カカイル3つのお題

【海の住人】
   〜カカイル3つのお題〜



「……水の、匂い?」

 そう呟いて見上げた空には、降り注ぐように星が輝いている。

 けれど、雨の気配はない。

 代わりに、なのだろうか。

 近頃よく出会う人が目の前に降り立った。

 夜の闇を圧倒する銀の髪の下で、こんばんはと右目がふわりと微笑む。

「こんな時間にお散歩ですか? イルカ先生」

「ええ、まあ……。カカシさんは?」

 イルカの問いはシンプルだが、色々と取りようがある。

 何故、ここにいるのか。

 どうして、近頃よく行き逢うのか。

「似たようなものです」

 だがそれを感じ取っているだろうに、カカシの答えは短く意味を持たない。

 そして、イルカの遠い頭上を眺めてぽつりと呟いた。

「もう、こんな季節なんですね」

 冷え込むはずですと肩をすくめるカカシの視線の先には、きっと冬の正座が昇っているのだろう。

「ご一緒して、よろしいですか?」
 
 視線をイルカから外したまま、許しを求める言葉はひどくささやかだ。

「ええ」

 頷いて歩き出すイルカ───と触れるか触れないかの距離に、カカシが並ぶ。

 そのまま、暗い道を2人で歩いた。

 まだ行方の掴めない想いに捕われたまま。

 互いに感じるもどかしさは、深い海の底を歩く息苦しさに似ている。



[お題]
《星座・似たり寄ったり・水中散歩》



 【了】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2006/10/12
UP DATE:2006/10/12(PC)
   2008/11/28(mobile)
RE UP DATE:2024/08/19
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