ボクの先生はヒーロー

【7 語れぬ真実】
[ボクの先生はヒーロー]



 カカシは部下たちを伴って火影の執務室を再び訪れた。

 他の上忍師たちも部下やその家族の無事を報告し、新たな情報を得るとまたすぐに調査の為に出て行く。

「何かあったようじゃな……」

 報告する忍が途切れたところで、3代目火影は様子を見ているだけで報告しようとしないカカシへ声を掛けた。

 彼の背後にいる2人だけの部下の姿に、大体の事情を察しながらも。

「ええ。サクラの両親が消えました。それに、ナルトも……」

「そうか。それで?」

 冷徹に、なんでもないことのように返す3代目だが、やはり表情が険しくみえる。

 カカシも平素と変わらぬ暢気な声を出していながら、目は冴え冴えとした光を湛えていた。

「オレの忍犬に匂い追わせてみたんですけどー、何の手がかりもないんですよねえ。コレが」

「お主に追えぬか……」

 ゆっくりと吐き出される紫煙はため息を含んでいる。

「それにしても、ナルトか……」
 
 呆れたような苦笑交じりの声音で3代目は呟き、担当上忍は困ったような表情を浮かべて肩をすくめた。

 ナルトの仲間である下忍2人も彼らの表向きの感情に同調するような雰囲気をみせている。

 まだ、本当のところは聞かせられない。

 そういう思惑を隠した2人の目が扉に向けられると同時にイルカによって開かれた。

「失礼します。3代目、新しい情報がまとまりましたので……」

 そこで、その場にいた人物の顔ぶれから状況を察したのだろうイルカの声は途切れる。

「イルカ先生……」

 サクラもサスケも、ここにナルトがいないことでイルカが酷く心配するだろうことは分かっていた。

 けれど、その真実を彼らはまだ知らない。

「して、イルカ。その後、何かわかったか?」

「は、はい。新たに判明した行方不明者と物色された場所はこちらに」

 まず書類だけを受け取り、3代目はざっと目を通すとカカシへもその書面を回す。

 イルカへは上忍たちからもたらされた、また別の報告を知らせる。

「……と、いうことじゃ。そこでな、お主らの意見も聞きたい」

 その言葉に、カカシは部下の肩を押しやった。

「お前ら、先下りてナ」
 
 すぐ行くから、と微笑んで。



 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2005/11/18
UP DATE:2005/12/22(PC)
   2008/12/05(mobile)
RE UP DATE:2024/08/10
7/41ページ
スキ