ママの歌

【赤い花、白い花】
   ~ 母の日 05 ~
[ママの歌]



 この日、慰霊碑は赤と白に彩られる。

 白い花は子から母へ。

 赤い花は母から子へ。

 もしくは、子から母へ。

 今日は母への感謝を示す日だ。

 亡くなった母へは白い花を捧げ、健在な母へは赤い花を贈る風習だ。

 しかし最近は関係なく赤い花を捧る者が多い。

 感謝と尊敬の気持ちは、変わらないという思いで。

 しかし、イルカは白い花を持ってここへきた。

 慰霊碑の前に山と積まれた花の片隅に自分の持ってきた花を加える。

 いつか、この日に捧げられる花が全て赤くなっても、自分は白い花を持ってくるだろうなと思う。

 この風習の始まりがそうだから、だ。

 1人の少女が亡くなった母の命日に好きだった白い花を捧げたことが話題になり、やがて法律で母へ感謝し花を捧げる日が定められた。

 こんな日がなければ、母への感謝を示すのも苦手な子供もいる。

 そういった意味では必要な日かもしれない。
 
 けれどやはり、常日頃からそういった気持ちは示しておくべきだったと、感じる。

 もう会えなくなってしまってからでは、いくら思っても何も伝わらないのだ。

「イルカせんせー」

 待たせていた人がイルカを見つけて手を振る姿に、改めて思う。

「お待たせしました」

 この人がいてくれて、後悔する前に気持ちを伝えられて良かったと。



 【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2005/05/06
UP DATE:2005/05/09(PC)
   2009/04/28(mobile)
RE UP DATE:2024/08/02
2/2ページ
スキ