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今日はバレンタインデー。当然、ナマエは愛するパーシヴァルへ渡すチョコレートを用意していた。
しかし、パーシヴァルは甘い物が不得手である。無事に受け取ってもらえるだろうかと少し心配になってしまう。
せっかく準備したのにここで怖気づいてどうする。意を決して彼の部屋をノックした。
ほどなくして顔をのぞかせたパーシヴァルに、「受け取ってください」とおずおずとチョコを差し出す。それから、慌てて付け加えた。
「中身はオランジェットなんです。これなら食べられると思ったので。でも、もしお口に合わなかったら捨ててください」
「お前が用意してくれたものだ。大切にいただこう」
いつだったか、オランジェットを酒のつまみにしていると話したことがあった。何かのついでにぽろりと零した程度の些細なものだ。それを覚えていたのだろうかと嬉しくなる。
そうでなくともナマエからのプレゼントならば何だって喜ばしい。ムゲに扱うなど絶対にあり得ないことだった。
「あぁ、だからだろうか。いつもより甘い香りがするな」
「……っ」
パーシヴァルはナマエを引き寄せる。
自分よりも随分と低い位置にある彼女の頭に顔を近づける行為を、彼はひそかに気に入っていた。ふんわりと柔らかい髪の感触と甘やかな香りはパーシヴァルの心を癒してくれる。普段と少し違う香りも不快だとは感じなかった。
そんな彼とは対照的に、こうしてスキンシップをとられるとナマエはまだ少し困惑してしまう。
「ご、ごめんなさい、臭かったですか!?」
甘い物が苦手なのだから匂いも苦手かもしれない。嫌な思いをさせてしまったらどうしよう。自身の匂いを確認しようにも動けない。だが、苦手だったらわざわざこんなことするだろうか。
慌てふためているうちに、いつの間にか解放された。
「いや、良い香りだ」
「な、なら良かったです……えっと、じゃあこれ」
混乱するナマエはチョコを押し付けて部屋を出ようとするも、パーシヴァルに引き留められる。
「折角だ、今から一緒に食べないか?」
「でも、それはパーシヴァル様のために用意したものですし……」
「俺がお前と食べたいのだが、駄目だろうか?」
「……」
パーシヴァルにそんなことを言われたら、ナマエに断れるわけがない。そのことを分かって言っているのだろうか。
結局、部屋の中へと大人しくついていく。
「飲み物を用意するから待っていてくれ。ちょうどアグロヴァル兄上からウェールズ産のワインをいただいたんだ」
「ありがとうございます」
椅子を引いて座らせてくれる。紳士的な態度はいつも通りだ。
先程は一体どうしたのだろうと驚いたのだが、気にしすぎだったのかもしれない。
グラスを運ぶパーシヴァルを眺めながらそんなことを考えた。
準備を整えたパーシヴァルはチョコの入った箱を開いていく。
巻かれているリボンや包装紙を破かないように慎重い長い指を動かす姿に、ナマエはくすぐったい気持ちになった。
同時に、チョコを気に入ってくれるか再び不安が襲ってくる。
新鮮な果物を用意し、チョコはもちろんチョコレイ島のもの。お菓子作りははじめてではなかったが、何度も試作した。
全てはパーシヴァルに喜んでもらいたいがため。
これで大丈夫だと完成した時は満足したが、本当にそうだろうか?
箱の蓋を開け、中身を見たパーシヴァルはほぅっと感嘆の息を吐いた。
「美しいものだな」
艶やかなオレンジに添えられた茶と白のチョコレート。さらにその上に小さなナッツやドライフルーツが飾られていた。
食べるのが勿体ない気もするが、それではナマエが作ってくれたものを無駄にすることになる。
パーシヴァルはひとつ手に取り目に焼き付けるように眺めて、それからゆっくりと口に運んだ。
その様子をナマエは不安な気持ちでじっと眺める。
「美味い」
「良かったです。甘さは大丈夫ですか?チョコは少なめにしてみたんですけど」
安心したナマエはようやく笑顔を浮かべた。
だが、それも束の間。
「あぁ、ちょうど良い。お前も食べてみろ」
「え?」
遠慮か緊張か全く食べていないナマエに、パーシヴァルが手ずからオランジェットを差し出してきたからだ。
こんなこと普段の彼はするだろうか?
驚いている間にも、唇に押し付けられて抵抗することはできなかった。
「ん、……」
咀嚼する様を目を細めて見つめられて落ち着かない。
自分もチョコのように溶けてしまいそうだ。
試作の際は甘すぎないかバランスはどうだと細かく感じとろうとしていたはずの味は、今は何も感じられなかった。ただギクシャクとチョコを飲み込む錆びた機械のようだった。
「ついているぞ」
「っ!?」
ナマエの動揺を知ってか知らずか、パーシヴァルは更に追撃を加える。
彼女の唇の端に残ったチョコレートを指で拭うと、そのまま舌で舐めとった。
ナマエは真っ赤になって俯いた。
やはり今日のパーシヴァルはおかしい。
だが、ナマエはどうすることもできずただ固まるしかない。
さすがにパーシヴァルもナマエが困惑していることに気付く。
耳まで赤く染め上げている姿が可愛らしい。が、それを言ったらまた戸惑させてしまうかもしれない。
「すまない、お前と久しぶりに会って浮かれていたようだ」
控えめな声に顔を上げると、パーシヴァルは少し困ったような顔で微笑んでいた。
そんな表情も珍しい気がして、思わずじっと見つめてしまう。
たしかに、お互いに騎空団での依頼もあったしナマエはバレンタインの準備に奔走していたため、こうして二人でゆっくり過ごすのは久しぶりだった。
「いえ、わたしも、パーシヴァル様と久しぶりに一緒に過ごせて嬉しいです」
恥ずかしかったり驚いたりはしたけれど、嫌ではなかった。
むしろ彼がそう思っていてくれたことが嬉しい。
はにかむナマエに、パーシヴァルの心は満たされていく。
やはり、彼女が隣にいてくれることが何よりの贈り物だと感じた。
自然と重ねた互いの唇からは、とろけるように甘いチョコの味がした。
しかし、パーシヴァルは甘い物が不得手である。無事に受け取ってもらえるだろうかと少し心配になってしまう。
せっかく準備したのにここで怖気づいてどうする。意を決して彼の部屋をノックした。
ほどなくして顔をのぞかせたパーシヴァルに、「受け取ってください」とおずおずとチョコを差し出す。それから、慌てて付け加えた。
「中身はオランジェットなんです。これなら食べられると思ったので。でも、もしお口に合わなかったら捨ててください」
「お前が用意してくれたものだ。大切にいただこう」
いつだったか、オランジェットを酒のつまみにしていると話したことがあった。何かのついでにぽろりと零した程度の些細なものだ。それを覚えていたのだろうかと嬉しくなる。
そうでなくともナマエからのプレゼントならば何だって喜ばしい。ムゲに扱うなど絶対にあり得ないことだった。
「あぁ、だからだろうか。いつもより甘い香りがするな」
「……っ」
パーシヴァルはナマエを引き寄せる。
自分よりも随分と低い位置にある彼女の頭に顔を近づける行為を、彼はひそかに気に入っていた。ふんわりと柔らかい髪の感触と甘やかな香りはパーシヴァルの心を癒してくれる。普段と少し違う香りも不快だとは感じなかった。
そんな彼とは対照的に、こうしてスキンシップをとられるとナマエはまだ少し困惑してしまう。
「ご、ごめんなさい、臭かったですか!?」
甘い物が苦手なのだから匂いも苦手かもしれない。嫌な思いをさせてしまったらどうしよう。自身の匂いを確認しようにも動けない。だが、苦手だったらわざわざこんなことするだろうか。
慌てふためているうちに、いつの間にか解放された。
「いや、良い香りだ」
「な、なら良かったです……えっと、じゃあこれ」
混乱するナマエはチョコを押し付けて部屋を出ようとするも、パーシヴァルに引き留められる。
「折角だ、今から一緒に食べないか?」
「でも、それはパーシヴァル様のために用意したものですし……」
「俺がお前と食べたいのだが、駄目だろうか?」
「……」
パーシヴァルにそんなことを言われたら、ナマエに断れるわけがない。そのことを分かって言っているのだろうか。
結局、部屋の中へと大人しくついていく。
「飲み物を用意するから待っていてくれ。ちょうどアグロヴァル兄上からウェールズ産のワインをいただいたんだ」
「ありがとうございます」
椅子を引いて座らせてくれる。紳士的な態度はいつも通りだ。
先程は一体どうしたのだろうと驚いたのだが、気にしすぎだったのかもしれない。
グラスを運ぶパーシヴァルを眺めながらそんなことを考えた。
準備を整えたパーシヴァルはチョコの入った箱を開いていく。
巻かれているリボンや包装紙を破かないように慎重い長い指を動かす姿に、ナマエはくすぐったい気持ちになった。
同時に、チョコを気に入ってくれるか再び不安が襲ってくる。
新鮮な果物を用意し、チョコはもちろんチョコレイ島のもの。お菓子作りははじめてではなかったが、何度も試作した。
全てはパーシヴァルに喜んでもらいたいがため。
これで大丈夫だと完成した時は満足したが、本当にそうだろうか?
箱の蓋を開け、中身を見たパーシヴァルはほぅっと感嘆の息を吐いた。
「美しいものだな」
艶やかなオレンジに添えられた茶と白のチョコレート。さらにその上に小さなナッツやドライフルーツが飾られていた。
食べるのが勿体ない気もするが、それではナマエが作ってくれたものを無駄にすることになる。
パーシヴァルはひとつ手に取り目に焼き付けるように眺めて、それからゆっくりと口に運んだ。
その様子をナマエは不安な気持ちでじっと眺める。
「美味い」
「良かったです。甘さは大丈夫ですか?チョコは少なめにしてみたんですけど」
安心したナマエはようやく笑顔を浮かべた。
だが、それも束の間。
「あぁ、ちょうど良い。お前も食べてみろ」
「え?」
遠慮か緊張か全く食べていないナマエに、パーシヴァルが手ずからオランジェットを差し出してきたからだ。
こんなこと普段の彼はするだろうか?
驚いている間にも、唇に押し付けられて抵抗することはできなかった。
「ん、……」
咀嚼する様を目を細めて見つめられて落ち着かない。
自分もチョコのように溶けてしまいそうだ。
試作の際は甘すぎないかバランスはどうだと細かく感じとろうとしていたはずの味は、今は何も感じられなかった。ただギクシャクとチョコを飲み込む錆びた機械のようだった。
「ついているぞ」
「っ!?」
ナマエの動揺を知ってか知らずか、パーシヴァルは更に追撃を加える。
彼女の唇の端に残ったチョコレートを指で拭うと、そのまま舌で舐めとった。
ナマエは真っ赤になって俯いた。
やはり今日のパーシヴァルはおかしい。
だが、ナマエはどうすることもできずただ固まるしかない。
さすがにパーシヴァルもナマエが困惑していることに気付く。
耳まで赤く染め上げている姿が可愛らしい。が、それを言ったらまた戸惑させてしまうかもしれない。
「すまない、お前と久しぶりに会って浮かれていたようだ」
控えめな声に顔を上げると、パーシヴァルは少し困ったような顔で微笑んでいた。
そんな表情も珍しい気がして、思わずじっと見つめてしまう。
たしかに、お互いに騎空団での依頼もあったしナマエはバレンタインの準備に奔走していたため、こうして二人でゆっくり過ごすのは久しぶりだった。
「いえ、わたしも、パーシヴァル様と久しぶりに一緒に過ごせて嬉しいです」
恥ずかしかったり驚いたりはしたけれど、嫌ではなかった。
むしろ彼がそう思っていてくれたことが嬉しい。
はにかむナマエに、パーシヴァルの心は満たされていく。
やはり、彼女が隣にいてくれることが何よりの贈り物だと感じた。
自然と重ねた互いの唇からは、とろけるように甘いチョコの味がした。
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