カカイル3つのお題

【思わせ振り】
   〜カカイル3つのお題〜



「イルカ先生、それなぁにー?」

 物置部屋の収納棚から埃を被った小箱を取り上げたところで、イルカは背後からカカシに抱きつかれた。
 そんな触れ合いに躊躇する事もなく、用意していた布で小箱の表面を覆う埃を拭い取って行く。

「預かり物なんですよ」

 埃の払われた桐の小箱はイルカの手に収まる程の大きさで、蓋を開ければ紫色の光沢ある絹布が内側に貼られていた。
 それだけで、何か良い物が納められているのだと知れる。
 実際、桐の小箱の中央には丸い大粒の猫目石が鎮座していた。

「……根付、ですかね?」

「元は帯留だったそうですよ」

「ふぅん……」

 いかにも高価な預かり物。
 その真意を測りかね、カカシは訝しげにイルカを見やる。

 薄暗い物置部屋の僅かな明かりに指で摘み上げた猫目石を透かし、傷の有無を確認するその姿は取り立てていつもと変わらない。
 しかし、こんな大事そうな物を預けるなんて相手は余程イルカを信頼しているのだろう。

「……それってさー」
 
「5年前になりますかねえ……」

 カカシが意を決し、猫目石の持ち主との関係を問いただそうと口を開くと同時に、イルカが話し出す。

「長期任務に行く知り合いに預かって欲しいと頼まれまして」

 お互い親類縁者のない事は分かっていたから、母親の形見だと聞いた猫目石を預かる事は戸惑いなく了承したのだ、と。

「ただ、戻った時に聞いて欲しい話があるとかなんとか言ってたような気がするんですよねえ」

 そう言って溜息を一つ溢す。
 だが、それはカカシの方こそ、だ。

「……アンタ、まさか……」

「ま、オレにゃあアナタがいるんで、今頃戻って来られてもどうこうなりようもないんですけどね」

 からりと笑うイルカは本当に質が悪い。



[お題]
《猫目石/5年間/ダスター》



 【了】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2015/10/09
UP DATE:2015/10/09(mobile)
RE UP DATE:2024/08/19
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