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カカイル3つのお題

【夕べの秘密】
   〜カカイル3つのお題〜



 振り向くのが、怖い。

「こっち向いてください。カカシさん」

 穏やかなイルカの声に温度を感じない。

 むしろ、冷え切っていて寒い。

 というか、痛い。

「この状況、説明してもらえませんかねえぇ」

 語尾がこもって聞こえるのは、俯いているせいだろう。

 だが、その残響はまるで深く暗い井戸の底から聞こえる声のようだ。

 正直言って、怖い。

「……お返事は?」

「ハイィッ!」

 普段はだらしのない猫背が、ビシリと伸びる。

「この部屋を占拠してるダブルベッドは、あなたが入れたんですね?」

「ハイッ! そうでアリマスっ!」

「では、その理由は?」

「……あの、2人で寝るには狭かったし……」

「それが、勝手に人の部屋改造してくれやがった理由ですか」

 語尾にばきりと何かが砕ける音が重なる。

 きっと、殴りたいのを我慢している。

 こんな時でも人を背後から殴りたくないのだろう。
 
 もう、歯を食いしばり、振り向くしかない。

「……ゴ……ゴメンナサイ……」

 情けなくも、涙目となったカカシは覚悟を決めた。



[お題]
《振り向いて・ダブル・涙》



 【了】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2006/10/27
UP DATE:2006/10/27(PC)
   2008/11/28(mobile)
RE UP DATE:2024/08/19
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