ボクの先生はヒーロー

【17 過去とは違う今】
[ボクの先生はヒーロー]



 主戦力たる上忍、中忍の部隊の多くが動揺し、動きを止めていた。

 無理もない。

 彼らの殆どは実際に九尾の災厄を経験した世代だ。

 家族や仲間をあの夜に失った絶望と恐怖がまざまざと蘇り、戦意を失っていく。

 そんな同朋の間を駆け抜け様、カカシは叫んだ。

「よく見ろっ! あれは九尾じゃないっ!」

 たしかに、落ち着いてよく見れば、鼻先に角のようなものがある。

 全体的な色合いも若干、白く思えた。

 だが、その程度の違いがなんの慰めになるのだろう。

 姿形が変わっても、あれは九尾の再来なのだ。

 それだけで、木ノ葉隠れの人々の心を挫くのは充分だ。

 あの災厄が、繰り返される。

 誰も敵うものはない。
 絶望に囚われて動けなくなる中、1人カカシは声を上げた。

「また後悔したいのかっ!」

 まるで自分を叱咤するかのような言葉を、周囲へ聞かせる。

「もう、あの時のオレたちじゃないはずだっ!」
 
 誰もが、思ってきたはずだ。

 今の自分がいれば、誰かがこうしていたらと。

 カカシは印を組み、右手にチャクラを集束してゆく。

「あの時に、出来なかった事をしろっ!」



 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2006/02/05
UP DATE:2006/07/13(PC)
   2008/12/07(mobile)
RE UP DATE:2024/08/10
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