Metamorphosis Game
【Avoid Publicity[2]】
早朝、城下をこっそりと発つカカシ、黒金、白蛙太夫を見送ってくれたのは座頭のキビと座付きの名護だけであった。
名護は身体のあちこちを包帯で覆ってはいるが、大怪我というワケではない。
あの宴の直前に使いに出された名護は霧隠れの抜け忍氷雨に襲われ、計画通りにやられたフリをして逃げ延びていた。
白銀が一座に紛れ込んだ敵忍がいないことを確認した上で、囮役を見事に演じたワケである。
黒金らより幾分若いが、流石に木の葉の里の優秀な中忍。
「それでは座頭、名護さん、お世話をお掛けしました」
「いやもう本当に、こちらこそありがとうよ黒金。白蛙太夫さまも、カカシくんも、いやもう本当に、お手伝い頂きましてありがとうございました」
頭を下げる黒金を制し、キビと名護が深く礼をする。
「それにしても、まさか黒金がカカシくんで、白銀が黒金の変化だったなんてねぇ」
「ああいや、まあ、スンマセンね……オレで」
「いえいえ、とんでもない。いい眼福をさせて頂きました」
流石、写輪眼のカカシ、変化だなどと最後まで気付きませんでした。
「ただ、黒金と白銀の舞いがもう二度と見られないのが残念でなりません」
「いやもう本当に、黒金と白銀がいなくなっては、しばらくこの城下で鬼火座は開けませんからねぇ」
鬼火一座の者はすでに座をたたみ、こことは別の街道を抜けてまた旅に出るという。
夜逃げ同然だが、今回の目玉となった黒金と白銀が座にいない以上、公演を続けてもあがりはでない。
忍者としてもだがこの2人、興行主としての才能も確かだ。
「黒金、また機会があればぜひ助けておくれ。いやもう本当に」
「はい、座頭。名護さんもお元気で」
「ああ、お前もカカシくんと仲良くな」
「ええ、もちろんっ!」
さあっ、行こうか黒金っ!
やたらと上機嫌な上忍は、名残惜しそうに座頭たちを見返る黒金の細い腰を抱いて、足取りもそれ以外も元気一杯に歩き出した。
黒金も、それを迷惑そうにしながらも、笑顔で座頭たちへ手を振り、歩き出す。
そんな2人を、少し離れて歩きながら面白そうに白蛙太夫が見つめていた。
★ ☆ ★ ☆ ★
木の葉の里が近くなって、イルカはふいに隣を歩くカカシに問うた。
すでに変化を解き、いつものうみのイルカの姿である。
「そういえば、アナタ変なこと言ってませんでしたっけ?」
いえ、いつもいつも変なことしかおしゃいませんけどね。
「……黒金が、あなたのパートナーだとかなんとか……」
「何言ってんですか、イルカ先生!」
がしぃっ、と両手でイルカの手を握り締め、カカシは力説する。
「アナタはオレの人生のパートナー、生涯の伴侶なんですよっ!」
だからアナタが変化した黒金は、れっきとしたオレのパートナーです!
「それにアナタの変化した白銀は、いざという時にオレの身代わりや、入れ替わりしやすい姿だったんデショ?」
だから銀髪で、顔の左側隠してたんデースよね。
図星を刺され、イルカはうっかり黙り込む。
万一、カカシがこの任務に来ているとバレた時、黒金と白銀のどちらがカカシでも辻褄のあう姿を考えたのは事実だ。
「あ、なんだったら、今後イルカ先生が黒金やる時は、オレも白銀にっ……」
「今ならんでくださいっ! 第一、黒金の任務は、そうそう回ってきませんからっ!」
今にも印を組みそうなカカシを押し止める。
「まあ、オレが黒金での任務中、同じ任務にカカシ先生が着いていてくださるなら、変化してくださったほうがやりやすいこともあるでしょう。だからって、な・ん・でっ、オレが、アナタの、生涯の、伴侶、なんですかっ!」
「先生、だからの置き場所違ってますよー。アナタはオレの伴侶でしょ、だから黒金と白銀もパートナーなんですぅ」
「……ですから、なんで男のオレが、男のアナタの伴侶にされるのかってところを問題にしてんです」
「愛は全ての障害を越えるんですよ♡」
まったく聞く耳と考える脳を持たない上忍に、イルカはため息をつくしかない。
「まあ、そのことは、里に戻ってから、きっちりみっちりしっかりさっぱりくっきり、話し合いましょう。その代わり、報告書は余計なことは書かずに、ちゃんと書いてくださいね。オレが一緒の任務で変な報告書出されたら、もう他の報告書にチェックいれにくくなるんですから……」
「あー、それは……」
「心配無用じゃ、イルカよっ!」
2人の背後からなにやら書付けながら歩いていた自来也が声をかけてきた。
「報告書ならば今、ワシが書いておるからのぉ」
「えっ! 自来也様が、ですかっ!?」
「おうおう。期待しておれよ。この人気作家自来也様がお前らの活躍を交えて血沸き肉躍る一大冒険エロエロスペクタクルに仕上げてみせよぉ! その名もイチャイチャメタモルフォセスってぇーのはどうじゃ?」
いや、いっそのコト、美貌の仙女が美しくも熟れ切った姿態を武器に活躍するイチャイチャミステリアスかのぉ。
「おっ! いーねぇっ!」
「よくないっ! って、そうではなくって! 報告書は簡潔にっ、要点だけを記入してくださいっ!」
この用紙にっ!
と叫ぶイルカの手にはちゃんと任務報告用紙が1枚握られていた。
「やだなぁ、イルカ先生ってばー。こんな時にまで受付嬢根性だしちゃってぇ」
「受付嬢言うなっ! 自来也様も、イチャイチャとかエロエロとか、メタモルフォセスとかミステリアスとかってなんですかっ!」
「いやぁ、ワシの創作意欲を刺激する任務だったでなぁ。ここは一発、ワシの代表作となるような文章を、と思ってのぉ」
「だったら、小説として別に書いてくださいっ! 報告書は創作意欲を持ち込むものではありませんっ!」
「自来也! だったらぜひ、オレとイルカ先生をモデルにしたイチャイチャラブラブエロエロ話をっ!」
「んーお前らかぁ……。まあ、どーーーっしょーーーっもねぇダメエロ男が、怒りっぽいが可愛い黒髪のヒロインにストーカーしまくるカンジかいのぉ…」
「考えなくっていいですっ!」
★ ☆ ★ ☆ ★
夕方には里につけるハズだった上忍と伝説の三忍は、中忍のお説教を夜中まで聞かされたという。
その後、血沸き肉躍る一大冒険エロエロスペクタクルイチャイチャメタモルフォセスだとか、美貌の仙女が身体を武器に活躍するイチャイチャミステリアスだとか、やたらと怒りまくるが可愛い黒髪のヒロインが登場するイチャイチャパラドックスなる本が発行された───という話は、まだ聞かない……。
【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2004/10/27
UP DATE:2004/10/27(PC)
2008/12/01(mobile)
RE UP DATE:2024/08/07
早朝、城下をこっそりと発つカカシ、黒金、白蛙太夫を見送ってくれたのは座頭のキビと座付きの名護だけであった。
名護は身体のあちこちを包帯で覆ってはいるが、大怪我というワケではない。
あの宴の直前に使いに出された名護は霧隠れの抜け忍氷雨に襲われ、計画通りにやられたフリをして逃げ延びていた。
白銀が一座に紛れ込んだ敵忍がいないことを確認した上で、囮役を見事に演じたワケである。
黒金らより幾分若いが、流石に木の葉の里の優秀な中忍。
「それでは座頭、名護さん、お世話をお掛けしました」
「いやもう本当に、こちらこそありがとうよ黒金。白蛙太夫さまも、カカシくんも、いやもう本当に、お手伝い頂きましてありがとうございました」
頭を下げる黒金を制し、キビと名護が深く礼をする。
「それにしても、まさか黒金がカカシくんで、白銀が黒金の変化だったなんてねぇ」
「ああいや、まあ、スンマセンね……オレで」
「いえいえ、とんでもない。いい眼福をさせて頂きました」
流石、写輪眼のカカシ、変化だなどと最後まで気付きませんでした。
「ただ、黒金と白銀の舞いがもう二度と見られないのが残念でなりません」
「いやもう本当に、黒金と白銀がいなくなっては、しばらくこの城下で鬼火座は開けませんからねぇ」
鬼火一座の者はすでに座をたたみ、こことは別の街道を抜けてまた旅に出るという。
夜逃げ同然だが、今回の目玉となった黒金と白銀が座にいない以上、公演を続けてもあがりはでない。
忍者としてもだがこの2人、興行主としての才能も確かだ。
「黒金、また機会があればぜひ助けておくれ。いやもう本当に」
「はい、座頭。名護さんもお元気で」
「ああ、お前もカカシくんと仲良くな」
「ええ、もちろんっ!」
さあっ、行こうか黒金っ!
やたらと上機嫌な上忍は、名残惜しそうに座頭たちを見返る黒金の細い腰を抱いて、足取りもそれ以外も元気一杯に歩き出した。
黒金も、それを迷惑そうにしながらも、笑顔で座頭たちへ手を振り、歩き出す。
そんな2人を、少し離れて歩きながら面白そうに白蛙太夫が見つめていた。
★ ☆ ★ ☆ ★
木の葉の里が近くなって、イルカはふいに隣を歩くカカシに問うた。
すでに変化を解き、いつものうみのイルカの姿である。
「そういえば、アナタ変なこと言ってませんでしたっけ?」
いえ、いつもいつも変なことしかおしゃいませんけどね。
「……黒金が、あなたのパートナーだとかなんとか……」
「何言ってんですか、イルカ先生!」
がしぃっ、と両手でイルカの手を握り締め、カカシは力説する。
「アナタはオレの人生のパートナー、生涯の伴侶なんですよっ!」
だからアナタが変化した黒金は、れっきとしたオレのパートナーです!
「それにアナタの変化した白銀は、いざという時にオレの身代わりや、入れ替わりしやすい姿だったんデショ?」
だから銀髪で、顔の左側隠してたんデースよね。
図星を刺され、イルカはうっかり黙り込む。
万一、カカシがこの任務に来ているとバレた時、黒金と白銀のどちらがカカシでも辻褄のあう姿を考えたのは事実だ。
「あ、なんだったら、今後イルカ先生が黒金やる時は、オレも白銀にっ……」
「今ならんでくださいっ! 第一、黒金の任務は、そうそう回ってきませんからっ!」
今にも印を組みそうなカカシを押し止める。
「まあ、オレが黒金での任務中、同じ任務にカカシ先生が着いていてくださるなら、変化してくださったほうがやりやすいこともあるでしょう。だからって、な・ん・でっ、オレが、アナタの、生涯の、伴侶、なんですかっ!」
「先生、だからの置き場所違ってますよー。アナタはオレの伴侶でしょ、だから黒金と白銀もパートナーなんですぅ」
「……ですから、なんで男のオレが、男のアナタの伴侶にされるのかってところを問題にしてんです」
「愛は全ての障害を越えるんですよ♡」
まったく聞く耳と考える脳を持たない上忍に、イルカはため息をつくしかない。
「まあ、そのことは、里に戻ってから、きっちりみっちりしっかりさっぱりくっきり、話し合いましょう。その代わり、報告書は余計なことは書かずに、ちゃんと書いてくださいね。オレが一緒の任務で変な報告書出されたら、もう他の報告書にチェックいれにくくなるんですから……」
「あー、それは……」
「心配無用じゃ、イルカよっ!」
2人の背後からなにやら書付けながら歩いていた自来也が声をかけてきた。
「報告書ならば今、ワシが書いておるからのぉ」
「えっ! 自来也様が、ですかっ!?」
「おうおう。期待しておれよ。この人気作家自来也様がお前らの活躍を交えて血沸き肉躍る一大冒険エロエロスペクタクルに仕上げてみせよぉ! その名もイチャイチャメタモルフォセスってぇーのはどうじゃ?」
いや、いっそのコト、美貌の仙女が美しくも熟れ切った姿態を武器に活躍するイチャイチャミステリアスかのぉ。
「おっ! いーねぇっ!」
「よくないっ! って、そうではなくって! 報告書は簡潔にっ、要点だけを記入してくださいっ!」
この用紙にっ!
と叫ぶイルカの手にはちゃんと任務報告用紙が1枚握られていた。
「やだなぁ、イルカ先生ってばー。こんな時にまで受付嬢根性だしちゃってぇ」
「受付嬢言うなっ! 自来也様も、イチャイチャとかエロエロとか、メタモルフォセスとかミステリアスとかってなんですかっ!」
「いやぁ、ワシの創作意欲を刺激する任務だったでなぁ。ここは一発、ワシの代表作となるような文章を、と思ってのぉ」
「だったら、小説として別に書いてくださいっ! 報告書は創作意欲を持ち込むものではありませんっ!」
「自来也! だったらぜひ、オレとイルカ先生をモデルにしたイチャイチャラブラブエロエロ話をっ!」
「んーお前らかぁ……。まあ、どーーーっしょーーーっもねぇダメエロ男が、怒りっぽいが可愛い黒髪のヒロインにストーカーしまくるカンジかいのぉ…」
「考えなくっていいですっ!」
★ ☆ ★ ☆ ★
夕方には里につけるハズだった上忍と伝説の三忍は、中忍のお説教を夜中まで聞かされたという。
その後、血沸き肉躍る一大冒険エロエロスペクタクルイチャイチャメタモルフォセスだとか、美貌の仙女が身体を武器に活躍するイチャイチャミステリアスだとか、やたらと怒りまくるが可愛い黒髪のヒロインが登場するイチャイチャパラドックスなる本が発行された───という話は、まだ聞かない……。
【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2004/10/27
UP DATE:2004/10/27(PC)
2008/12/01(mobile)
RE UP DATE:2024/08/07