カカイル[短編]
※下ネタ注意。
【眠り姫】
~ Sleeping Beauty ~
カカシが写輪眼の使いすぎでチャクラ不足に陥り、意識不明になることは珍しくない。
だが今回ばかりは勝手が違った。
木の葉崩しの直後、うずまきナルトを狙って里に入り込んだ者たち。謎の組織・暁の、うちはイタチ、干柿鬼鮫。
その闘いで写輪眼を限界近くまで使い、そのうえイタチの幻術・月読を受けてしまったのだ。
常ならばすぐに意識は回復し、1週間ほどでチャクラも体力も元に戻る。
それが幻術による精神的ダメージのせいか、1ヶ月以上も昏睡し続けた。
そのカカシが覚醒できたのは、5代目火影となった伝説の三忍、そして医療忍術のスペシャリストである綱手姫のおかげだった。
しかし、目覚めて最初に見聞きするのがこの人の言動。
しかも、その背後には自分を永遠のライバルと呼び、熱く挑戦しつづける男、ガイ。
できればもう一度昏睡状態になりたいカカシであった。
なにしろこの綱手姫、50歳のくせに20代の姿で、とびきりの美人なうえに爆乳なのは良い。
が、それらに比例して口と根性と性格が悪い。
ついでに、カカシの子供時代を知る数少ない人間で、今でもケツの青いクソガキ程度にしか思っていないハズだ。
「たかだか2人の賊にやられるとはお前も人の子だねェ……。天才だと思ってたけど」
「こんな奴のことより、次は我が弟子リーを見てやって下さい!!」
2人の言葉に言い返したいことはある。あるが、今は相手にしたい気分ではない。
───さっさとリーを治しに行ってくれっ!
カカシとガイは2人してそう、心の底から願っていた。
しかし、肝心の綱手姫はそんなコトはお構いなしに、カカシのかけている布団を足元からめくった。
それもなにやら嬉しそうに。
「……あの、ナンか(下半身に)御用でしょーうか?」
恐る恐る、問うカカシに、綱手姫様はそれはそれはあでやかな笑みで答える。
「なぁに、サービスで抜いといてやるよ」
「なっ?」
「結構ですっ! っつーか触んなっ!」
火影にあるまじき過激な発言に、ガイは瞬間沸騰して固まり、カカシは必死でガードを固める。
「なぁに今更言ってんのよ。アンタなんか、こーんな頃から知ってんだから」
綱手が胸元で右手の親指と人差し指を少し広げてみせた。
示したのは、過去のカカシの背丈───ではない。
「どんくらい成長したか気になるじゃないか」
「アンタにゃ関係ないだろっ! コレはもう、イルカ先生専用なのっ!」
「おや、ずいぶん生意気なこと言うじゃないか」
……でもねぇ……。
心底楽しそうに、カカシの足元に伸びる透明で細い1本の管をつまみ上げた。
「アンタが寝てる間に、看護士がコレ入れてってるからねー」
その管はベッド下の透明な袋に繋がっていて、そこには黄金色の液体が溜まっている。
つまり、もう一方の端はカカシの排泄器官に挿入されていた。
意識不明でも、人間は排泄をする。
しかし、自分で処理することも、他人に知らせて処理させることもできない。
かと言って時間ごとに誰かが尿瓶などで排泄させるにも、オムツをあてるにも、成人男性相手では手間が掛かる。
故に、カテーテル挿入。
こうして排泄物をベッド下のパックに溜めるのだ。状態や量で健康チェックもできるし。
「もう必要ないだろうから、今抜いといてやるって言ってんだよ。ぶってないで、さっさと出しなっ!」
「いーです! 自分で抜きますっ!」
医療用カテーテルを抜く抜かないで言い争う、里が誇る上忍と新たな火影。
なんとも情けない光景である。
「フン! アンタ、本気で私に敵うとでも思ってんのかい?」
「敵う敵わないじゃない! やってやるよっ!」
すでに写輪眼全開で雷切も発動しているカカシに対し、綱手は殺気を込めた一瞥をくれただけ。
しかし、それだけでカカシの動きは一瞬、止まる。
その一瞬が、全てだった。
木の葉の里に、男の悲鳴が響き渡る。
* * * * *
「なんだい、やけにもったいぶるからどんな立派もんかと思ったら、あんたも人並みだねぇ」
「……ううぅっ」
50年という年月を医療スペシャリストとして生きてきた綱手の一言には、経験や実績という裏打ちがある。
半分の人生経験しかないカカシにはとても反論できなかった。
「ほらガイ、次はアンタの教え子んとこいくよ! 呆けてないでさっさと案内しなっ」
言い様、綱手は固まったままのガイの後頭部に軽い一撃を食らわせる。
それで覚醒した熱き上忍は、金縛りから解放されるや言い放った。
「こんな奴のことより、次は我が弟子リーを見てやって下さい!!」
どうやら凝固している間、脳細胞の一片たりとも作動していなかったらしい。
布団に包まったまま涙するカカシには、それだけが唯一の救いであった。
* * * * *
その後、見舞いに訪れたイルカに、カカシは涙ながらにその出来事を語ったという。
「イルカせんせぇー…、オレ、汚されちゃいましたー」
「アンタまだ穢れてなかったとでも?」
「ヒドイですーっ! イルカせんせーっ!」
中忍の一言は、火影の一撃よりも、抜け忍の精神攻撃よりも、傷心の上忍に多大なダメージを与えたのだった。
【了】
‡蛙女屋蛙娘。@iscreamman‡
WRITE:2004/10/26
UP DATE:2004/10/26(PC)
2009/06/20(mobile)
RE UP DATE:2024/07/26
【眠り姫】
~ Sleeping Beauty ~
カカシが写輪眼の使いすぎでチャクラ不足に陥り、意識不明になることは珍しくない。
だが今回ばかりは勝手が違った。
木の葉崩しの直後、うずまきナルトを狙って里に入り込んだ者たち。謎の組織・暁の、うちはイタチ、干柿鬼鮫。
その闘いで写輪眼を限界近くまで使い、そのうえイタチの幻術・月読を受けてしまったのだ。
常ならばすぐに意識は回復し、1週間ほどでチャクラも体力も元に戻る。
それが幻術による精神的ダメージのせいか、1ヶ月以上も昏睡し続けた。
そのカカシが覚醒できたのは、5代目火影となった伝説の三忍、そして医療忍術のスペシャリストである綱手姫のおかげだった。
しかし、目覚めて最初に見聞きするのがこの人の言動。
しかも、その背後には自分を永遠のライバルと呼び、熱く挑戦しつづける男、ガイ。
できればもう一度昏睡状態になりたいカカシであった。
なにしろこの綱手姫、50歳のくせに20代の姿で、とびきりの美人なうえに爆乳なのは良い。
が、それらに比例して口と根性と性格が悪い。
ついでに、カカシの子供時代を知る数少ない人間で、今でもケツの青いクソガキ程度にしか思っていないハズだ。
「たかだか2人の賊にやられるとはお前も人の子だねェ……。天才だと思ってたけど」
「こんな奴のことより、次は我が弟子リーを見てやって下さい!!」
2人の言葉に言い返したいことはある。あるが、今は相手にしたい気分ではない。
───さっさとリーを治しに行ってくれっ!
カカシとガイは2人してそう、心の底から願っていた。
しかし、肝心の綱手姫はそんなコトはお構いなしに、カカシのかけている布団を足元からめくった。
それもなにやら嬉しそうに。
「……あの、ナンか(下半身に)御用でしょーうか?」
恐る恐る、問うカカシに、綱手姫様はそれはそれはあでやかな笑みで答える。
「なぁに、サービスで抜いといてやるよ」
「なっ?」
「結構ですっ! っつーか触んなっ!」
火影にあるまじき過激な発言に、ガイは瞬間沸騰して固まり、カカシは必死でガードを固める。
「なぁに今更言ってんのよ。アンタなんか、こーんな頃から知ってんだから」
綱手が胸元で右手の親指と人差し指を少し広げてみせた。
示したのは、過去のカカシの背丈───ではない。
「どんくらい成長したか気になるじゃないか」
「アンタにゃ関係ないだろっ! コレはもう、イルカ先生専用なのっ!」
「おや、ずいぶん生意気なこと言うじゃないか」
……でもねぇ……。
心底楽しそうに、カカシの足元に伸びる透明で細い1本の管をつまみ上げた。
「アンタが寝てる間に、看護士がコレ入れてってるからねー」
その管はベッド下の透明な袋に繋がっていて、そこには黄金色の液体が溜まっている。
つまり、もう一方の端はカカシの排泄器官に挿入されていた。
意識不明でも、人間は排泄をする。
しかし、自分で処理することも、他人に知らせて処理させることもできない。
かと言って時間ごとに誰かが尿瓶などで排泄させるにも、オムツをあてるにも、成人男性相手では手間が掛かる。
故に、カテーテル挿入。
こうして排泄物をベッド下のパックに溜めるのだ。状態や量で健康チェックもできるし。
「もう必要ないだろうから、今抜いといてやるって言ってんだよ。ぶってないで、さっさと出しなっ!」
「いーです! 自分で抜きますっ!」
医療用カテーテルを抜く抜かないで言い争う、里が誇る上忍と新たな火影。
なんとも情けない光景である。
「フン! アンタ、本気で私に敵うとでも思ってんのかい?」
「敵う敵わないじゃない! やってやるよっ!」
すでに写輪眼全開で雷切も発動しているカカシに対し、綱手は殺気を込めた一瞥をくれただけ。
しかし、それだけでカカシの動きは一瞬、止まる。
その一瞬が、全てだった。
木の葉の里に、男の悲鳴が響き渡る。
* * * * *
「なんだい、やけにもったいぶるからどんな立派もんかと思ったら、あんたも人並みだねぇ」
「……ううぅっ」
50年という年月を医療スペシャリストとして生きてきた綱手の一言には、経験や実績という裏打ちがある。
半分の人生経験しかないカカシにはとても反論できなかった。
「ほらガイ、次はアンタの教え子んとこいくよ! 呆けてないでさっさと案内しなっ」
言い様、綱手は固まったままのガイの後頭部に軽い一撃を食らわせる。
それで覚醒した熱き上忍は、金縛りから解放されるや言い放った。
「こんな奴のことより、次は我が弟子リーを見てやって下さい!!」
どうやら凝固している間、脳細胞の一片たりとも作動していなかったらしい。
布団に包まったまま涙するカカシには、それだけが唯一の救いであった。
* * * * *
その後、見舞いに訪れたイルカに、カカシは涙ながらにその出来事を語ったという。
「イルカせんせぇー…、オレ、汚されちゃいましたー」
「アンタまだ穢れてなかったとでも?」
「ヒドイですーっ! イルカせんせーっ!」
中忍の一言は、火影の一撃よりも、抜け忍の精神攻撃よりも、傷心の上忍に多大なダメージを与えたのだった。
【了】
‡蛙女屋蛙娘。@iscreamman‡
WRITE:2004/10/26
UP DATE:2004/10/26(PC)
2009/06/20(mobile)
RE UP DATE:2024/07/26