Golden Japanese Diarys

【09:food 03】
〔食べ物 その3〕

   〜Golden Japanese Diarys〜
[Happily Ever After番外編]



───これは、居候たちが城戸家での生活に馴染み始めた頃の出来事である。



「なあ。明日の昼食は結局どうなったんだ?」

 居候専用に開放されているサロンで中国の古い軍記小説を肴にロックグラスに注いだラムを味わっていたカノンが、厨房からツマミを見繕ってきたカニ(仮)へ問いかけた。

「そりゃ、坊主たちのご希望通り『にぃちゃん作のオムライス』さ」

 昼間、明日の昼食のリクエストを兄弟らへ聞きに行った際、未知のメニューを次々と要求されてまだまだ勉強が必要と実感したカニ(仮)である。
色々とリスエストはされたが結局、瞬の兄へのおねだりという鶴の一声により、オムライスに決まったのだ。

「いや、どんな料理か分からんから聞いたんだが」

「安心しな、オレもだ」

 しかし、料理などしたことも無い者はもちろん、城戸家厨房の見習いとなった料理好きなカニ(仮)ですら聞いたことのない料理だ。
名前から察するに、オムレツにライスを組み合わせた物のようだが、正解は全く分からない。

「まあ、にぃちゃんが言うにゃ、チキンピラフをオムレツで包んだ料理らしい。当然、スープやサラダも付けるがな」

 食えないもんは出さねえさ、とカニ(仮)は自分もグラッパをショットグラスに注ぎ、ちろりと舐める。
彼が用意してきたツマミは薄くスライスした干し柿というドライフルーツと、いぶりがっこなるスモークされた漬け物ピクルスをそれぞれクリームチーズと共にクラッカーに乗せたものだ。
当然、味見はしている。
どちらも癖はあるものの酒に合う、中々に乙な味であった。

 よく冷えた辛口の白ワインを楽しんでいたシュラとアフロディーテが早速手を出し、未経験の味に唸ったり感心したりしつつ杯を干していく。

「しかし、意外だったな」

 1人だけ温かい紅茶のカップを手にしているサガも干し柿とクリームチーズを乗せたクラッカーを齧りながら、感慨深げに呟く。

「一輝が料理も出来るとは思わなかった」

 確かに、と同意する元反逆者3人組を他所に、神を誑かした双子の弟が兄の言葉を否定した。

「いや、あいつが家事全般出来るのは少しも意外じゃないだろう。逆に納得感しかない」

「そうか?」

「前に話したよな? アイツは弟が生まれてからずっと面倒を見てきたって」

 特に弟が2歳になるまでは養子や里子として引き取られて離れ離れにされる可能性が高く、他人に任せられずに極力自分でなんとかしていたのだろう、と。

 乳幼児は特に手が掛かるし、そもそも瞬が生まれた時には一輝自身もまだ2歳になったばかりのはずだ。
自分だって、まだ大人に面倒を見てもらわなければならない時期だったはずだが。

「普通なら考えられんが、あの一輝だからな。それに瞬の行儀の良さを見せられたら、本当にきちんと育ててきたのだろうよ」

 そう説明されれば、ちょっとした生活の困り事を相談すれば即座に解決策が出てくる事も合点がいく。
明日のアシスタントを仰せつかったカニ(仮)も言われてみれば、と持ち込んだ食材の取り扱いについて受けた注意を思い出した。

「そういや言われたわ。ヨーロッパ産の非加熱の小麦製品は冷蔵庫で保管しろって」

 ヨーロッパでは気候的に問題ないのだが、小麦には虫の卵が産みつけられていて一定の気温になると一斉に孵化してしまう。
その為、高温多湿な時期もある日本産の小麦製品は製粉する際に砕卵機にかけられている、と。

 この事を知らずにヨーロッパ製の小麦製品───つまりはイタリア人にとっては大事な主食である乾燥パスタを常温で保管していると、大変な事になる訳だ。

「おい、待て。お前、自室にパスタをストックしてなかったか?」

「そう言えば、バックバーにパスタも並んで居たような……」

 カニ(仮)が使っている客室の居間に立ち入った事のあるシュラとアフロディーテが表情を引き攣らせて距離を取る。
部屋に設置されたミニバーの棚に酒の瓶と一緒にパスタストッカーが並んでいたのを思い出したのだ。
彼らも虫は苦手ではないが、食品に湧いて蠢いている無数の幼虫を積極的に見たがる人間は少数派だろう。

「安心しな。ありゃ日本製の早茹でパスタだ」

 小腹が空いた時に茹で時間1分で仕上がるパスタは重宝するし、簡易とは言えキッチンにパスタがあるのがなんとなく落ち着くという理由で置いてあるだけだ。
カニ(仮)だって食材を無駄にするつもりはなく、持ち込んだ故郷産のパスタ類はまとめて厨房の冷蔵庫に預けてある。

 何かよからぬ事を想像してしまったサガが無言でクラッカーをじっと見つめているが、双子の弟の方は全く気にせず口に放り込んでいた。
どうやら兄の方は干し柿が、弟の方はいぶりがっこが好みらしい。
見た目はそっくりなのに中身は真逆だ、と初対面で評したアフロディーテの弁は的を射たものだったようだ。

「サガ、ソイツは日本製だから安心しろや」

「そ、そうか……」

「この邸の厨房から持ってきたもんなら万が一も無かろうよ」

 何しろ女神様も召し上がる物だからな。
そう言ってカノンはグラスのラムを飲み切る。
居候たちの夜のひと時もそろそろお開きの時間のようだ。

「明日も飯が楽しみだなー」

 呑気なカノンの言葉に、居候の誰もが同意を示していた。



   ★ ☆ ★ ☆ ★



 翌朝。
朝食後に厨房で下拵えとして米の浸水をした一輝とカニ(仮)は荷物持ちに瞬を連れ、城戸家お抱え運転手の運転で最寄りのスーパーへ買い出しへ出かけていった。

 そして小1時間後、大量の買い物袋を下げて帰宅するや、真っ直ぐに厨房へ向かう。
そこで一輝はラーメン屋の店主のように頭にタオルを、腰に前掛けを巻き、カニ(仮)は馴染んできた見習い用のコックコートへと着替えた。

「メニューはオムライス、ジャガイモパタタベーコンパンチェッタ牛乳ラッテスープ、キャベツカーヴォロはコールスロー。それだけだと物足りない奴らもいそうだから鶏肉ポッロで焼き物か蒸し物にしたいんだが、なんかおすすめの料理はあるか?」

「材料からしてオムライスはトマトでスープがミルク、サラダはマヨネーズか。……なら、ディアボロ風チキンはどうだ?」

 カニ(仮)によれば、ガーリックを効かせたパン粉を塗した鶏肉を焼きあげた物をディアボロ風というそうだ。

「それでいこう。あと、デザートはフルーツ寒天だ。じゃ、まずは米からだな」

了解だ、にぃちゃんシィ カポ

 冷蔵庫から米を浸水させていたコンテナを出し、水を切って炊飯釜へ投入して気持ち少なめなチキンコンソメスープで炊き上げる。

「スープのジャガイモパタタは皮を剥いて賽の目切りダーディより気持ち大きめ、タマネギチッポラセロリセダーノニンジンロタベーコンパンチェッタもだな」

「そりゃ角切りクペッティって言うんだ。コールスロー用のキャベツカーヴォロとカロタはジュリエンヌか?」

 調理中の2人がイタリア語混じりで会話をするのは互いの語学力向上のためである。
日本語の料理用語は独特な物が多い、と主にカニ(仮)の希望で。

そうだシィ。日本語で千切りな。そっちで他に使うものはあるか?」

「あー、パタータドルチェって、日本じゃなんて呼ぶんだ?」

 問われた一輝は脳内でイタリア語を英語から日本語へ2段変換し、見当をつける。

「……ポテト、スウィート? ああ、サツマイモ、か?」

それだっ!シィィィィッ サツマイモか。覚えたぜ」

 食材庫から数本見繕って渡せば、推測通りだったらしく、受け取ったカニ(仮)が厚めの輪切りにし、天板に鶏肉と交互に並べてパセリとニンニクのみじん切りを混ぜたパン粉をたっぷりと掛けてオーブンへ投入した。

 カニ(仮)がディアボロ風チキンを手掛けてい間に、一輝は業務用と思しき巨大な缶詰のシロップを鍋に開けて弱火で沸騰寸前まで加熱しつつ、シロップ漬けにされたみかんを小ぶりなガラスの器に均等に分配していく。
シロップが沸いたところで、水に戻しておいた寒天をちぎりながら加えてゆっくりと混ぜ、溶かし切ったら火から下ろす。
少し冷ましてからみかんを入れておいた器に流し入れ、完全に粗熱がとれたら冷蔵庫で冷やしておく。

 あとは他の料理人とも協力しあって賽の目にカットしたタマネギとセロリ、ニンジンをバターでじっくりと炒め、ベーコンを加えて脂を出して全体に纏わせたらコンソメスープで煮込む。
同時に千切りにしたキャベツとニンジンはしっかりと水を切っておき、提供直前にマヨネーズを半量の酢で伸ばしたドレッシングを絡めれば良い状態にした。

 米が蒸らしに入った所で鶏胸肉を一口大にカットし、賽の目切りにしたタマネギとニンジンと一緒に炒め、火が通ったら水煮のグリーンピースとコーンを加えて大量のケチャップで煮詰めていく。
コクを出す為に、軽く焦げ付くくらいまで水分を飛ばすのがコツだ。

「味付けはケチャップかよ」

「レストランならトマトソースを使うだろうが、家庭でやるならケチャップが便利だからな」

 イタリア人にとってのトマトソースとケチャップは、日本人的には自分でとった出汁と市販のめんつゆくらい違うようだ。
自分で作るならトマトソース一択だな、と張り切るカニ(仮)を他所に、一輝は炊き上がったチキンピラフに炒めておいた具材を混ぜ、さらにケチャップや塩で味を調整していく。

 最後に1人3個換算で15人分、50個程の玉子を割って溶きほぐし、一度漉す。
空気を含ませないように、けれどしっかりと箸やフォークで白身を切り混ぜるのがオムレツ作りの肝だ。

「講釈を垂れれば、オムライスはオムレツライスが始まりだ。卵液に飯を混ぜたオムレツと、飯を包み込んだオムレツ。どっちが元祖かは知らんが……」

 説明しながら、一輝が小ぶりのフライパンで見本となる元祖のオムレツライスを手早く作り上げていく。
飯を混ぜ込んだ方は玉子炒飯の塊、包み込んだ方はライスオムレツと言うべきか。
更に薄焼き卵の上にライスを盛るとくるりと巻き込んで皿に移していく。

「家庭料理としては薄焼き玉子で飯を包み込むのが定番のオムライス、だ」

 子供には人気のメニューだが、1人分ずつしか調理できない手間があり、大勢の子供たちが集められた施設では出てこない、施設育ちな兄弟たちにとっては憧れの料理の一つだ。
一輝と瞬が預けられていた小規模な個人の施設は融通が利き、自分たち───つまりは一輝ができる事であれば、普通の家庭と同じように食卓にオムライスを載せる事も可能だったが。

 並べられた3種類のオムライスを見比べ、一匙ずつ味見もしたカニ(仮)は眉を顰めた。

「あー、ケチャップが甘過ぎるが、悪くわねぇわな」

「子供向けだからな。アンタらはチリソース掛けた方がいいかもしれん」

 勧められるまま、皿に出したホットチリソースをほんの少量スプーンの端につけ、再度オムライスを一口。

「なるほど、これならいけるな」

 味わいながら、カニ(仮)は脳内でそれぞれの作り方をシミュレーションし始めていた。
オムレツは基本的だからこそ難しい、料理人の腕を見るのに最適な料理であり、少し張り切ってもいる。

「んじゃ、今日はこれを人数分か?」

「そのつもりだったんだがな、今朝になって新種を強請るやつがいた」

 呆れを滲ませた声で説明しつつも皿に先に飯を盛り、その上にプレーンなオムレツを乗せると中央にナイフをいれて左右に開けば半熟のオムレツがとろりと飯を覆い隠して広がった。

 尚、試作のオムライスは厨房に居る他の料理人らが味見と称して分け合っているので無駄にはなっていない。

「有名店が発祥のオムライスらしい」

 これ以外にも炒めた中華そばを薄焼き玉子で包んだオムソバがあり、ソースや具材を変えた日々様々なオムライスが誕生している、と聞いて見習い料理人は頭を抱える。

「バリエーションが多過ぎんだよ!」

「まあ、基本さえ押さえておけばアレンジが自由なんだ。その時ある物でどうにでもなると考えた方がいい」

「……そーかい」

 そこで、セットしていたアラームが鳴り響き、チキンのディアボロ風の焼き上がりを告げた。

 料理の出来上がりは予定された食事の時間から逆算している。
つまり、タイムリミットは間近だ。
厨房は慌ただしさを増す。

「よっしゃ! やるとしますかねー」

 カニ(仮)はチキンを取り出して焼き加減を確認してから盛り付け、一輝が具材の煮え具合を確認したスープにミルクと隠し味の白味噌を加えて一煮立ち。
サラダもドレッシングで和え、ボウルに盛っていく。
スープに少し塩を足して味を調整して仕上げ、冷蔵庫から出したフルーツ寒天の固まり具合を確認すれば、待ち構えていた給仕達が食堂へ運び始めた。

 仕上げに家庭料理定番の薄焼き玉子で包むオムライスは一輝が、新種の洋食屋風なオムレツ乗せはカニ(仮)が担当する。
通常より大盛りの15人前を分担するのに2人は心許ないが、考えるより先に手を動かせば次々にオムライスは焼き上がっていく。

 給仕らと手分けしてメイン料理を食堂へ運べば、相当待ち遠しかったのか兄弟たちだけでなく居候まで勢揃いしていた。
手早くそれぞれのテーブルに配膳し、一輝とカニ(仮)も自分の席へ着く。

 途端、末っ子どもが揃って声を上げ、スプーンを手に取る。

「「「いっただきまーす!」」」

 もちろん、他の兄弟や居候らもそれぞれの流儀で食前の挨拶なり祈りを済ませるや、カトラリーを手にした。
最後に作り手2人も顔を見合わせ、彼らに続く。



   ★ ☆ ★ ☆ ★



 夕食後、今夜も居候たちは専用に開放されているサロンで寛ぎながらそれぞれ寝酒や読書を楽しんでいた。

「毎日、毎食、目新しく美味な食事を提供されると、日々の生活に張り合いが出るものだな」

 ロゼのスパークリングワインを注いだグラスを片手に、アフロディーテは上機嫌である。
向かいに座るシュラが冷酒のグラスを置き、出来立てのキツネピザなるツマミに手を伸ばす。
油揚げに醤油を塗ってチーズとシラスを乗せて焼いたものだが、ベースとなった油揚げのサクサクした食感と醤油の香ばしさやシラスの塩味が酒を進ませる。

「これがダイズというのが、未だに信じがたい……」

「この国の主食は米じゃなくて間違いなくダイズだって思うね」

 厨房でダイズ製品の一部を目の前に並べられた事のあるカニ(仮)はリモンチェッロのソーダ割りを煽る。

「エダマメに、イリマメ、ニマメまでなら理解できるさ。なんであれがミソペーストとソイソースになって、トーフがアブラゲやガンモになんだよ。トーニューの搾りカスのオカラすら炊いて食うとかどうなってやがる」

 とある日の朝食に出された油揚げの味噌汁にホウレンソウの白和え、卯の花にだし巻き玉子、納豆にサバの味噌煮というメニューの全てに大豆加工品が使われていると知って戦慄したのは記憶に新しい。
ヨーロッパでのワインや乳製品、トマトみたいな扱いだと思えと言われたが、その3種全ての代わりをダイズでしているのが恐ろしさを増すのだとは気付かれていない。

「……昼は本当にすまなかった」

 珍しくライトボディのドイツ産赤ワインを煽り、サガは双子の弟へ謝罪していた。
同じソファの反対側でアイリッシュウイスキーのロックグラスを掲げ、カノンは受け入れる。

「……お前の生活面での不器用さを侮っていたオレの甘さもある。謝罪はオレではなく他の奴らにしてくれ」

 昼食に出されたオムライスの最後の仕上げとして、それぞれが挑んだのがケチャップによる名前書きである。
兄弟たちが楽しげに、たっぷりとケチャップを使って自分の名を書き上げていく様は大変微笑ましかった。

 文字を覚え始めた子供に自分の名前を書けるようになりたい、と思わせる手段でもあるらしい。
なるほど、それならばやる気も出るだろう、と納得していたら次はお前な、と居候たちもケチャップを手渡されて困惑したが。

 ケチャップを更に掛けたらお前たちには甘くなり過ぎるだろう、と一輝がやらなくていいと言外に告げてくれたが、あまりにも兄弟らが楽しそうだったので居候らも悪ノリした。
ケチャップが多過ぎてもチリソースで多少は誤魔化せる、と聞いていたのもある。

「むしろ惨劇にならなくて幸いだった」

「……ああ、そうだな……」

 まだ書くには慣れない日本語と、カニ(仮)以外は扱った事もない屋台などで使われるケチャップの容器に悪戦苦闘しながら居候たちは銘々のオムライスに自分の名を書き入れた。
それはそれで楽しかったのだが、最後に挑戦したサガが力強く容器を握り過ぎてケチャップを暴発させるとは想定外、いや予想通り過ぎる。

 やらかすだろうな、と予想して構えていたカノンと一輝が咄嗟に予備のテーブルクロスを広げて周囲を囲っていなければ昼食も食堂も惨劇の現場───のようになっていただろう。
有能な使用人たちが手早く片付けに取り掛かってくれたが、自爆したサガの着替えやら後始末はこの2人がつけてくれた。
席に戻った頃にはせっかくの昼食が冷え切ってしまっていた事も含めて、作ってくれた一輝に申し訳ないサガである。

 それでも、とても美味しかった。
多少、甘過ぎる感はあったけれど、初めて食べるのに懐かしさを覚える不思議な味わいと余韻が忘れられない。

「次は、是非とも温かいうちに食べたいものだ……」

 そう、思うくらいに。

「……というか、オレたちはマジで一輝に面倒かけ過ぎなんだよなあ……」

「それは本当に、心より、猛省している」

 少し己の所業を振り返って居た堪れなくなってきた双子を他所に、カニ(仮)らは次回のオムライスについて意見を戦わせていた。

「やっぱりよー、ケチャップじゃオレらには甘過ぎたな。次はちゃんとしたトマトソースで作るわ」

「私としてはデミグラスソースやベシャメルソースで、というのも試してみたいがな」

「オムカレーやオムそばというのも心惹かれる」

 食べながら、次はこんな組み合わせのオムライスが食べたい、と兄弟たちは一輝にリクエストしていた。

 ガーリックライスにチーズオムレツを乗せ、ビーフシチューをソースとして掛けたもの。
シーフードピラフにプレーンオムレツを乗せ、クリームベースのクラムチャウダーやトマトベースのミネストローネをソースにしたもの。
カレーピラフにチーズオムレツとカレーソース。
ソース焼きそばを薄焼き玉子で包んでウスターソースとマヨネーズをかけたもの。

 オムライスには無限のバリエーションがある。
聞いているだけで、居候たちも食欲と好奇心が刺激された。
昼食を食べている最中だったにも関わらず。

「最近、食べる事が楽しみになったな」

「ああ、そうだな」

「そりゃいい。食は人生を華やかに彩ってくれる」

 だが、運動もしろよ。
とカニ(仮)は忠告する。

「でなきゃ、リキシになっちまうぜ」

 サロンは笑いに沸き立った。



 【続く】 
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡ 
WRITE:2023/11/13〜2023/11/28
UP DATE:2023/12/11
RE UP DATE:2024/08/17
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