天使のような悪魔
【2:復讐LOL(笑)】
~ Devel like Angel ~
[天使のような悪魔]
カカシの部屋に突然現れ、悪魔だというイルカはにこやかに語る。
「そんなに構えないでくださいよ。あなたはオレに愚痴でも言って、俺がその報酬を受けるだけなんですから」
「……悪魔に報酬払うってだけで、普通はビビルでしょ」
警戒するように口元を手近にあったネックウォーマーで覆い隠し、カカシはイルカを見上げる。
「だって、よくいうじゃない?」
悪魔と契約すると死後に魂を渡さないといけないって。
「そんなもの、いりませんよ」
けろっと言い放ってから、ついでのようにイルカは訂正する。
あなたの魂に価値がないということではなくてですね、と。
「オレは、そこまで重い望みを請け負うほどの悪魔じゃないんで。それに、あなたの悩みも魂を掛けるような深刻なものじゃないでしょう?」
人の悩みも深さもそれぞれですし、他人には些細と感じられるようなことも当人にしてみれば命をかけてもいいということだってあるのは分かっています。
「けれどあなたは、何らかの手段であなたを傷つけた女性たちを見返すか、そんな思い出を忘れるくらいの幸せを掴めればいいんじゃないんですか?」
「うん」
「でしたら、本当に些細な代償でいいんです。もちろん、それはあなたにしか購えないものになりますけどね」
悪魔は願いや望みに準じただけの報酬を、過不足なく受け取るんです。
「大それた願いにはそれだけの代償を要求します。それこそ、人の魂のような、ね。けれど、時には心からの感謝の言葉1つで充分なんですよ」
簡単に解説された報酬システムに、カカシは不思議そうに訪ねる。
「へえ。悪魔って、欲ないの?」
「程ほどには。まあ、人間の強欲さに恐ろしくなることはあります」
「だろうねえ」
イルカの冗談めかした言葉にカカシは苦く笑うしかない。
それなりに人間社会で過ごしていれば、どれだけ人間がみっともない生き物か分かる。
大それたことはやってくれるらしいが、それは結局人間が望むことなのだ。
そして、準じるだけの報酬しかとらないという悪魔の論理にはちょっと頭が下がる思いがした。
悪魔だというイルカだが、最初の爽やかで誠実そうな印象のまま、カカシの目には映っている。
いや、今までであった誰よりも、親しみを感じていた。
できるなら、彼みたいな友人がいればいいだろうとさえ思う。
「さて早速、仕事に取り掛かりましょうか。あなたの悩みは女性が苦手なこと、でしたね」
だが、カカシの思いを知らないイルカはさっさと話を進める。
考えてみれば、悪魔のイルカにとっては仕事なのだ。
そのことに思い至って、何故か不快に感じたカカシはわざと気のない返事をする。
「はあ」
「どうします?」
「どうって……」
「解決方法は幾つかありますよ。あなたがこれまで傷つけられてきた女性たちへの復讐方法は」
あくまでもさわやかに、イルカは物騒な言葉を口にする。
「復讐って、そんな大げさなことはいいよ。ただ、今日みたいなのは二度とゴメン」
「ああ、あれは酷いですもんねえ」
「知ってるの?」
「はい。依頼者のことは全て」
最初にイルカ自身がそう言っていたことを思い出す。
しかし、本人があまり思い出したくないことばかりの人生を、見ず知らずの悪魔が全て知っているというのも決まりが悪いものだった。
特に、イルカには情けない自分を知られ、嫌われはしないかが心配だった。
「心配なさらなくても、この契約が終了すれば詳細は全て忘れます」
そうでないと、パンクしてしまいますからね。
くすりと笑ってイルカは自分の額を軽く指で叩く。
確かに、願いを聞くたびに人1人の人生を記憶していたのでは、いくら悪魔とはいえ身が持たないだろう。
第一、悪魔に願うような人間の人生が楽しいものであるはずがない。
覚えていてもいいことがあるだろうか。
だが、自分もそんな1人であることに気付き、カカシは寂しさとやりきれなさに苛まれる。
そして同時に、1つの不安も覚えた。
「じゃあ、オレの事、忘れちゃう?」
「いいえ。あなたとこうして会話したことは残ります。オレ自身の記憶ですからね。ただ、それ以上の契約時に読み取ったプライベートなデータは一時的なものだということです」
「そ」
イルカが自分を忘れないと知って安堵する自分を不思議にも思わず、カカシはイルカに続きを促した。
「それで解決方法って?」
「例えば、あなたが恋人を持つとかどうです? 例え女性から誘いを掛けられても断りやすいでしょう? 2人で歩いていれば、ああいう手合いに声をかけられることも、まずないでしょうし」
確かに、恋人と連れ立って歩いている男を逆ナンしてくるような女性は殆どいない。
いたとしても、それは相当の自信家か、状況判断のできない女だろう。
ただ、嫌な女から声をかけられなくなるということ以上に、恋人と2人で街を歩くというシチュエーションにカカシの心が動いた。
「そうだねえ。それ、いいなあ」
脳裏に浮かんだ自分の隣りを歩く恋人の顔が、目の前の男とダブった気がした。
カカシが首をかしげるのとほぼ同時に、何故かイルカも首をひねる。
「でも、不思議ですね」
「なにが?」
「カカシさん、外見はすごくいいから彼女ぐらいいてもいいのに」
外見は、という言い方にも何か含みがあるように感じ、カカシはむっかりとイルカを睨む。
「……あんたが言わないでよ」
オレのこと、分かるんでしょ?
「はい。すみません」
まったく悪びれた様子もなく、イルカはにこやかに謝罪を口にした。
一方のカカシはネックウォーマーに顔を埋めるように、俯いてしまう。
カカシは顔やスタイルだけなら並のモデルよりずっといい。
いや、実際、10代の頃はモデルの仕事もしたことがある。
細身の長身だが、必要な筋力は充分にある。
バランスのよい筋肉は所作を美しくしてくれるのだ。
それだけでなく、父親ゆずりのナチュラルな銀髪と青い目は、ヘアダイやカラーコンタクトが一般的になったとはいえ、人目を惹く。
けれど外見だけで自分を選んでおきながら、中身も同じようにかっこいいことを求められるという嫌な思いもしてきた。
そのせいで、カカシは顔に極度のコンプレックスを抱えてしまい、眼鏡と帽子、冬季はマフラーやマスクを手放せない。
それに、いくら外見が流行の最先端にいようと、中身は旧態然たる《おたく》なのだ。
デートをしてもスタイリッシュに振舞えるはずもなく、ギャップに戸惑う女たちから罵倒されることを繰り返した。
だから、かなり強度の女性不信で、ちょっと会話をするにもいちいち構えてしまい、振られ人生に拍車を掛けているのかもしれない。
「オレはカカシさんの顔、きれいだなって思っただけなんで」
その言葉───イルカに誉められることは、ちっとも苦痛でなかった。
そこになんの含みもない、素直な感想だからかもしれない。
そうは思っても、気恥ずかしいのでカカシも思ったとおりのことを言い返す。
「イルカさんこそ、モテルでしょ? 男前だし、優しいし」
「おだてたってなにもでませんよ。で? どんな女性がタイプなんです?」
意趣返しなのだろう、答えの代わりの問いに、ふと気付く。
自分が女性の外見に特にこだわりをもっていないことに。
おたくとは言っても、カカシはいわゆる2次元美少女系へ傾倒した萌ブタと分類されるヲタクではない。
自分の得意分野に対する理論や無駄に膨大な知識を蓄え、披露するのが好きなだけの、古式ゆかしい「おたく」なのである。
美少女キャラに『萌え~』を連呼するような輩とは別物、という自負すら抱いていた。
確かに、アニメもみているし、美少女ゲームだって少しは遊んだ。
けれど、所詮は虚構。
画面上の少女たちを性的対象と見た覚えもなかった。
現実の女性に対してもそれは同じで、カカシには『理想の女性像』なるものが存在しない。
でも、ここで正直に理想などないと告げることもできなかった。
「……ありのままのオレを認めてくれる人、かなあ……」
考えたあげく、漠然とした、それでも、ずっと願っていたことを口にする。
「オレの外見だけみないで、おたくでいいよって人」
「そういう人、結構いると思うんですけどねえ」
あっさりとイルカは言ってくれる。
そんなはずがないと言い返そうとしたカカシを黙らせるようなキツイ言葉を。
「カカシさん、初対面でかなり構えちゃって、女性だってだけで可能性のある子も排除してませんでしたか? 他人に受け入れてもらうには、まず自分から歩み寄らないとダメなんですよ、人付き合いって」
痛いところを真っ直ぐに突かれ、カカシは逃げ出したくなった。
「……悪魔に、人付き合いを諭されたくなーいよ」
精一杯の虚勢で、揶揄するようなことも言ってみるが、声が震えているような気がする。
「そりゃそうですね。分かってるならいいです」
「頭で分かっててもさ、実際できなきゃあね」
それは僻みでも自嘲でもなく、きちんと自分を把握し、省みることのできているからこその言葉だった。
「あなた、素直でカワイイ性格してんですけどねえ」
勿体無いよなあ。
イルカはそう言って、まじまじとカカシの顔を覗き込む。
「女性だと構えちゃってダメなだけですよね」
「うん」
「男友達はそこそこいるみたいですね」
「うん。って、そんなことも分かるんだ」
「今だけですけどね」
さて、どうしたもんかなあ。
イルカは顎のあたりを軽く右手の指先で押さえ、やや上目で考えこむ。
彼の仕草をかわいいと思った瞬間、ある考えがカカシの脳裏に閃く。
途端、無意識のまま、その思い付きを口にしていた。
「……ねえ、あんたじゃダメ?」
【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@ iscreamman‡
WRITE:2006/03/28
UP DATE:2006/03/29(PC)
2008/12/21(mobile)
RE UP DATE:2024/08/18
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[天使のような悪魔]
カカシの部屋に突然現れ、悪魔だというイルカはにこやかに語る。
「そんなに構えないでくださいよ。あなたはオレに愚痴でも言って、俺がその報酬を受けるだけなんですから」
「……悪魔に報酬払うってだけで、普通はビビルでしょ」
警戒するように口元を手近にあったネックウォーマーで覆い隠し、カカシはイルカを見上げる。
「だって、よくいうじゃない?」
悪魔と契約すると死後に魂を渡さないといけないって。
「そんなもの、いりませんよ」
けろっと言い放ってから、ついでのようにイルカは訂正する。
あなたの魂に価値がないということではなくてですね、と。
「オレは、そこまで重い望みを請け負うほどの悪魔じゃないんで。それに、あなたの悩みも魂を掛けるような深刻なものじゃないでしょう?」
人の悩みも深さもそれぞれですし、他人には些細と感じられるようなことも当人にしてみれば命をかけてもいいということだってあるのは分かっています。
「けれどあなたは、何らかの手段であなたを傷つけた女性たちを見返すか、そんな思い出を忘れるくらいの幸せを掴めればいいんじゃないんですか?」
「うん」
「でしたら、本当に些細な代償でいいんです。もちろん、それはあなたにしか購えないものになりますけどね」
悪魔は願いや望みに準じただけの報酬を、過不足なく受け取るんです。
「大それた願いにはそれだけの代償を要求します。それこそ、人の魂のような、ね。けれど、時には心からの感謝の言葉1つで充分なんですよ」
簡単に解説された報酬システムに、カカシは不思議そうに訪ねる。
「へえ。悪魔って、欲ないの?」
「程ほどには。まあ、人間の強欲さに恐ろしくなることはあります」
「だろうねえ」
イルカの冗談めかした言葉にカカシは苦く笑うしかない。
それなりに人間社会で過ごしていれば、どれだけ人間がみっともない生き物か分かる。
大それたことはやってくれるらしいが、それは結局人間が望むことなのだ。
そして、準じるだけの報酬しかとらないという悪魔の論理にはちょっと頭が下がる思いがした。
悪魔だというイルカだが、最初の爽やかで誠実そうな印象のまま、カカシの目には映っている。
いや、今までであった誰よりも、親しみを感じていた。
できるなら、彼みたいな友人がいればいいだろうとさえ思う。
「さて早速、仕事に取り掛かりましょうか。あなたの悩みは女性が苦手なこと、でしたね」
だが、カカシの思いを知らないイルカはさっさと話を進める。
考えてみれば、悪魔のイルカにとっては仕事なのだ。
そのことに思い至って、何故か不快に感じたカカシはわざと気のない返事をする。
「はあ」
「どうします?」
「どうって……」
「解決方法は幾つかありますよ。あなたがこれまで傷つけられてきた女性たちへの復讐方法は」
あくまでもさわやかに、イルカは物騒な言葉を口にする。
「復讐って、そんな大げさなことはいいよ。ただ、今日みたいなのは二度とゴメン」
「ああ、あれは酷いですもんねえ」
「知ってるの?」
「はい。依頼者のことは全て」
最初にイルカ自身がそう言っていたことを思い出す。
しかし、本人があまり思い出したくないことばかりの人生を、見ず知らずの悪魔が全て知っているというのも決まりが悪いものだった。
特に、イルカには情けない自分を知られ、嫌われはしないかが心配だった。
「心配なさらなくても、この契約が終了すれば詳細は全て忘れます」
そうでないと、パンクしてしまいますからね。
くすりと笑ってイルカは自分の額を軽く指で叩く。
確かに、願いを聞くたびに人1人の人生を記憶していたのでは、いくら悪魔とはいえ身が持たないだろう。
第一、悪魔に願うような人間の人生が楽しいものであるはずがない。
覚えていてもいいことがあるだろうか。
だが、自分もそんな1人であることに気付き、カカシは寂しさとやりきれなさに苛まれる。
そして同時に、1つの不安も覚えた。
「じゃあ、オレの事、忘れちゃう?」
「いいえ。あなたとこうして会話したことは残ります。オレ自身の記憶ですからね。ただ、それ以上の契約時に読み取ったプライベートなデータは一時的なものだということです」
「そ」
イルカが自分を忘れないと知って安堵する自分を不思議にも思わず、カカシはイルカに続きを促した。
「それで解決方法って?」
「例えば、あなたが恋人を持つとかどうです? 例え女性から誘いを掛けられても断りやすいでしょう? 2人で歩いていれば、ああいう手合いに声をかけられることも、まずないでしょうし」
確かに、恋人と連れ立って歩いている男を逆ナンしてくるような女性は殆どいない。
いたとしても、それは相当の自信家か、状況判断のできない女だろう。
ただ、嫌な女から声をかけられなくなるということ以上に、恋人と2人で街を歩くというシチュエーションにカカシの心が動いた。
「そうだねえ。それ、いいなあ」
脳裏に浮かんだ自分の隣りを歩く恋人の顔が、目の前の男とダブった気がした。
カカシが首をかしげるのとほぼ同時に、何故かイルカも首をひねる。
「でも、不思議ですね」
「なにが?」
「カカシさん、外見はすごくいいから彼女ぐらいいてもいいのに」
外見は、という言い方にも何か含みがあるように感じ、カカシはむっかりとイルカを睨む。
「……あんたが言わないでよ」
オレのこと、分かるんでしょ?
「はい。すみません」
まったく悪びれた様子もなく、イルカはにこやかに謝罪を口にした。
一方のカカシはネックウォーマーに顔を埋めるように、俯いてしまう。
カカシは顔やスタイルだけなら並のモデルよりずっといい。
いや、実際、10代の頃はモデルの仕事もしたことがある。
細身の長身だが、必要な筋力は充分にある。
バランスのよい筋肉は所作を美しくしてくれるのだ。
それだけでなく、父親ゆずりのナチュラルな銀髪と青い目は、ヘアダイやカラーコンタクトが一般的になったとはいえ、人目を惹く。
けれど外見だけで自分を選んでおきながら、中身も同じようにかっこいいことを求められるという嫌な思いもしてきた。
そのせいで、カカシは顔に極度のコンプレックスを抱えてしまい、眼鏡と帽子、冬季はマフラーやマスクを手放せない。
それに、いくら外見が流行の最先端にいようと、中身は旧態然たる《おたく》なのだ。
デートをしてもスタイリッシュに振舞えるはずもなく、ギャップに戸惑う女たちから罵倒されることを繰り返した。
だから、かなり強度の女性不信で、ちょっと会話をするにもいちいち構えてしまい、振られ人生に拍車を掛けているのかもしれない。
「オレはカカシさんの顔、きれいだなって思っただけなんで」
その言葉───イルカに誉められることは、ちっとも苦痛でなかった。
そこになんの含みもない、素直な感想だからかもしれない。
そうは思っても、気恥ずかしいのでカカシも思ったとおりのことを言い返す。
「イルカさんこそ、モテルでしょ? 男前だし、優しいし」
「おだてたってなにもでませんよ。で? どんな女性がタイプなんです?」
意趣返しなのだろう、答えの代わりの問いに、ふと気付く。
自分が女性の外見に特にこだわりをもっていないことに。
おたくとは言っても、カカシはいわゆる2次元美少女系へ傾倒した萌ブタと分類されるヲタクではない。
自分の得意分野に対する理論や無駄に膨大な知識を蓄え、披露するのが好きなだけの、古式ゆかしい「おたく」なのである。
美少女キャラに『萌え~』を連呼するような輩とは別物、という自負すら抱いていた。
確かに、アニメもみているし、美少女ゲームだって少しは遊んだ。
けれど、所詮は虚構。
画面上の少女たちを性的対象と見た覚えもなかった。
現実の女性に対してもそれは同じで、カカシには『理想の女性像』なるものが存在しない。
でも、ここで正直に理想などないと告げることもできなかった。
「……ありのままのオレを認めてくれる人、かなあ……」
考えたあげく、漠然とした、それでも、ずっと願っていたことを口にする。
「オレの外見だけみないで、おたくでいいよって人」
「そういう人、結構いると思うんですけどねえ」
あっさりとイルカは言ってくれる。
そんなはずがないと言い返そうとしたカカシを黙らせるようなキツイ言葉を。
「カカシさん、初対面でかなり構えちゃって、女性だってだけで可能性のある子も排除してませんでしたか? 他人に受け入れてもらうには、まず自分から歩み寄らないとダメなんですよ、人付き合いって」
痛いところを真っ直ぐに突かれ、カカシは逃げ出したくなった。
「……悪魔に、人付き合いを諭されたくなーいよ」
精一杯の虚勢で、揶揄するようなことも言ってみるが、声が震えているような気がする。
「そりゃそうですね。分かってるならいいです」
「頭で分かっててもさ、実際できなきゃあね」
それは僻みでも自嘲でもなく、きちんと自分を把握し、省みることのできているからこその言葉だった。
「あなた、素直でカワイイ性格してんですけどねえ」
勿体無いよなあ。
イルカはそう言って、まじまじとカカシの顔を覗き込む。
「女性だと構えちゃってダメなだけですよね」
「うん」
「男友達はそこそこいるみたいですね」
「うん。って、そんなことも分かるんだ」
「今だけですけどね」
さて、どうしたもんかなあ。
イルカは顎のあたりを軽く右手の指先で押さえ、やや上目で考えこむ。
彼の仕草をかわいいと思った瞬間、ある考えがカカシの脳裏に閃く。
途端、無意識のまま、その思い付きを口にしていた。
「……ねえ、あんたじゃダメ?」
【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@ iscreamman‡
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2008/12/21(mobile)
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