ボクの先生はヒーロー

【6 想いの行方】
[ボクの先生はヒーロー]



 さて、カカシ班が合流していた頃、他の班でも上忍師はそれぞれ担当する下忍たちを確認していた。

 夕日紅の元には特に一族が多い者たちばかりだったが、ひとまず部下3人は無事である。

「良かった。みんな、揃ってるわね」

 集合して開口一番そう訊ねた担当上忍の言葉に、紅班の下忍たちは今朝からの違和感が間違いでないことを悟った。

「何かあったんだな、先生」

 確信的に問うキバの口調で、紅も彼らが薄々と何かを察しているのだと分かる。

 こうなれば、回りくどい説明はいらない。

「ええ。みんなの周りでは、変わったことはなかった? 例えば……」

「例えば、何の痕跡も残さずに家族が消えていたり、書庫が荒らされていたり、ということか?」

 ぼつりと呟くように答えたシノは、顔色を変えた担当上忍を安心させる為に補足する。

「今朝早くにそういう情報があって……、一族全員で蟲と秘伝書の確認をした」

「わ、私のうちもです」
 
「オレんとこも。ああ、ちなみにうちの犬たちはみんないたぜ」

 ヒナタに続いて答えるキバに賛同するように、赤丸が吠える。

「ああでも、姉ちゃんが病院で預かってんのまではわかんねえ。まあ、なんか変わった事がありゃ、今頃、姉ちゃんが報告してるだろうけど」

「そう……」

 3人とも不正確ながらも何かしらの情報を得ていることに、紅はホッとしながらも複雑な思いがした。

 それぞれ油女、犬塚、日向という里内での影響力・発言力が大きな一族であるから、仕方のないことかもしれないが。

 けれど、実力主義であるはずの忍びの社会も結局、生まれによって生じる差異ができてしまうのは皮肉としか言いようがない。

 まあ、そうして上位に位置付けられる者にも、それなりの苦悩や葛藤があることは紅はもちろん、この3人も身を持って知っていた。

 そう思い至り、紅はその美しい眉をひそめる。

 今の下忍は殆どの班に大きな一族の者か、里でも有数の実力者を親に持つ者がいる。

 きっと、彼らも紅の部下と同じように何らかの情報を持って今日の任務に当たるのだろう。

 ただ1班を除いて。

───まあ、私が心配することじゃないわね
 
「あの、先生……」

 長く黙りこくった紅を案じてか、ヒナタが問い掛けてくる。

 それに極上の笑顔を返し、紅は部下たちへ任務の内容を告げた。

「さあ、今日はかなり大変よ。里で起きてる異変の調査、解決。ただし、他の班と合同だから」

 抜け駆けされないようにね。



 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2005/11/13
UP DATE:2005/12/22(PC)
   2008/12/05(mobile)
RE UP DATE:2024/08/10
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