君の生まれた日

【東雲】
   ~ あの秋の日 05 ~
[君の生まれた日]



「オレは酷いヤツだな」

「なんだって?」

 小さく呟いたシカクの声を、珍しくチョウザが聞きとがめた。

「何、言ってんだよ」

「言った通りさ。オレはこんな事態になっちまってんのに、ホッとしてんのさ」

「だったら、オレもお前と同じだな。確かに、そう思うよ」

「いのいちまで何言い出すんだ?」

 ワケが分からないと言った表情で、チョウザは2人の仲間と自身を見比べる。

「お前だって、自分のガキがほんの1週間か十日前に生まれてたとすりゃ、分かるだろうよ」

 シカクはそう、吐き捨てた。

「オレは、自分が生き残ったことや、里が救われたことよりも……」

 いのいちの言葉は途中で途切れたけれど、チョウザにも分かる。

 自分の子が無事だったことの裏には、英雄となった子供がいることを。



 【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2005/10/10
UP DATE:2005/10/20(PC)
   2009/10/01(mobile)
RE UP DATE:2024/08/05
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