ボクの先生はヒーロー

【30 たとえどんなことがあっても】
[ボクの先生はヒーロー]



「ナルトくんっ!」

 未知の液体で満たされた透明な柱から救出したナルトは息をしていなかった。

 いや、全身が浸かっていた溶液が呼吸をさせていたのだろうが、いきなり外気に触れたせいなのか今は逆に気道を塞いでしまっているらしい。

 ヒナタは必死でナルトの口に指を突っ込み、肺まで満たした溶液を吐き出させようと苦心している。

「ナルトくん、しっかりして! お願い、吐き出してっ」

「ヒナタ、ちょっと離れてて」

 一緒になって胸を押していたチョウジがナルトを逆さまに抱え上げ、強く腹部を押した。

 いわゆる羊水を飲み込んで産声を上げない新生児にする要領だが、これがうまくいった。

 勢いよく大量の液体を吐き出したナルトは時々むせながらもちゃんと呼吸をしている。

「よかった……」

 だが意識はまだ戻らない。

 それでも安堵の息をつくヒナタとチョウジへサスケが叫んだ。
 
「チョウジ、そのウスラトンカチ背負え! ここを出るぞっ」

 幻術で足止めをしていた警備兵らしき一団がもう目前にまで迫っている。

 ナルトの覚醒を待つ時間はなかった。

「ヒナタ、先行しろ!」

 サスケの指示に従い、ヒナタは飛び出した。
 ナルトを背負ったチョウジも続く。

 手裏剣やクナイで警備兵を足止めしていたサスケは、2人が充分に離れたのを見計らって印を組んだ。

 既に口の端には特殊なワイヤーをくわえている。

《火遁・龍火の術》

 口元から発した炎は瞬く間にワイヤーを伝い、牽制の手裏剣に紛れさせて通路を格子状に遮るように仕掛けたワイヤーを燃え上がらせる。

 サスケは瞬時に身をひるがえし、仲間を追った。

 そう長い時間を稼げるなんて思ってはいない。

 ただ一瞬、こちらの動きから目をそらせればいい。

 警備兵が未だに炎を上げるワイヤーを切り開こうと武器を振りかざす隙に、起爆札を結わえつけたクナイを背後へ投げた。

 同時に通路を曲がり、駈ける足を早める。

 すぐ後ろで爆音が轟き、足元が大きく揺れた。
 

 
 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2011/02/26
UP DATE:2011/02/26(mobile)
RE UP DATE:2024/08/10
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