ボクの先生はヒーロー

【27 比類なきこと】
[ボクの先生はヒーロー]



 テンゾウの壁によって、里への被害は最小限に抑えられていた。

 多くの忍は傷ついた同胞の救助に奔走している。
 しかし余力のある者は万が一に備えて防壁の上に集まっていた。

 九尾に似た巨獣と戦う光の巨人に出現した時の目映さは無く、今は青みがかった銀色の肉体がぼんやりと発光している。
 その身体には火影の長羽織りに似た炎の紋様があった。

 だから、という訳でもないが、木ノ葉隠れの忍にとって、あの巨人は敵とは思えない、何かを感じる。

 だが、巨獣と巨人との戦いは一進一退。
 互いに決定打はなく、消耗していくだけの拮抗状態が続いていた。

 けれど、忍と言えど人の身では足止めすら容易で無かったのだ。
 それを思えば、今はあの巨人の勝利を願うだけしかできない。

 しかし、そんな人々の希望を嘲笑う声が、空中から降り注ぐ。
 フォックス星人が再び姿を現したのだ。
 
『フォッフォッフォッフォッフォッ、ナカナカやルナ、光ノ一族メ』

 彼らは光の巨人の存在を知っていたようだ。
 そして、当然のごとく対策も怠っていない。

『コンどワ、キサマガ敗北ヲ味ワウノダ! フォックス・エナジーヲ食ラエ!』

 上空に高密度のエネルギー体が出現し、フォックス星人の号令で巨獣へと放たれる。

 新たなパワーを吸収した巨獣が見る間に変貌していった。

 角と牙が鋭く伸び、毛並みは炎が踊るがごとくに揺らめいた。
 凶悪な輝きを増した眼光で光の巨人と背後の里を睨み、猛々しい雄叫びを轟かせる。

 新たな獣の姿に満足げに、フォックス星人は勝ち誇った。

『ユケ、キングフォックス・バースト! 光ノ一族ヲ倒スノダ!』

 フォックス星人の号令に従って巨獣が放った一撃はこれまでとは比べ物にならぬ威力で光の巨人を吹き飛ばした。



 【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2010/01/29
UP DATE:2010/01/29(mobile)
RE UP DATE:2024/08/10
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