ちゃきっ様
【バイトしましょ♪ 2】
~ 中 ~
「この辺りの警護は、実際は『警護』では無いんです。」
足を止めずにイルカ先生が語る。
「この先がどうなっているか、『お二人』はどれくらい御存知ですか?」
と、問われて。
「…深い森ですよね。確か12年前の痕が一番残っている処の筈です。」
「かなり迂回する事になるから里への出入りで通る事は無ぇが…一応里外に繋がってるな。」
端的に応える俺達。すると
「正解です。…それで。」
深過ぎて危険な上、12年前の事もあって『里人』は本能的に近付きません だから
「里抜けをしようとする馬鹿や招かれざる客こそが通ろうとするんですよね。」
と、イルカ先生がとんでもない事を言い出した。その上で。
「尤も、まず通り抜けられませんがね。」
一言付け加えると。面の中、先生が小さく嗤った。
「12年前の名残…と言えば良いのでしょうか。磁場がかなり歪んでいるんです。」
それが幻術に近い状態になって、通る者の五感を狂わせます 一般人は勿論、感覚の鋭い忍は尚の事、無事では済みません
「天然の迷路ですね。」
さらりと言う。
「それでも『結界』や天性の感覚で耐え切れる者もいない訳じゃ在りません。」
だから
「此処は…俺達『内勤暗部』の最新罠の実験場にもなっているんですよ。」
タン…一旦足を止め。先生は俺達の方を振り返る。
「コレを。お二人の五感をある程度は護ってくれます。」
それでも絶対ではありませんから 俺から離れない様にして下さいね
にこっ と、いつもの…受付笑顔が添えられたのを感じ取りながら、差し出された『符』を身に付ける。
「感覚の事を抜きにしてもこの先は特Aクラスの危険地帯です。…里の『罠師』達の最高傑作が並んでいると思って戴ければ間違いありません。」
多分お二人も御存知無い型も在る事と思います
柔らかな声音で恐ろしい事を言う、先生。
「本来、定期的に『自分の』担当範囲は確認する事になっているんですけど。…今忙しいですし。」
取り合えず、俺が一通りの『修復』と『回収』を任されました
そう言い切ったイルカ先生に。
「それって…先生、此処の罠全て判るって事じゃ無いですか!」
俺は叫び、熊は…沈黙した。
が
「違いますよ。…そんな恐ろしい事、里はしません。」
つと、足を進めながら先生が言う。
「此処の『守備範囲』は継接ぎ状態になっているんです。確かに俺の『知っている』範囲は他の者よりは広いですが…」
一人分の知識だけでは向こうまで行き着けませんし向こうからも来れません
柔らかな、声。
だが、歩調を変えたり跳んだり少し樹の幹添いに進んだり。身体の方は細かな動きを繰り返しいる。
「そうなんですか?」
俺達はそれに、会話しながら寸分違わぬ動きで進む…と言う難行を課されていた。
「ええ。更に『知っている』場も、細かい連絡なんてしませんから…自分の知らない『新作』が何時の間にか増えている事が殆どです。」
つまり万一俺が捕らえられるなり何なりして知識を奪われても、ソレで里外と自由に行き来出来る様になるって訳じゃないんです
「…はぁ…」
何か凄い事を言われた気がする…
「おい、それってお前でも判らないヤツが在るかも知れねぇって事か?!」
慌てた様に突っ込みを入れる熊に。
「大丈夫です。自分の『場』だけなら、どんなモノが追加されてても処理してみせますから。」
「・・・・・」
何の気負いも無く返される言葉が、却って恐い…
無言になってしまった俺達の事など気にせずにイルカ先生は進み…時折、壊れた物や動物その他に反応して作動してしまった物を元に戻して行く。
「あ、そう言えば。」
イルカ先生が、絶命していた兎を手に俺達の方に軽く眼をやる。
「此処で掛かった獲物は、持ち帰り自由ですから。お召し上がりになるのならどうぞ。」
毒罠のはその場で処分ですが
言ってる傍から火遁の印を結び、今罠から取り外したばかりのソレを焼却処分していく。
手馴れた様子に、やる事の無い俺達はぼうっと眺めるばかりである。
「此れなら先生一人で充分なんじゃないですか?」
またぴょんぴょんと移動しながら訊ねると
「こう言う『獲物』ばかりなら確かに俺だけで充分なんですけど、ね…」
軽く、肩を竦める気配。
「偶に『大物』が掛かりますから。」
と。言われた言葉に『熊?』と呟いた俺は。
面越しにギンと睨まれたのだった。
…お前、やっぱり自覚あったんだな…
→[後]
~ 中 ~
「この辺りの警護は、実際は『警護』では無いんです。」
足を止めずにイルカ先生が語る。
「この先がどうなっているか、『お二人』はどれくらい御存知ですか?」
と、問われて。
「…深い森ですよね。確か12年前の痕が一番残っている処の筈です。」
「かなり迂回する事になるから里への出入りで通る事は無ぇが…一応里外に繋がってるな。」
端的に応える俺達。すると
「正解です。…それで。」
深過ぎて危険な上、12年前の事もあって『里人』は本能的に近付きません だから
「里抜けをしようとする馬鹿や招かれざる客こそが通ろうとするんですよね。」
と、イルカ先生がとんでもない事を言い出した。その上で。
「尤も、まず通り抜けられませんがね。」
一言付け加えると。面の中、先生が小さく嗤った。
「12年前の名残…と言えば良いのでしょうか。磁場がかなり歪んでいるんです。」
それが幻術に近い状態になって、通る者の五感を狂わせます 一般人は勿論、感覚の鋭い忍は尚の事、無事では済みません
「天然の迷路ですね。」
さらりと言う。
「それでも『結界』や天性の感覚で耐え切れる者もいない訳じゃ在りません。」
だから
「此処は…俺達『内勤暗部』の最新罠の実験場にもなっているんですよ。」
タン…一旦足を止め。先生は俺達の方を振り返る。
「コレを。お二人の五感をある程度は護ってくれます。」
それでも絶対ではありませんから 俺から離れない様にして下さいね
にこっ と、いつもの…受付笑顔が添えられたのを感じ取りながら、差し出された『符』を身に付ける。
「感覚の事を抜きにしてもこの先は特Aクラスの危険地帯です。…里の『罠師』達の最高傑作が並んでいると思って戴ければ間違いありません。」
多分お二人も御存知無い型も在る事と思います
柔らかな声音で恐ろしい事を言う、先生。
「本来、定期的に『自分の』担当範囲は確認する事になっているんですけど。…今忙しいですし。」
取り合えず、俺が一通りの『修復』と『回収』を任されました
そう言い切ったイルカ先生に。
「それって…先生、此処の罠全て判るって事じゃ無いですか!」
俺は叫び、熊は…沈黙した。
が
「違いますよ。…そんな恐ろしい事、里はしません。」
つと、足を進めながら先生が言う。
「此処の『守備範囲』は継接ぎ状態になっているんです。確かに俺の『知っている』範囲は他の者よりは広いですが…」
一人分の知識だけでは向こうまで行き着けませんし向こうからも来れません
柔らかな、声。
だが、歩調を変えたり跳んだり少し樹の幹添いに進んだり。身体の方は細かな動きを繰り返しいる。
「そうなんですか?」
俺達はそれに、会話しながら寸分違わぬ動きで進む…と言う難行を課されていた。
「ええ。更に『知っている』場も、細かい連絡なんてしませんから…自分の知らない『新作』が何時の間にか増えている事が殆どです。」
つまり万一俺が捕らえられるなり何なりして知識を奪われても、ソレで里外と自由に行き来出来る様になるって訳じゃないんです
「…はぁ…」
何か凄い事を言われた気がする…
「おい、それってお前でも判らないヤツが在るかも知れねぇって事か?!」
慌てた様に突っ込みを入れる熊に。
「大丈夫です。自分の『場』だけなら、どんなモノが追加されてても処理してみせますから。」
「・・・・・」
何の気負いも無く返される言葉が、却って恐い…
無言になってしまった俺達の事など気にせずにイルカ先生は進み…時折、壊れた物や動物その他に反応して作動してしまった物を元に戻して行く。
「あ、そう言えば。」
イルカ先生が、絶命していた兎を手に俺達の方に軽く眼をやる。
「此処で掛かった獲物は、持ち帰り自由ですから。お召し上がりになるのならどうぞ。」
毒罠のはその場で処分ですが
言ってる傍から火遁の印を結び、今罠から取り外したばかりのソレを焼却処分していく。
手馴れた様子に、やる事の無い俺達はぼうっと眺めるばかりである。
「此れなら先生一人で充分なんじゃないですか?」
またぴょんぴょんと移動しながら訊ねると
「こう言う『獲物』ばかりなら確かに俺だけで充分なんですけど、ね…」
軽く、肩を竦める気配。
「偶に『大物』が掛かりますから。」
と。言われた言葉に『熊?』と呟いた俺は。
面越しにギンと睨まれたのだった。
…お前、やっぱり自覚あったんだな…
→[後]