One Day

【Baby Talk】
   ~ ある秋の日 05 ~
[One Day]



「よお」

「どーした? こんなところで」

 心配げに聞かれるのは、病院の待合室で声を掛けたせいだろう。

 探るように見つめ返してくる相手へ、苦笑で返す。

「お前と一緒さ」

 そう言って身をかがめ、膝に乗せられた子供を覗き込む。

「流石にデカイな。いつ生まれだ?」

「5月だ。まだ4ヶ月なんだが、もう2歳児ぐらいらしい」

「へえ。チョウザの子かあ」

 2人の間に、馴染みのある声が割って入った。

「いのいちまで来てたのか。どうした」

「ふふん。シカクのとこの翌日にうちも生まれてな」

「これでガキどもまでスリーマンセル組んだりしねよなあ」

「ははは。そりゃ、楽しそうだな」

「じゃ、うちのお姫様の顔でも拝ませておいてやろう」

 ご機嫌で促すかつてのスリーマンセルの仲間に頷き、3人連れ立って新生児室へ向かう。

「親バカだな」

「バカ親ってんだ。ありゃ」
 
 そんな軽口まで懐かしく思いながら。



 【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2005/09/25
UP DATE:2005/10/10(PC)
   2009/09/20(mobile)
RE UP DATE:2024/08/05
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