君の生まれた日

【宵祭】
   ~ あの秋の日 05 ~
[君の生まれた日]



 日暮れても灯火を手に、日向一族の者たちは戦場となった地を駆ける。

 白眼という血継限界を持つがゆえに、この惨事への介入が許されず、歯痒い思いをした。

 里の中には優遇され、守られているのだと心無い言葉を投げつけてくる者もいないわけではない。

 それは、見当外れということでもなかった。

 だからこそ、宗主自らそう言った中傷は甘んじて受け、一族を挙げてただ事後の処理に当たっている。

 白眼を駆使し、まだ息のある者を救い、事切れている者もできるだけ多く里へ戻してやる。

 遺された者である彼らにはそれしかできることはないのだ。

 ヒアシは、ふと顔を上げる。

 辺りを見渡せば、宵闇の中を飛び回る一族の灯火。

「まるで祭りだな」

 宵越しで火を振り、死者を迎え送る祭りを思い出していた。



 【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2005/10/10
UP DATE:2005/10/20(PC)
   2009/10/01(mobile)
RE UP DATE:2024/08/05
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