ほどこしの日

【悪い虫】
   ~18才~
[ほどこしの日]



 アイツの誕生日は、知り合いとすれ違う度に祝いの言葉がかけられる。
 それにお前はいちいち律儀に立ち止まり、照れくさそうに喜んで礼を言う。
 昔からいつも仲間たちの中心にいて、今も変わらず人気者。
 毎年、それを隣で見てきた。

 心の奥底で嘲笑いながら。

「なあ、知ってるか」

 3代目のお気に入りだもんな。
 誰だって、お前に悪く思われたくないんだよ。
 里のお偉いさんに可愛がられてるお前の口から、要らないこと言い触らされたくないんだ。

「オレは……」

 オレだってそうさ。
 そうだったんだ。

 3代目に目を掛けられてるお前の友人なら、上層部の覚えも良いだろうって考えてたんだ。

 別に、お前と友達になりたかったわけじゃない。

 みんな同じだ。
 みんな、お前が……。

「……大っ嫌いだっ」

 憎んですらいる。
 目障りなんだ。

 おかしいじゃないか。
 おまえなんかがアカデミーの教師なんて。
 
 昔、お前は落ちこぼれだったじゃないか。
 オレのほうがずっと優秀なんだ。

 アカデミーの頃から、お前の面倒を見てやったのはオレじゃないか。

「なあ、イルカ……」

 ひどく惨めなんだよ。

 だってオレは知ってるんだ。
 お前は良い奴だって。
 努力家で、そのくせ不器用で、底なしのお人好しだって。
 大事な友達だって。

 なのに、思っちまうんだ。
 なんでお前がって。

 こんなの、あんまりじゃないか。
 オレがかわいそうだ。

 だから、お前を見てると、むかつくんだ。



 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@ iscreamman‡
WRITE:2009/05/19
UP DATE:2009/06/02(mobile)
RE UP DATE:2024/08/13
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