今日は猫の日
【猫派 or 犬派?】
[今日は猫の日]
「犬派か? 猫派か? トーゼン、犬派だよなっ?」
任務を貰いに訪れた受付で同期の忍犬使いに詰め寄られたイノシカチョウトリオは目の据わった彼の背後で呆れる蟲使いと狼狽える瞳術使いの姿に状況を察し、深くため息を吐いたり興味無さげに明後日の方向へ視線を向けたり手にしていたスナック菓子の袋をおもむろに開封したりしつつ、どうやり過ごすべきか思考を巡らせる。
けれど2人が出した答えはシカマルに任せるであり、当の本人もめんどくせえけどオレが相手するしかねえか、であった。
「おいおい、薮から棒になんだってんだよ。落ち着いて最初から話してくれよ。なあ、キバ」
と、殊更ゆったりと話すシカマルに焦れたキバは愛犬の赤丸を撫でながらカウンターに掲げられた日付を示して喚く。
「猫の日!」
いつの頃からか2月22日を猫の日と制定し、様々な企業や媒体がイベントやらキャンペーンをしている事はシカマルだけでなくここにいる全員が知っている。
「……ああ、らしいな。で?」
「狡いと思わねえかっ? 猫の日があるなら犬の日だって」
「あるだろ。確か、11月1日だったか?」
「あるのかっ!?」
キバの訴えを遮って訂正するシカマルの言葉にいのがカウンターに置かれたカレンダーを捲って見せれば、確かに11月1日には『犬の日』の記述があった。
あったのかー、良かったなー、赤丸ー。
と素直に喜ぶキバへ、犬好きなのに知らなかったのか、という視線も向く。
しかし、キバ以上に憤懣やる方ない思いを抱く者がいた。
「不公平だと思わないか?」
「……今度はシノか。予想はつくが、言ってみろよ」
「猫の日も、犬の日もあり、愛鳥週間なんて期間まで存在する。なのに何故、虫の日はないのだ?」
そのまま訥々と虫の良さと虫への思いを語り続けるシノへ、虫歯予防デーは……関係ないよね、とカレンダーを捲りつつ必死でフォローしようとするヒナタ以外はこの面倒くさい同期を持て余し、放置を決め込もうとしていた。
そこへタイミング良く───というか、悪くというか───、もう一組の同期がやってくる。
「オーッス! 珍しいな、勢ぞろいなんて」
「ナナナナルトくんっ! おおおおおはようっ」
「おはよーって、なにやってんの受付で?」
相変わらずナルトを前にすると真っ赤になって吃りだすヒナタをスルーし、サクラは1人足りない同期を見渡す。
彼らの後ろでサイも何事かと首を傾げていた。
「うーん。今日はさ、猫の日だってことでキバが犬派か猫派か聞いてきたり、シノがどーして虫の日はないんだってぼやいててさー」
「あー。なるほどねー」
いのの端的な説明に、厄介な所に来てしまったとサクラは額を押さえる。
拘りの強いキバとシノにあまり強く主張できないヒナタ、面倒くさがりなシカマルと事なかれ主義ないのとチョウジ。
そこへ問題を大きくしそうなナルトが加わってしまったのだ。
誰かが早急にこの問題児どもを納得させ任務に向かわせないと、とんでもないことになりかねない。
が、一般常識に疎すぎるサイでは物事をややこしくしても、丸く治めるのは難しいだろう。
こうなっては仕方がないとサクラが収集に乗り出しかけたところへ、不意にいのが問うてきた。
「ところでさー、サクラ。サスケくんって犬派? それとも猫派?」
「は? うーん、そういやうちは一族って忍猫と付き合いあったから、猫派かもしれないわね」
「えー、そうなの? 私、どっちかっていうと犬派なんだけどなー」
済し崩しに雑談へと流れてしまい、ますます混迷を深めて行く受付のカウンターへ空気も読まずサイは声をかけた。
「すいません、7班の任務割当表を貰えますか?」
───猫派 or 犬派?
どちらにせよ、みんな仲良く───
【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2017/02/22
UP DATE:2017/02/22(mobile)
RE UP DATE:2024/08/05
[今日は猫の日]
「犬派か? 猫派か? トーゼン、犬派だよなっ?」
任務を貰いに訪れた受付で同期の忍犬使いに詰め寄られたイノシカチョウトリオは目の据わった彼の背後で呆れる蟲使いと狼狽える瞳術使いの姿に状況を察し、深くため息を吐いたり興味無さげに明後日の方向へ視線を向けたり手にしていたスナック菓子の袋をおもむろに開封したりしつつ、どうやり過ごすべきか思考を巡らせる。
けれど2人が出した答えはシカマルに任せるであり、当の本人もめんどくせえけどオレが相手するしかねえか、であった。
「おいおい、薮から棒になんだってんだよ。落ち着いて最初から話してくれよ。なあ、キバ」
と、殊更ゆったりと話すシカマルに焦れたキバは愛犬の赤丸を撫でながらカウンターに掲げられた日付を示して喚く。
「猫の日!」
いつの頃からか2月22日を猫の日と制定し、様々な企業や媒体がイベントやらキャンペーンをしている事はシカマルだけでなくここにいる全員が知っている。
「……ああ、らしいな。で?」
「狡いと思わねえかっ? 猫の日があるなら犬の日だって」
「あるだろ。確か、11月1日だったか?」
「あるのかっ!?」
キバの訴えを遮って訂正するシカマルの言葉にいのがカウンターに置かれたカレンダーを捲って見せれば、確かに11月1日には『犬の日』の記述があった。
あったのかー、良かったなー、赤丸ー。
と素直に喜ぶキバへ、犬好きなのに知らなかったのか、という視線も向く。
しかし、キバ以上に憤懣やる方ない思いを抱く者がいた。
「不公平だと思わないか?」
「……今度はシノか。予想はつくが、言ってみろよ」
「猫の日も、犬の日もあり、愛鳥週間なんて期間まで存在する。なのに何故、虫の日はないのだ?」
そのまま訥々と虫の良さと虫への思いを語り続けるシノへ、虫歯予防デーは……関係ないよね、とカレンダーを捲りつつ必死でフォローしようとするヒナタ以外はこの面倒くさい同期を持て余し、放置を決め込もうとしていた。
そこへタイミング良く───というか、悪くというか───、もう一組の同期がやってくる。
「オーッス! 珍しいな、勢ぞろいなんて」
「ナナナナルトくんっ! おおおおおはようっ」
「おはよーって、なにやってんの受付で?」
相変わらずナルトを前にすると真っ赤になって吃りだすヒナタをスルーし、サクラは1人足りない同期を見渡す。
彼らの後ろでサイも何事かと首を傾げていた。
「うーん。今日はさ、猫の日だってことでキバが犬派か猫派か聞いてきたり、シノがどーして虫の日はないんだってぼやいててさー」
「あー。なるほどねー」
いのの端的な説明に、厄介な所に来てしまったとサクラは額を押さえる。
拘りの強いキバとシノにあまり強く主張できないヒナタ、面倒くさがりなシカマルと事なかれ主義ないのとチョウジ。
そこへ問題を大きくしそうなナルトが加わってしまったのだ。
誰かが早急にこの問題児どもを納得させ任務に向かわせないと、とんでもないことになりかねない。
が、一般常識に疎すぎるサイでは物事をややこしくしても、丸く治めるのは難しいだろう。
こうなっては仕方がないとサクラが収集に乗り出しかけたところへ、不意にいのが問うてきた。
「ところでさー、サクラ。サスケくんって犬派? それとも猫派?」
「は? うーん、そういやうちは一族って忍猫と付き合いあったから、猫派かもしれないわね」
「えー、そうなの? 私、どっちかっていうと犬派なんだけどなー」
済し崩しに雑談へと流れてしまい、ますます混迷を深めて行く受付のカウンターへ空気も読まずサイは声をかけた。
「すいません、7班の任務割当表を貰えますか?」
───猫派 or 犬派?
どちらにせよ、みんな仲良く───
【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2017/02/22
UP DATE:2017/02/22(mobile)
RE UP DATE:2024/08/05