ボクの先生はヒーロー

【31 最後の抵抗】
[ボクの先生はヒーロー]



 突然、強化されていた獣が元の姿に戻っただけでなく、時を同じくして木ノ葉隠れの忍たちが見えていないはずの要塞に攻撃をしかけだすとフォックス星人の余裕は崩れた。

 空に映し出されたままの画面───その外れた場所、翻訳装置の効かない辺りで喋る彼らの小動物の忙しない鳴き声に似た会話が里中に響いている。

 会話の内容は分からなくとも慌ただしいフォックス星人の様子だけで、今の状況を知らせるには充分だった。

 木ノ葉の忍たちが士気を高揚させ攻勢を強める。

 その勢いは光の巨人をも勇気づけたのだろう。

 防護壁まで追い込まれていた巨人は立ち上がり、獣へ立ち向かった。

「しかし、なんで急に……」

「あいつらがナルトを助け出したから、じゃない?」

 希望への熱狂から外れた場所での冷静な疑問に、カカシはこの戦いの裏で起こっていた出来事を推測してみせる。
 
「あの獣を凶暴化させていたのは多分、九尾のチャクラだ。そして、サスケたちがさらわれた人たちを発見したって知らせが来た」

 獣を強化していたチャクラの供給が絶たれたということは、そのチャクラの出どころがなくなったということだ。

「九尾のチャクラがあれくらいで枯渇するとは思えないし、ナルトが、なんて考えたくないからネ」

 楽観的な望みではあるが、部下を信じているからこそだ。

「となれば、あいつらがナルトを見つけて、術かなんかを解いたって考えるしかないデショ」

「下忍ながら素晴らしい活躍ですが、ボクらは立つ瀬がないです」

 里屈指の上忍と暗部が肩をすくめあっている間に、光の巨人は獣をまた里から引き離していた。

 大きく振りかぶって威力を増した攻撃を軸に、獣を確実に後退させていく。

 とどめの蹴りで更に間合いをとると全身に残っている輝きを集めるような構えを見せ、組んだ両手から一気に光の奔流を放った。

 照射された光を浴びた獣は一瞬まばゆく輝いた後、断末魔を残して霧散していく。

 雪のように淡い光が里に降り注ぎ、消えた。
 そこにはもう獣の姿はない。
 
 木ノ葉隠れの里の人々が上げる歓喜の声が大地を揺らした。

『オのレ、忌々シイ光ノ一族メ! 覚エテいロ、木ノ葉隠れの忍ドモ!』

 悔しげな捨て台詞と共に上空に映し出されていた映像は消え、姿を見せぬままフォックス星人の浮遊要塞は逃走をはかろうとしていた。


 
 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2011/02/28
UP DATE:2011/03/01(mobile)
RE UP DATE:2024/08/10
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