ちゃきっ様
【バイトしましょ♪ 2】
~ 前 ~
「カカシ先生、アスマ先生。」
今日も今日とて、ソファでぼぅっとしていた俺達は、はきはきとした声に反射的に立ち上がった。
視線の先に居たのは、イルカの同僚たる…そして自分達にとっても元同僚である…アノ、男。
どうも俺とは相性の良く無い…気がするコイツに、俺は咄嗟に身構えた。と
「少々、宜しいでしょうか。」
慇懃に、呼び掛けられる。
仮面を付ければ同僚でも、表面上は部下である彼等…暗部内勤事務忍部隊の面々は、皆押並べて礼儀正しい。
確かに、実力を嵩に来て横柄な態度を取る様では『内勤』は出来無いだろうから、これは当然の事なのだろう。
そう思うと自分を含め『外』専門の忍達は本当に不器用だと思う。アスマもそれには同感らしく、『内勤』を見る目が複雑だったりする。
「あの…少々お伝えしたい事が…」
語尾を濁した誘いに、俺達は連れ立って受付所を出る事にした。
付いて進んで行くと、火影の執務室…を抜け、暗部の控え室へと入って行く。それに
「こっちの用なのか?」
アスマが表情を改めて問うと
「はい。猿飛上忍、はたけ上忍。」
と。口調を変えてこちらに向き直った。表情が、先刻までの『愛想全開』のモノから冷めた…『忍』の顔に変化している。
それに反射的に姿勢を正すと
「バイト、しませんか?」
「「はぁ?!」」
…爆弾が、投下された。
「バイトっ!?」
引っくり返った声を上げた俺に対し、笑顔に戻った男はにこやかに話を続ける。
「はい。…実はこの時期内勤はとっっても忙しいんですよ。」
にこにこ 満面の笑みではあるが…この男の『もう一つの顔』を知ってしまった身としては何か裏があるとしか思えなかったり、する。
「ですから例年は、一山超えるまで『通常任務』の方は外周りの方々にお任せする様にしているんですけど。」
今年は偶々、『外』の以来も多くて…
言葉を濁し、暗い顔をする中忍。それはつまり
「俺達に仕事手伝って欲しいって事?」
はっきり訊ねると
「はい!」
と元気良く答えられた。…やっぱり。
「俺達に事務なんて出来ねぇぞ。」
一応釘を刺すアスマに
「まさか。そんな事お願いする筈無いじゃないですかv」
大袈裟に言う、相手。でもそれはつまり『暗部』の仕事の方を押し付けるって事で。
「…明日もDランク、あるんだけど。」
一応、文句を言って見る。
「大丈夫です!『余程の事』が無い限りは、明日の任務に支障無いですから。」
と、怪しげな太鼓判を押された。そして
「Aランク…とまでは行きませんがBランク位の任務報酬は出ますから。」
結構良い額でしょう
にっこり 撓んだ眼が、此方の懐具合を見透かしている様だ。更に
「勿論火影様の許可もちゃんと戴いてますから、規定違反になりませんよ。」
にこにこ 笑顔で付け加えられた言葉は。『そちらに拒否権は無い』と言う宣言に他ならなかった。
「で、コレな訳ね。」
「仕方あるめぇ。」
諦め口調の熊(面)と二人、待ち合わせ場所へと急ぐ。
…託された任務は『里の警備』だった。これなら確かに、里を離れる訳では無いので明日のDランクには間に合う。
侵入者さえなかったら楽な任務と言えるだろう。だが、暗部の『正規任務』である以外他に頼む訳に行かなくて。
…『元』暗部に、一時復帰の斡旋があっても何の不思議も無いのだ。
「あ~そう言えば俺達も年に何度かは里周りさせられたね~」
もしかしてアレ、アカデミーの忙しい時期だったからかな…
しみじみと呟くと傍らから
「…言うな。」
と声がする。
「もしかして、俺達って良いように使われてんのかねぇ…」
内勤に、とは言葉にしない。…惨めだからだ。と
「言うなって言ってるだろうがっ」
返されたのは、唸り声で。…やっぱお前もそう思っているんだな…
上忍になってからの方が余程暗部の事情に詳しくなった気がする自分に、何か哀しいモノを感じてしまい。
熊の二人、無言で駆ける。
里の奥…森の最も深い場所の手前に一人の暗部が立っていた。その頭の天辺に、見覚えの在る尻尾を見て取り。
「イルカ先生!」
思わず大声で呼びながら、傍らに降り立つ。と
「…駄目ですよ、名前なんて…」
困った様に言われてしまった。苦笑の気配が伝わって来る。
「…済みません。」
しゅんとして謝ると、横の熊が驚愕しているのが判る。なんだよっ
「お二方には此処からは、俺の指示に従って戴きます。…お二人共、此方の『警護』は初めてでしょう?」
少し首を傾げて、可愛らしく訊ねて来た先生に、戸惑いながらも頷くと。
「なら、俺に『付いて』来て下さい。」
言って、イルカ先生が動き出した。
…森の、更なる奥へと。
→[中]
~ 前 ~
「カカシ先生、アスマ先生。」
今日も今日とて、ソファでぼぅっとしていた俺達は、はきはきとした声に反射的に立ち上がった。
視線の先に居たのは、イルカの同僚たる…そして自分達にとっても元同僚である…アノ、男。
どうも俺とは相性の良く無い…気がするコイツに、俺は咄嗟に身構えた。と
「少々、宜しいでしょうか。」
慇懃に、呼び掛けられる。
仮面を付ければ同僚でも、表面上は部下である彼等…暗部内勤事務忍部隊の面々は、皆押並べて礼儀正しい。
確かに、実力を嵩に来て横柄な態度を取る様では『内勤』は出来無いだろうから、これは当然の事なのだろう。
そう思うと自分を含め『外』専門の忍達は本当に不器用だと思う。アスマもそれには同感らしく、『内勤』を見る目が複雑だったりする。
「あの…少々お伝えしたい事が…」
語尾を濁した誘いに、俺達は連れ立って受付所を出る事にした。
付いて進んで行くと、火影の執務室…を抜け、暗部の控え室へと入って行く。それに
「こっちの用なのか?」
アスマが表情を改めて問うと
「はい。猿飛上忍、はたけ上忍。」
と。口調を変えてこちらに向き直った。表情が、先刻までの『愛想全開』のモノから冷めた…『忍』の顔に変化している。
それに反射的に姿勢を正すと
「バイト、しませんか?」
「「はぁ?!」」
…爆弾が、投下された。
「バイトっ!?」
引っくり返った声を上げた俺に対し、笑顔に戻った男はにこやかに話を続ける。
「はい。…実はこの時期内勤はとっっても忙しいんですよ。」
にこにこ 満面の笑みではあるが…この男の『もう一つの顔』を知ってしまった身としては何か裏があるとしか思えなかったり、する。
「ですから例年は、一山超えるまで『通常任務』の方は外周りの方々にお任せする様にしているんですけど。」
今年は偶々、『外』の以来も多くて…
言葉を濁し、暗い顔をする中忍。それはつまり
「俺達に仕事手伝って欲しいって事?」
はっきり訊ねると
「はい!」
と元気良く答えられた。…やっぱり。
「俺達に事務なんて出来ねぇぞ。」
一応釘を刺すアスマに
「まさか。そんな事お願いする筈無いじゃないですかv」
大袈裟に言う、相手。でもそれはつまり『暗部』の仕事の方を押し付けるって事で。
「…明日もDランク、あるんだけど。」
一応、文句を言って見る。
「大丈夫です!『余程の事』が無い限りは、明日の任務に支障無いですから。」
と、怪しげな太鼓判を押された。そして
「Aランク…とまでは行きませんがBランク位の任務報酬は出ますから。」
結構良い額でしょう
にっこり 撓んだ眼が、此方の懐具合を見透かしている様だ。更に
「勿論火影様の許可もちゃんと戴いてますから、規定違反になりませんよ。」
にこにこ 笑顔で付け加えられた言葉は。『そちらに拒否権は無い』と言う宣言に他ならなかった。
「で、コレな訳ね。」
「仕方あるめぇ。」
諦め口調の熊(面)と二人、待ち合わせ場所へと急ぐ。
…託された任務は『里の警備』だった。これなら確かに、里を離れる訳では無いので明日のDランクには間に合う。
侵入者さえなかったら楽な任務と言えるだろう。だが、暗部の『正規任務』である以外他に頼む訳に行かなくて。
…『元』暗部に、一時復帰の斡旋があっても何の不思議も無いのだ。
「あ~そう言えば俺達も年に何度かは里周りさせられたね~」
もしかしてアレ、アカデミーの忙しい時期だったからかな…
しみじみと呟くと傍らから
「…言うな。」
と声がする。
「もしかして、俺達って良いように使われてんのかねぇ…」
内勤に、とは言葉にしない。…惨めだからだ。と
「言うなって言ってるだろうがっ」
返されたのは、唸り声で。…やっぱお前もそう思っているんだな…
上忍になってからの方が余程暗部の事情に詳しくなった気がする自分に、何か哀しいモノを感じてしまい。
熊の二人、無言で駆ける。
里の奥…森の最も深い場所の手前に一人の暗部が立っていた。その頭の天辺に、見覚えの在る尻尾を見て取り。
「イルカ先生!」
思わず大声で呼びながら、傍らに降り立つ。と
「…駄目ですよ、名前なんて…」
困った様に言われてしまった。苦笑の気配が伝わって来る。
「…済みません。」
しゅんとして謝ると、横の熊が驚愕しているのが判る。なんだよっ
「お二方には此処からは、俺の指示に従って戴きます。…お二人共、此方の『警護』は初めてでしょう?」
少し首を傾げて、可愛らしく訊ねて来た先生に、戸惑いながらも頷くと。
「なら、俺に『付いて』来て下さい。」
言って、イルカ先生が動き出した。
…森の、更なる奥へと。
→[中]