この夏の予定

【ワーカホリック 1】
   ~ 夏休み 05 ~
[この夏の予定]



「おう、戻ったか」

 ご苦労だったな、カカシ。

 美しい里長の労いに、ため息のような気のない返事をするのは里が誇る上忍。

「はあ」

「どうした。しっかりしてくれよ。オマエにゃまだまだ働いてもらわなきゃならないんだ」

 言いながら任務書の束を漁りだすツナデに、カカシは眠そうな目を向ける。

「……だったら、少しは休ませてくださいよー」

「若いモンがなに言ってんだー。あ?」

「はあ」

 ツッコミどころの難しい言葉を、カカシは敢えて流した。

「若造といやぁ、あの中忍」

「イルカ先生がどーかしましたか?」

 あの中忍と言われ、即その名がでてくるワケは木ノ葉隠れの里中が知っている。

「ああ。ちょっと、手違いがあってなあ……」

「手違い?」

 全く悪びれずに続けようとするツナデの態度に、カカシの目は刺を含んだ。
 
「そう睨むな。たまにはこういうこともあって……」

「たまにはってねー。……は~ぁ、3度目じゃないですか。イルカ先生の任務だけで」

 例え心の中であっても、ボケたんじゃねえか、などと思ってはいけない。

 うっかり口にでも出そうものなら、2度と里に戻れないような任務を押し付けられることだろう。

 見せられた任務書にカカシは言葉を無くした。

「……これ、」

 ワザとデショ、と言いたいのをこらえてイルカの任務書を握りつぶす。

 いくらイルカが優秀で、今の里が人手不足とはいえ、それは中忍1人に任されるレベルの任務ではない。

 表記されたランクはAだが、限りなくSに近い内容だ。

 肩を落とし、カカシはツナデへ背を向ける。

「行ってきます……」

「頑張っといで」

 ただ、こうして何度も繰り返される手違いが故意か不測かは、誰にも分からない。



 【続く】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2005/07/17
UP DATE:2005/07/30(PC)
   2009/07/11(mobile)
RE UP DATE:2024/08/02
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