ほどこしの日

【空腹ソース】
   ~20才~
[ほどこしの日]



 悪戯の罰掃除ですっかり遅くなったアカデミーの帰り道、なぜか隣を歩く担任がぼそりと呟いた。

「腹減ったなあ」

 そいつは罰掃除の見張りなんていう残業へのイヤミなんだろうか。
 そう思う間もなく、襟首をひっ掴まれていた。

「よし、ラーメン食ってくか! 付き合え、ナルト」

「いっ、いいってばよっ!」

「遠慮すんなって! オレも1人で飯食うのは侘びしいんだよ」

 引きずられるまま、『一楽』と掛かれた提灯の掛かった店に放り込まれる。

「オヤジさん、醤油ラーメン2つ!」

「あいよっ」

 独特の臭いが立ち込める、何もかもがわずかにベタつく店内。
 出されたお冷やを前に、そわそわと落ち着きなく隣に座る担任を見やる。

───1人で飯食うのは侘びしい

 そうか、先生も1人なのか。

「でも、先生。彼女とかいねえの?」

 思わず口にしていた疑問に、苦々しい声が返ってくる。
 
「あのなぁ、お前らみたいな手の掛かる生徒抱えて、毎日残業に追われてんだぞ?」

「……いねぇんだ?」

 オレの返しに、先生は黙ってカウンターに額を打ちつけてた。
 傷付けちまったかな。

「はいよ、先生。醤油2つお待ちっ!」

 すっげぇ落ち込んでたのに、ラーメンが置かれた途端、嬉しそうに箸を取ってた。

「ナルト、さっさと食わねえと伸びちまうぞ」

 慌てて箸を取り、促されるまま手を合わせる。

「いただきます」

「い、いただきます」

「おう、しっかり食え」

 先生の言葉を聞きながらすすりこんだラーメンは、格別だと感じた。



 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@ iscreamman‡
WRITE:2009/05/21
UP DATE:2009/05/23(mobile)
RE UP DATE:2024/08/13
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