One Day

【午睡の夢】
   ~ ある秋の日 05 ~
[One Day]



 夏が過ぎた。
 朝夕はそろそろ肌寒く、日の高いうちでももう汗ばむこともない。

 そんな陽だまりに眠る弟の傍らでイタチは本を読んでいた。

 寝返りを繰り返すサスケに、その度に掛布を直してやりながら。

 広い屋敷に今は2人だけ。
 近所の子供たちが通りで遊んでいる声も遠い。

 弟につられぬよう、出かけた欠伸をかみ殺す。

 ふと、イタチは周囲を見渡す。

 漂っていた意識が、覚めていった。

 弟に掛かる障子の影は、少し濃くなっていた。
 しかし、うとうととしだした時分から、さほど経っていない。

 穏やかな空気に割って入るように玄関が引き開けられる音がし、慌しい───それでも極力ひそめた───足音が近付いてきた。

 目覚めたのは、確かに何かの気配を感じてのことだった。

 だが、もっと別の、嫌な夢を見た気もする。

 あれは何だったかと思い巡らす前に、襖がからりと開いた。
 
「ただいまー。イタチ、ありがとう。サスケぐずらなかった?」

「大丈夫だったよ、母さん」

 大きく欠伸をする弟と、まだどこか午睡の中を漂っているような兄。

 そんな息子たちの姿を見比べて、母はくすりと笑った。

「本当にあなたたちはお父さんにそっくりね」



 【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2005/09/25
UP DATE:2005/10/10(PC)
   2009/09/20(mobile)
RE UP DATE:2024/08/05
4/5ページ
スキ