Date Of Birth

【I'm Yours, You Are Mine.】
   〜 プレゼントは…イルカ先生本体編 〜
[Date Of Birth]



 きっかけは一体なんだったのか。
 狭い部屋の隅で、むっかりと黙り込んだ恋人の気配を背中に感じながら、カカシは先程までのやりとりを思い返した。

 いつものように仕事から戻った頃を見計らって───というか、こっそり見張っていて───、まるでたった今自分も仕事が終わったかのように自室を訪ねた。

 受付業務も兼務している彼にはばれているかもしれないけれど。
 それでも当たり前のように、ただいまなんて言えば、苦笑交じりにおかえりなさいと返される。
 照れ隠しなのか、ここはあなたの家じゃないんですけどね、と付け加えられるのも毎度のことだ。

 手早く準備された夕食を共に取りながら、今日の出来事を語り合うのもそう。

 カカシが担当する子供たちを彼はことさら気にかけていたから、彼らの様子を話してやれば喜んでくれる。
 たとえそれが失敗談でも。

 食後のお茶をすすりながら、だらだらと話は続いていた。
 話題はもう子供たちではなく、ふと目に留めたカレンダーにぼつりと漏らした一言から膨らんでいく。

「あぁ、もうこんな時期か……」

「なにか、あるんですか?」

 一緒にカレンダーを観ながら、彼は不思議そうに日付を追っていく。

「あー、言ってませんでしたっけ? 誕生日、なんですヨ」

「誕生日って、カカシさんの、ですか?」

「はいー」

 なんとなく、その辺りから雲行きは怪しかった気がする。
 穏やかに会話をしながら、何かを思い悩むように眉間にしわが寄りだした。
 それが、日付とか、予定とかを話していくうちに険しくなっていかなかっただろうか。

 別に黙っていたわけではない。
 これまで、話す機会がなかっただけだ。
 毎日あれだけ話していて、とは自分でも思うけれど。

 今年はちゃんとお祝いをしようということになって、子供たちも呼ぶか呼ばないかでも少し拗れた。

 結局、主役であるカカシの主張が通ったけれど。

 それで、プレゼントは何が欲しいかと聞かれたのだ。

 しかし、欲しい物は1つしかない。
 だから素直に、正直に言ってみた。

「んー? イルカ先生が欲しいデス」

 呆れられるか叱られるかするかと思ったのに、むっかりと黙られて困っている。

 そりゃあ、無茶なことは言ったけれど。
 何を持って、自分の物かなんて言えるのかも分からないけれど。

「……それでも、オレはイルカ先生が欲しいんデス」

「とっくにアンタのもんだよっ!」



 【了】
‡蛙女屋蛙姑。@ iscreamman‡
WRITE:2005/09/06
UP DATE:2005/09/24(PC)
   2009/09/04(mobile)
RE UP DATE:2024/08/13
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