Trick or Treat

【変わるわヨ 2】
[Trick or Treat]



 夕暮れになって、木ノ葉隠れの里を様々な扮装をした人々が練り歩き始めた。

 一般の人々は手作りの衣装で高名な忍びの格好をし、下忍は変化の術で幻想的な姿になって。
 時々、元の姿に戻ってしまう子がいるのは、まだアカデミー生だからだろう。

 そんな行列を見下ろせる、通りに面した店は見物人で賑わっていた。

 店側も店員にちょっとした扮装をさせたり、仮装をして入店した客へのサービスもしている。

 お陰で、里のあちこちに奇妙な格好をした人々が溢れ返り、逆に普通の格好で出歩くと目立つくらいだ。

 これほど盛大なイベントになるとは想像もしていなかったネジはいつもの姿。
 町外れで足を止め、しばし考える。

 だが、どう変化したものかとっさに思い浮かばない。

───こういう発想は、ナルトなんかが得意なんだが……

 そう思い至ったのとほぼ同時に、思い浮かんだ者の声がした。
 
「あ、ネジ兄さん」

「……ナルト?……」

 いや、話し方事体が明らかに違っている。
 姿は確かにうずまきナルトだったが、格好は黒づくめの正装。
 しかも、内股でモジモジそわそわと落ち着きがない。

 いや、あいつに落ち着きがないのはいつものことだが、と思考が動き出す。
 すると、途端に思い至った。

「もしかして……ヒナタ、さま……です、か?」

「ええ。ネジ兄さんも行列を見に?」

 つつましく微笑みながら小首を傾げるナルト───の姿をしたヒナタ。

 分かっていても、ネジは自分の背中を何か得たいの知れないものが駆け抜けていくのを感じた。

「い、いや、オレは……きゅ、急用を思い出したので、し、失礼しますっ! ヒナタ様はどうかゆっくり、楽しんでいってくださいっ!」

 一息にまくし立て、ネジはダッシュで逃げ出していた。

 ナルトの姿をしたヒナタの背後に並ぶ、妖怪大戦争としか言いようのない仲間たちの姿からも敢えて眼をそむけて。



 【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2005/10/26
UP DATE:2005/11/02(PC)
   2009/10/20(mobile)
RE UP DATE:2024/08/05
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