい……!」
女にも容赦の無い日辻を、八木沼が止めようとする。
「黙れ!」
しかし、日辻の一撃で彼もまた大人しくなる。
やっぱり、力なんだ。
ナマエも、八木沼も、反抗出来ない。
ただ、日辻の行為を受け入れるしかない。
なんて、強い力。
その充足感に、日辻の顔に歪んだ笑みが広がる。
ナマエはへたり込んでしまった。
手で殴られた頬をおさえ、嗚咽を堪えている。
「……いいかい、君は僕のモノだ。今度おかしなことを言ったらタダじゃすまさないよ」
日辻はキツイ口調で言い放った。
それから、一つ宣言した。六道骸の元へ殴り込む、と。
日辻と八木沼が去った後も、ナマエはしばらくそこから動く気になれずその場でうずくまっていた。
「ひつじく……ど……して……――」
……――そして、樺根がやってきて今に至る。
「フィ、フィナーレ……?」
「そうです。この喜劇もついに幕引き……。楽しみですねぇ。いえ、少々心惜しい気もしますかね」
「……あなた、いったい……」
樺根と同じ顔だが、雰囲気が全く違う。
日辻だって、変わってしまった。
だが、そうではない。もっと、大きくなにかが違う。
樺根は一体、何者……?
彼は答えずに薄く微笑む。
ナマエは寒気に襲われた。日辻に殴られた時とは比較にならないような恐怖。
「では、出番が来るまでしばらく眠っていただきましょうか」
樺根の目が光を帯びる。
その途端、本当にそのまま眠り落ちてしまった。