ボクの先生はヒーロー

【9 危惧される誤解】
[ボクの先生はヒーロー]



 下忍たちが去ってもしばらく続いた沈黙を押しのけ、発せられた3代目の声は静かだが苦い響きがあった。

「ナルトが居らぬのは、ちとマズイのう……」

 そのまま煙管を一服する間、カカシとイルカは互いの感情を押し殺そうとしている表情を伺いつつ、3代目の言葉を待っている。

 2人ともこの状況が大事な教え子にどれほどの不利益をもたらすのか分かっているのだ。

「騒ぎ立てられれば、もはや隠しとおすことも出来ぬし……」

「つまり、その前に解決にしろってコトですね」

「やれるか?」

 1夜のうちにこれだけの事件が起き、ナルトまでもが姿を消したのだ。

 中には、ナルトを犯人と見る者がいないとは言い切れない。

 そしてそのことから、里にまた入らぬ誤解からの騒動を起こすこともある。

「無理でもやりますよ」

 幾つもの危惧を抱え、カカシは簡単に請け負ってみせた。

「さて、と。イルカ先生、協力してくださいね」

「はい」
 
 2人は行方不明者や荒らされた場所のリストを確認し、さらに里の地図へその場所をピンでチェックしていく。

 だが、人が消えた場所と荒らされた場所が重なることはなく、また何らかの関係性を見出すこともできない。

 しいてあげれば、それぞれの場所が幾つかの筋になっているように見えることぐらいだ。

「これは、幾つか───最低でも5つのチームがそれぞれのルートで移動しながら、行動しているとも見えますが……」

「ええ。ですが地図の上では可能でも実際の地理的には無理な動きもみえますね」

 イルカの言葉を聞いてカカシが示したのは火影岩の上下を貫くラインと、橋のない川を渡るラインだった。

 それ以外のラインも道や建物を無視した───まるで、空でも飛んで移動しているかのような動きをしている。

 いや、忍びであれば可能かもしれないが、それにしても自由すぎる。

 第一、人をかどわかしながらの動きとはとても思えないルート取りではないだろうか。

「たしかに、どちらから回っても、1チーム10人前後の人間を抱えながら行動できるとは……」
 
 そうイルカが呟いた直後、3人は執務室の中央に視線を集めた。

 そこに、何者かのチャクラが集束しつつある。

「オヤジっ!」

 瞬身の術で飛び込んできたのはアスマだった。

 3代目がその無作法をたしなめる前に、いつもは泰然自若とした上忍がやや興奮した声をだす。

「分かったぜ……やつらの手口が……」

「なんじゃとっ」

「ホント、アスマ?」

「ああ。さっき奈良家の研究所でな……」

 だがアスマが真相を語りだすまでもなく、事態は急速な展開を迎えることとなった。



 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2005/12/08
UP DATE:2005/12/22(PC)
   2008/12/05(mobile)
RE UP DATE:2024/08/10
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