5.そして崩れ出す
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幸い、日辻にはすぐに会えた。
一緒に帰ろうとナマエを待っていてくれたのだ。
せっかく日辻と二人の帰り道なのに、喜べなかった。
気持ちが沈んでいる。さらに、その原因は日辻かもしれない。
「あの……今日、久しぶりに樺根君に会ったよ」
「そう」
樺根の名前を出しても、日辻はあっさりと頷くだけだった。
いっそ、無関心とも取れるほどに。
「それで、樺根君……誰かに何度も殴られたみたいで――」
「まさかっ!? この学校にもうそんなことをする生徒は……いや! それよりも樺根くんは大丈夫なのかい!?」
樺根の身を案じる日辻。殴った張本人が相手の心配なんてするはずがない。
だから、日辻じゃない。そう思いたい……。
「うん……保健の先生に手当てしてもらって。すごく腫れてはいたけど、痛みはほとんど落ち着いたって」
「なら、良かったけれど……」
安堵の溜息をつく日辻。
ほら、やはり日辻は関係ない。
それでも、どこかで彼を疑わしく思ってしまう自分がいる。
その事に気付いて、ナマエは嫌になった。
鞄を持つ手にぎゅっと力を込める。
聞かなくては。こんな状態では、いられない。
「それで、樺根君が言うには……自分を殴った相手は、ひ、日辻君だって……――」
その瞬間。
日辻の顔が凍りついた。
「あ、あの……日辻君……」
「なにを馬鹿な……っ! 僕が樺根くんを殴るなんて! そんな事するわけないじゃないか!」
「そ、だよね……ただ、樺根君からそう聞いて、ちょっと気になっちゃって……」
「ミョウジさんは、僕より樺根くんの言う事を信じるのかい?」
宥めようとしたが、全くの逆効果だった。
信じられないというように、日辻は顔を曇らせる。
その言葉は、奇しくも樺根に言われたものと同じだった。
「ちが……」
ナマエは泣きそうだった。
どちらを信じればいいのだろう。二人とも、嘘をつくなんて思いたくない。
だが、お互いの証言は食い違っていて、どちらかが嘘をついてるとしか考えられない。
二人のことを信じながらも、二人のことを疑っていた。
日辻は、はっと呟く。
「そうだ!もしかしたら、僕に恨みを持っている誰かの仕業かもしれない」
「え?」
「そう、僕のフリをして、樺根くんを襲ったんだ――そうすれば、皆の僕を見る目が変わる」
「……」
「ミョウジさん、お願いだから……僕を信じてほしい」
「う……ん」
日辻の真っ直ぐな瞳に負け、ナマエは弱々しいながらも頷いてしまった。
でも、何かひっかかっていた。
日辻を疑ってしまう心はまだ残っていた。
その日の夜は寝付けなかった。
殴られた樺根の痛々しい顔。
日辻にやられたという彼と、やっていないという日辻。
『会長を信じるんですね……』『樺根くんを信じるのか……』
二人の悲しそうな声が木霊する。
そして、日辻の言葉に頷いた自分。
一つ悩みが生まれたせいか、他のことにまで飛び火してしまう。
突然平和になった学校。日辻への推薦入学。告白されたこと。
全てが幻想の輝きに見えてしまう。
事実、樺根を殴るような人間がまだ学校に居る。
何故、今まで何の疑いも持たなかったのか。
浮かれて、喜びに目が眩んで、なにも見ていなかったのか。
思考は堂々巡りを繰り返す。
こんな時に限って、たっぷりと与えられた時間。
考えても、答えは出ないのに……。
そうして、やっと夜が明けた。
部屋の窓から見えた朝焼けがやけに不気味で、落ち着かない心が余計にざわめいた。
この光は、凶報だろうか。吉報だろうか。
一緒に帰ろうとナマエを待っていてくれたのだ。
せっかく日辻と二人の帰り道なのに、喜べなかった。
気持ちが沈んでいる。さらに、その原因は日辻かもしれない。
「あの……今日、久しぶりに樺根君に会ったよ」
「そう」
樺根の名前を出しても、日辻はあっさりと頷くだけだった。
いっそ、無関心とも取れるほどに。
「それで、樺根君……誰かに何度も殴られたみたいで――」
「まさかっ!? この学校にもうそんなことをする生徒は……いや! それよりも樺根くんは大丈夫なのかい!?」
樺根の身を案じる日辻。殴った張本人が相手の心配なんてするはずがない。
だから、日辻じゃない。そう思いたい……。
「うん……保健の先生に手当てしてもらって。すごく腫れてはいたけど、痛みはほとんど落ち着いたって」
「なら、良かったけれど……」
安堵の溜息をつく日辻。
ほら、やはり日辻は関係ない。
それでも、どこかで彼を疑わしく思ってしまう自分がいる。
その事に気付いて、ナマエは嫌になった。
鞄を持つ手にぎゅっと力を込める。
聞かなくては。こんな状態では、いられない。
「それで、樺根君が言うには……自分を殴った相手は、ひ、日辻君だって……――」
その瞬間。
日辻の顔が凍りついた。
「あ、あの……日辻君……」
「なにを馬鹿な……っ! 僕が樺根くんを殴るなんて! そんな事するわけないじゃないか!」
「そ、だよね……ただ、樺根君からそう聞いて、ちょっと気になっちゃって……」
「ミョウジさんは、僕より樺根くんの言う事を信じるのかい?」
宥めようとしたが、全くの逆効果だった。
信じられないというように、日辻は顔を曇らせる。
その言葉は、奇しくも樺根に言われたものと同じだった。
「ちが……」
ナマエは泣きそうだった。
どちらを信じればいいのだろう。二人とも、嘘をつくなんて思いたくない。
だが、お互いの証言は食い違っていて、どちらかが嘘をついてるとしか考えられない。
二人のことを信じながらも、二人のことを疑っていた。
日辻は、はっと呟く。
「そうだ!もしかしたら、僕に恨みを持っている誰かの仕業かもしれない」
「え?」
「そう、僕のフリをして、樺根くんを襲ったんだ――そうすれば、皆の僕を見る目が変わる」
「……」
「ミョウジさん、お願いだから……僕を信じてほしい」
「う……ん」
日辻の真っ直ぐな瞳に負け、ナマエは弱々しいながらも頷いてしまった。
でも、何かひっかかっていた。
日辻を疑ってしまう心はまだ残っていた。
その日の夜は寝付けなかった。
殴られた樺根の痛々しい顔。
日辻にやられたという彼と、やっていないという日辻。
『会長を信じるんですね……』『樺根くんを信じるのか……』
二人の悲しそうな声が木霊する。
そして、日辻の言葉に頷いた自分。
一つ悩みが生まれたせいか、他のことにまで飛び火してしまう。
突然平和になった学校。日辻への推薦入学。告白されたこと。
全てが幻想の輝きに見えてしまう。
事実、樺根を殴るような人間がまだ学校に居る。
何故、今まで何の疑いも持たなかったのか。
浮かれて、喜びに目が眩んで、なにも見ていなかったのか。
思考は堂々巡りを繰り返す。
こんな時に限って、たっぷりと与えられた時間。
考えても、答えは出ないのに……。
そうして、やっと夜が明けた。
部屋の窓から見えた朝焼けがやけに不気味で、落ち着かない心が余計にざわめいた。
この光は、凶報だろうか。吉報だろうか。