春の日

【今日は何の日?】
[春の日]



「ナルト。アレ、なにか知ってるかい?」

 そう言ってサイが指し示したのは、商家に飾られた雛飾り。

「ああ。雛祭りだってばよ」

「雛祭り? 今日はお祭りなのかい?」

「や、そーいうんじゃなくってよ~」

 担当上忍よろしく、ナルトは決まり悪げに後頭部を掻く。

 生い立ちのせいで行事や風習に疎く、サイを納得させる謂われは教えてやれない。

「女の子が幸せに育つようにってお願いする日、らしいんだけどよ」

 拙い説明も、かつてアカデミーで教えられたうる覚えの受け売りだ。

「オレも、よく分かんねえってば」

 正直に言って誤魔化すように笑ったナルトは、どこかしら淋しげだ。

 サイは自身の感情を忘れ、他人の気持ちにも無頓着。

「いや。詳しいことは、サクラに聞くか本で調べてみるよ」

「悪ぃな」

 なのに最近のサイは、他人の心を知ろうと努力しているらしい。

「でも、また聞いてもいいかな? キミに」

「おうっ! 何でも聞けってばよ」
 
「本当のことが分かったら、キミに教えてあげるよ」

 多分。



 【了】
‡蛙女屋蛙娘。@ iscreamman‡
WRITE:2009/03/01
UP DATE:2009/03/03(mobile)
RE UP DATE:2024/08/01
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