ボクの先生はヒーロー

【32 誰かの願いが叶う頃】
[ボクの先生はヒーロー]



 シカマルとサクラの2人に掛かれば文化の違いなど障害にはならなかったらしい。

 さほど時間も掛けずに電子式の解錠暗号を導き出してしまった。

 あまりの手応えのなさにサクラは不満げだったが、今は悠長に暗号の内容を吟味している場合ではない。

 扉が開くと同時に赤丸を頭に乗せたキバが突入し、素っ頓狂な声を上げた。

「なんだぁ、こりゃ?」

 周囲を見回して立ち尽くすキバの様子に、敵はいないと判断したシカマルとサクラも続いて潜入する。

 そこは一見、倉庫のような整然と棚が並ぶ薄暗い部屋だった。

 けれど、薄明かりに並ぶ棚は蜂の巣のような構造で、その小部屋の1つ1つにはのっぺりと淡く光を反射する繭状の物体が収められている。

 よく見れば、繭の中にはうっすらと人影があった。

「妙な匂いはしねえなぁ」
 
 こうゆうのはシノの専門だとかなんとか呟きながらキバは匂いを嗅ぎながら奥へ進み、シカマルは取り出したクナイで繭状の物に触れてみる。

「硬いわけじゃねえが、弾力があって切り裂くのも難しいな……」

 サクラは繭の中を覗き、中身がフォックス星人ではなく普通の人間だと確認するや自分の両親を探した。

 そして、気づく。

 さらわれてきた人々は性別と年齢で区分けされていることと、その意味に。

「まさか、これ、標本?……」

 自分の言葉にサクラの背筋は凍りつく。

 彼女の愕然とした呟きにシカマルもキバも手近な人々を確認した。

「大丈夫だ。全員、ちゃんと生きてるぜ!」

「ワン!」

 キバの言葉を保証するように、赤丸も吠えた。

 落ち着いて観察すればサクラにも見つけだした両親がそれぞれ別の棚で緩やかに呼吸しているのが分かった。

 最悪の事態を免れた安堵にへたり込む彼女をよそに、シカマルは次の行動へと思考を巡らせる。

「このまま連れ出すのが良さそうだが、オレらだけじゃ運べねえなぁ……」

 ここはまだ敵の陣中で、柔らかな繭から1人ずつ救出している時間はない。

「チョウジか、ナルトがいりゃあなぁ」
 
 人手と言えば力自慢のチョウジか、影分身での人海戦術のナルト。

 だが、2人ともここにはいない。

 サスケたちがナルトを救出して戻ってくるのを待っていはいられなかった。

「おいっ! 誰か来るぜ!」

 いつものポーズで長考に入ったシカマルにキバが叫ぶ。

 だが、覚えのある匂いだったようとっさに身構えかけるサクラとは違い満面の笑みを浮かべていた。

「シカマル! サクラ! 救援よっ」

 そう叫ぶいのと共に、木ノ葉隠れの里が誇る上忍中忍が多数駆けつけてくれたのだ。


 
 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2011/02/28
UP DATE:2011/04/05(mobile)
RE UP DATE:2024/08/10
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