ボクの先生はヒーロー

【2 消える日常】
[ボクの先生はヒーロー]



 いつも通りの時間に目を覚ましたサクラは、やけに家の中が静かだと気付く。

 普段なら母親が朝食を作る音や、決まって集合時間に遅れてくる担当上忍師をダシに2度寝に入ろうとするサクラを呼ぶ声がするのに。

 通りを掃除する父親が近所の人と交わす挨拶や、豆腐売りを呼び止める声も聞こえてはこない。

「どうしたのかな……」

 なんとなく嫌な予感を覚えたサクラはベッドを抜け出し、急いで着替えて髪を簡単に整え、台所へ下りていった。

「お母さん、おは……」

 だが、そこにいつもの風景はない。

 台所は片付けられていて時折、落ちる水滴の音がやけに冷たく響いた。

 玄関にはきちんと両親の履物が並んでいるし、ちょっとした用事で出かけるときのつっかけもそのまま。

 けれど、家のどこにも両親の姿はなかった。

 最後に両親の寝室を覗き、サクラは膝を着く。
 
 まるで溶けてしまったかのように、布団に寝乱れた跡だけを残し、2人の姿はなくなっていた。

「……どう、し……」

 泣きだしそうになりながら、サクラは家を飛び出した。

 走って行った先は、今日の集合場所。

 もし、仲間たちまで消えていたら。

 そう考えると身が振るえた。

 とにかく、それを確認しなければ。

「……泣いてる場合じゃないわっ」

 そう自分を叱咤し、サクラは駆けた。



 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2005/11/01
UP DATE:2005/11/14(PC)
   2008/12/05(mobile)
RE UP DATE:2024/08/10
2/41ページ
スキ