ボクの先生はヒーロー

【34 あかるいほうへ】
[ボクの先生はヒーロー]



 ヒナタの《白眼》で敵の少ない通路を見定め、サスケの機転とチョウジの力業で道を切り開き、交代で意識のないナルトを背負って3人は仲間たちのいる場所を目指した。

 だが、ここはフォックス星人の要塞である。
 どこからか彼らの動きを監視し、誘導されたのかもしれない。
 気付いた時には、仲間たちのいる侵入場所から離れ、敵を避けて動ける通路もなくなっていた。

「……ごめんなさい」

 先行し、進む道を決めてきたヒナタは追い込まれた状況を把握すると責任を感じて謝罪を口にする。

「謝るな。それより、よく見ろ。本当に、道はないのか?」

 サスケの言葉に再度、周囲を見渡す。
 けれど、左右どちらの通路の先には多くの敵が迫っていた。
 諦めたように印を解き、うつむいて首を横に振るヒナタにチョウジも問いかける。

「ねえ、ちゃんと視てよヒナタ。本当に、進めそうな方向はないの?」
 
「……ここに通じるどの通路にも、敵の姿が見えるの。それに、こっちは……」

 そう言ってヒナタは背後の壁を指す。

「分厚い壁が幾つもあるだけで、外、みたい……」

「そっちだ。チョウジ、頼む」

「任せてよっ」

 サスケの考えを察したチョウジは背負っていたナルトを2人に預け、体中にクナイを巻きつけて印を組んだ。

《肉弾・針戦車》

 丸く膨れ上がった体を回転させながら壁に突進し、チョウジは新たな道を切り開く。
 壁が損傷したことで通路いっぱいにけたたましい警報が鳴り響いた。
 構わず、サスケとヒナタはナルトを抱えてチョウジの後を追う。
 その背後で通路を分断するように幾重にもシャッターが下りていく。
 だがもはや、彼らには何の意味もない。

 分厚い壁を突き破り進む中、ヒナタはサスケに問う。

「このまま外に出たら、どうするの?」

「外壁伝いに侵入場所へ戻って、シカマルたちと合流する」

「……チョウジくん、飛び出しちゃったりしない、かな?」

 心配そうに先を見つめるヒナタの呟きにサスケもはたと足を止めた。
 
 これだけの威力をもたらす勢いで回転しているチョウジが最後の壁を破ったところでちょうどよく止まれるとは流石に思えない。

「……急ぐぞっ」

 チョウジの後を追いかける2人は、意識のないナルトを抱えているせいもあってすぐには追いつけない。
 間に合ったかと思った瞬間、チョウジは最後の壁を突き破っていた。

「くそっ」

 とっさにサスケがワイヤーを結んだ手裏剣を投げてチョウジを巻き上げる。
 が、勢いに負けて自分も外へ引き出されてしまう。
 手を伸ばしたヒナタと、彼らに支えられていたナルトと共に。

 だが、わずかな浮遊感の後に4人を受け止めたのは、優しく温かな淡い光の手だった。


 
 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2011/11/30
UP DATE:2011/12/01(mobile)
RE UP DATE:2024/08/10
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