バースデーがのしかかる

【U.G.O. ~ 謎のプレゼント ~】
   〜 その他編 〜
[バースデーがのしかかる]



 それは5月26日の朝。
 いつものように目覚ましより少し早く覚醒したイルカは、それでも眼を開けられずにいた。
 別に眠いわけでも、寝ぎたないワケでもない。
 そりゃあたまには、布団から出たくない日もあるが、それは寒かったり、疲れが抜けきっていなかったりするせいだ。
 基本的にイルカの寝起きはいい。
 けれど、今日に限っては、いっそのことこのまま無断欠勤までしてしまおうかとさえ思う。
 その理由が、アレだ。
 狭い部屋中に充満する、妙な気配。
 やけに荒い呼吸音。
 目が覚めるまでコレに気がつかなかったというのは、忍者として少し情けない話だが。
 それはまあ、おいておく。
 ソレは、イルカの足元にいる、らしい。
 動く様子は感じられない。
 かすかに聞こえる呼吸音や、身じろぎする音から、180cm強の男が1メートル四方の箱に収まっているのだろう。
 寝息のふりで、小さくため息を吐き出す。
 そして、セットした目覚ましが鳴るのを待った。

 やがて、旅行用の小さな時計がまずひそやかにアラームを奏で始める。
 イルカはうるさげに枕もとを片手で探り、逆の手で枕の下からつかみ出したクナイと千本を足元目掛けて放った。
 同時にその場を飛び、目標とした箱の背後へ降り立つ。

「……ひっ、ぐっ、ふっ!」

 狭い箱の中でナニがどうなっているのかは分からないが、3本ほど貫通しなかった。
 多分、受け止めたのだろう。
 流石、腐っても……などと思いながら、イルカは既に次の行動に出ていた。
 ベッドから飛びのく際、枕もとの窓を全開にしてある。
 そこへ、この真っ赤なリボンがついた不気味な箱を蹴り出してやれば、完了だ。

「……ひゃ~……うっ」

 なにやらうめき声が聞こえたが、イルカは気にせずいつもの朝の支度に掛かる。
 少し遅くなったが、何も問題はない。
 天気もいい。

 なにより、今日は誕生日だ。

「久々にナルトと一楽行くか~」

 大きく伸びをし、人通りの多い道に面した窓とカーテンをきっちり閉めてから、着替えを始めるイルカであった。



[Unidentified Gifted Object]
 未確認の贈りつけられてきた物



 【了】
‡蛙女屋蛙姑。@ iscreamman‡
WRITE:2005/05/20
UP DATE:2005/06/01(PC)
   2009/05/26(mobile)
RE UP DATE:2024/08/13
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