ちゃきっ様
【感謝を込めて、心からv】
~ 後 ~
[バイトしましょ♪]
逃げ込んだ売店で頼まれ物と自分用の珈琲を購入する。四つの紙コップをそれ用に置いてある盆に乗せると、さっさと来た道を戻る事にした。
支給服の紅、と言うある意味珍しいモノが好意的な笑みを向けつつ会釈して通り過ぎた後
「あら、アスマ。丁度良かったわ。」
そう言って。『いつもの』服装の紅が、俺の方に駆けて来た。
「はい、此れ。」
ボンと手渡されたのは小さな箱。
「誕生日おめでとう、アスマ。」
そう言ってふ…と一際艶やかな笑みを浮かべた。
「おう!有難うよ。」
だが俺の方も好い加減『紅の微笑み』を見慣れて来ていた。序に少々精神的にもキテいたりも、していた。
だから軽い調子で応えると序に
「礼は指輪、で良いか?」
にやりと笑って、揶揄ってやったのである。…せめて此れ位の反撃は許されるだろう。此処まで奴等に娯楽を提供しているのだから。
と。
一瞬、その綺麗な瞳を…幻術とは言っても美人は美人だ…極限まで見開いた『紅』は。
次にはふんわりと、今迄見た事も無いような穏やかで…優しい笑みを浮かべ。
「給料の三ヶ月分のなら戴くわ。」
と言い返して来たのである。
「良し、待ってろ。飛び切りのを用意してやる。」
だから、にんまりしながら応じてやった。
…随分とノリの良い相手らしい。それにちょっと嬉しかったぞ。同じ位虚しくも在るが。
「ふふっ、楽しみにしているわ。」
嫣然と微笑みながら紅は去って行く。
そして貰ったばかりの箱をポケットに入れると。俺は、今度こそ部下達への『奢り』を抱えて、奴等の待つ小部屋へと戻ったのである。
「よっ、昨日は有難うよ。」
受付で、昨日の相手に嫌味を篭めて礼を言う。
確かに色々な紅を拝む事は出来たが、肝心の『本物』の方は夕方から上忍任務に出て居た為結局会えず仕舞いだったのだ。
とは言え、『見世物』に加えて贈り物まで貰ったのだから一応は礼を言うべきだろう。
「昨日貰ったライター、中々良いな。失くさねぇ用にもうニ・三個買って置こうかと考えてる所だ。」
懐からその、現物のライターを取り出しながら告げる。
あの後飲み物を持って戻った俺はいつの間にか書類の類を片付けた部下達に、手製のケーキと愛用の煙草1カートンを渡され…誕生日を祝われた。
その時ポケットの箱に気付かれてしまった俺は、興味津々のイノが促すままに箱を開け。中から出て来た高価そうなライターで、そのまま貰いたての煙草を一服する事になったのだった。
「ん、どうした?」
俺の言葉に、書類を繰る手を止めて何やら考え込み始めた相手に声を掛ける。すると
「あの…贈り物って『どんな』ヤツが渡しましたか?」
と眉間に皺を寄せたまま、訊ねて来た。
「は?どんなって『いつもの格好の』アイツだったが?」
俺がそう応えると、男があ…と納得の表情になる。
「?何だ。」
「はぁ、実は…今回、個別で品物を渡していると大変な事になりそうだったので内勤からはこの『術』以外の贈り物はしないって協定が結ばれていたんです。」
男が、俺の眼を覗き込みながら言う。
「へ?じゃあ此れは…」
慌てて問い返そうとした俺の言葉を遮ると、男は更に
「それに、どうせだから色んな姿を見て戴こうと言う事になって」
いつもの姿の紅先生『だけは』居ない筈、なんです
と…真顔で言い切ったのだった。
「て、事は…」
あの時の紅は
「え、ええっっちょっと待てっ!?」
だとしたら俺はあの時なんて言った? それにあの紅は何て返した…っっ?!
「済まん、今日の任務はキャンセルだっ!ウチの奴等には鍛錬してろって伝えといてくれっっ」
慌てて叫んで、受付所から飛び出す。
「今日は8班も鍛錬日ですよぉ~~~」
気を利かせたらしい受付の声を背に受けて。俺は、紅の真意を確かめるべく…
8班の居場所を求めて、走り出した。
【終】
翌日。
浮かれ気分で上忍待機所に入った俺は、
「・・・!!・・・」
行き成り顔面を狙って飛んで来たクナイを避ける羽目に陥った。
「ア~ス~マ~」
でろでろでろでろ おどろおどろしい空気を背負ったカカシが恨めしそうな三白眼で俺を見る。
「アンタ昨日、イルカ先生が危ない所を助けたんだって?」
どろどろどろどろ 鬼気迫った形相のカカシが呟く。
「面倒臭がりのお前、が。いつもは『自分でなんとかするだろ』で済ませるお前が。」
…それは確かにそうだ。何せ受付に居るのは『暗部』なのだ。大概の奴には遅れを取らない
「まさか・・・」
イルカ先生に気があるんじゃないだろうな…?!
今にも呪われそうなその物言いに、必死で頭を廻らす。助ける?助け…あのエプロンの『紅』はイルカだったのかっっ
「ち・違うっっ 俺が助けたのは…」
「問答無用!!」
チチチ・・・と可愛い音と共にカカシの腕が青白い光を放ち始める。
その時、俺は自分の血の気が引く音を聞いた気がした。
だが!此れから!幸せになる所だってのに、誤解で殺られる訳には行かないのだ。
「おっ落ち着けっカカシっっ」
「逃げるんじゃないっっ!!」
薄情な奴等が逃げちまって、俺達だけになった待機所内を逃げ惑う。
…俺の幸せは。近くて遠い場所にあるらしかった。
[ちゃきっ@天手古舞】
DL:-
UP DATE:-
RE UP DATE:2024/08/20
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
nartic boyで相互リンクしていだいていた【天手古舞】のちゃきっさんに『イルカ先生24時間観察記録』というリクエストで書いて頂いた小説『バイトしましょ♪』から更に続きが!
アスマさん…愛されてますねー♪(´ε` )
ありがとうございました。
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
~ 後 ~
[バイトしましょ♪]
逃げ込んだ売店で頼まれ物と自分用の珈琲を購入する。四つの紙コップをそれ用に置いてある盆に乗せると、さっさと来た道を戻る事にした。
支給服の紅、と言うある意味珍しいモノが好意的な笑みを向けつつ会釈して通り過ぎた後
「あら、アスマ。丁度良かったわ。」
そう言って。『いつもの』服装の紅が、俺の方に駆けて来た。
「はい、此れ。」
ボンと手渡されたのは小さな箱。
「誕生日おめでとう、アスマ。」
そう言ってふ…と一際艶やかな笑みを浮かべた。
「おう!有難うよ。」
だが俺の方も好い加減『紅の微笑み』を見慣れて来ていた。序に少々精神的にもキテいたりも、していた。
だから軽い調子で応えると序に
「礼は指輪、で良いか?」
にやりと笑って、揶揄ってやったのである。…せめて此れ位の反撃は許されるだろう。此処まで奴等に娯楽を提供しているのだから。
と。
一瞬、その綺麗な瞳を…幻術とは言っても美人は美人だ…極限まで見開いた『紅』は。
次にはふんわりと、今迄見た事も無いような穏やかで…優しい笑みを浮かべ。
「給料の三ヶ月分のなら戴くわ。」
と言い返して来たのである。
「良し、待ってろ。飛び切りのを用意してやる。」
だから、にんまりしながら応じてやった。
…随分とノリの良い相手らしい。それにちょっと嬉しかったぞ。同じ位虚しくも在るが。
「ふふっ、楽しみにしているわ。」
嫣然と微笑みながら紅は去って行く。
そして貰ったばかりの箱をポケットに入れると。俺は、今度こそ部下達への『奢り』を抱えて、奴等の待つ小部屋へと戻ったのである。
「よっ、昨日は有難うよ。」
受付で、昨日の相手に嫌味を篭めて礼を言う。
確かに色々な紅を拝む事は出来たが、肝心の『本物』の方は夕方から上忍任務に出て居た為結局会えず仕舞いだったのだ。
とは言え、『見世物』に加えて贈り物まで貰ったのだから一応は礼を言うべきだろう。
「昨日貰ったライター、中々良いな。失くさねぇ用にもうニ・三個買って置こうかと考えてる所だ。」
懐からその、現物のライターを取り出しながら告げる。
あの後飲み物を持って戻った俺はいつの間にか書類の類を片付けた部下達に、手製のケーキと愛用の煙草1カートンを渡され…誕生日を祝われた。
その時ポケットの箱に気付かれてしまった俺は、興味津々のイノが促すままに箱を開け。中から出て来た高価そうなライターで、そのまま貰いたての煙草を一服する事になったのだった。
「ん、どうした?」
俺の言葉に、書類を繰る手を止めて何やら考え込み始めた相手に声を掛ける。すると
「あの…贈り物って『どんな』ヤツが渡しましたか?」
と眉間に皺を寄せたまま、訊ねて来た。
「は?どんなって『いつもの格好の』アイツだったが?」
俺がそう応えると、男があ…と納得の表情になる。
「?何だ。」
「はぁ、実は…今回、個別で品物を渡していると大変な事になりそうだったので内勤からはこの『術』以外の贈り物はしないって協定が結ばれていたんです。」
男が、俺の眼を覗き込みながら言う。
「へ?じゃあ此れは…」
慌てて問い返そうとした俺の言葉を遮ると、男は更に
「それに、どうせだから色んな姿を見て戴こうと言う事になって」
いつもの姿の紅先生『だけは』居ない筈、なんです
と…真顔で言い切ったのだった。
「て、事は…」
あの時の紅は
「え、ええっっちょっと待てっ!?」
だとしたら俺はあの時なんて言った? それにあの紅は何て返した…っっ?!
「済まん、今日の任務はキャンセルだっ!ウチの奴等には鍛錬してろって伝えといてくれっっ」
慌てて叫んで、受付所から飛び出す。
「今日は8班も鍛錬日ですよぉ~~~」
気を利かせたらしい受付の声を背に受けて。俺は、紅の真意を確かめるべく…
8班の居場所を求めて、走り出した。
【終】
翌日。
浮かれ気分で上忍待機所に入った俺は、
「・・・!!・・・」
行き成り顔面を狙って飛んで来たクナイを避ける羽目に陥った。
「ア~ス~マ~」
でろでろでろでろ おどろおどろしい空気を背負ったカカシが恨めしそうな三白眼で俺を見る。
「アンタ昨日、イルカ先生が危ない所を助けたんだって?」
どろどろどろどろ 鬼気迫った形相のカカシが呟く。
「面倒臭がりのお前、が。いつもは『自分でなんとかするだろ』で済ませるお前が。」
…それは確かにそうだ。何せ受付に居るのは『暗部』なのだ。大概の奴には遅れを取らない
「まさか・・・」
イルカ先生に気があるんじゃないだろうな…?!
今にも呪われそうなその物言いに、必死で頭を廻らす。助ける?助け…あのエプロンの『紅』はイルカだったのかっっ
「ち・違うっっ 俺が助けたのは…」
「問答無用!!」
チチチ・・・と可愛い音と共にカカシの腕が青白い光を放ち始める。
その時、俺は自分の血の気が引く音を聞いた気がした。
だが!此れから!幸せになる所だってのに、誤解で殺られる訳には行かないのだ。
「おっ落ち着けっカカシっっ」
「逃げるんじゃないっっ!!」
薄情な奴等が逃げちまって、俺達だけになった待機所内を逃げ惑う。
…俺の幸せは。近くて遠い場所にあるらしかった。
[ちゃきっ@天手古舞】
DL:-
UP DATE:-
RE UP DATE:2024/08/20
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
nartic boyで相互リンクしていだいていた【天手古舞】のちゃきっさんに『イルカ先生24時間観察記録』というリクエストで書いて頂いた小説『バイトしましょ♪』から更に続きが!
アスマさん…愛されてますねー♪(´ε` )
ありがとうございました。
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡