天国への段階

【ラストサマー】
   ~ 夏休み 05 ~
[天国への段階]



「準備、いい?」

 蝋燭の灯りにゆれるいのの鬼気迫る表情に、全員がうなずいた。

 ごくりと息をのむナルト、の隣りにサクラとサスケ。
 更にいの、シカマル、チョウジ。
 シノ、ヒナタ、キバに赤丸。

 ぐるりと9人と1匹が円になり、彼らの中心には香炉が1つ置かれている。
 熱い夏の一夜を、下忍たちは古式ゆかしい百物語で過ごそうとしていた。

「それじゃあまず、アタシからね~」

 ちなみに、彼らの担当上忍らは許可だけを出して欠席している。

「アカデミーの頃のこと、なんだけど……」

 こういったおアソビが許されるのは、アカデミー生か下忍ルーキーまで。

 ある程度、忍者としての経験を積んで───要するに、人を手にかけてしまうと、とてもじゃないができなくなってしまう。
 そういうものなのだ。
 
 だから、この子供達が人外の怖い話に興じるのは、これで最後。

 これからは、もっと恐ろしい現実に否応なく放り込まれるのだ。

 言わばこれは、儀式のようなもの。

 幼年期の終わりを告げる、夏の一夜の。



 【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2005/08/04
UP DATE:2005/08/31(PC)
   2009/07/23(mobile)
RE UP DATE:2024/08/05
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