若葉繁れる

【思い出】
   ~ こどもの日 05 ~
[若葉繁れる]



「イルカ先生ー」

 ドアの前に気配がしたと同時に、ノックと声。

 急いで開けてやれば、大きなダンボールを抱えたカカシが立っている。

「どうぞ、カカシさん」

「はーい、お邪魔しマース」

 いそいそと上がりこみ、カカシは抱えていた箱を下ろした。

 その、随分と埃を被った箱を眺め、呟く。

「えーっと、多分、大丈夫、だと思うんですけど……」

「確認しますか?」

「はあ」

 用意していた雑巾で埃を拭き落とし、イルカは箱を開けて中身を確かめ出す。

 長い間、けれどきっと大事に保管されていたらしく、予想していた傷みはなかった。

「大丈夫なようですね」

「そうですか」

 気恥ずかしげな、どこか安堵したような、カカシの声。

 部屋に広げるには大きすぎる見事な手描きのこいのぼりを手に、イルカは微笑む。

 これはカカシのもの。

 20年以上、使われてはいないけれど、幼い頃から忍として生きてきた彼の、数少ない子供時代の品だった。
 
「立派なものですねえ」

 用意してくれた人の願いや思いを示すようで、イルカは嬉しく、カカシは照れくさい。

 だからと言って、照れ隠しというにはカカシの発言はいただけない。

「いやぁん、イルカ先生ったら大胆~♡」

 【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2005/04/25
UP DATE:2005/05/09(PC)
   2009/04/28(mobile)
RE UP DATE:2024/08/02
1/3ページ
スキ