見上げてごらん夜の星を
【1 再会】
[見上げてごらん夜の星を]
うちはサスケ。
18歳。
上忍。
過去、実の兄に一族を殲滅させられ、復讐の力を求めて里を抜けようとしたり、色々あった。
けれど今は仲間たちと自分なりの強さを目指し、日々任務と修行に明け暮れている。
今日は久しぶりに最初の仲間たちとスリーマンセルでの任務。
多少張り切って、サスケは家を出た。
そのせいだろう、待ち合わせ場所にはまだ誰もいない。
しかし、下忍時代に散々上忍師の遅刻に煩わされてきただけあって、悲しいが、待つことには慣れている。
それに、仲間たちも待つ辛さを知っているから時間には来るだろう。
待ち合わせ場所である橋の欄干に持たれ、サスケは腕を組んだ。
案の定、たいして待ちもせずに薄桃色の髪を風になびかせて、サクラが眼前に下り立つ。
「サスケくん、お待たせ!」
「いや、時間どおりだぜ」
サスケが里抜けをしようとした後、なにやら思うところのあったらしいサクラは5代目火影となった綱手に弟子入りし、医療忍術のエキスパートとなりつつあった。
そればかりか、生来のチャクラコントロールを生かした綱手直伝の強力な技も幾つか習得し、色々な意味で綱手2世の異名を得るまでになっている。
サスケと同じように欄干に腰を引っ掛けるようにして、サクラは短いスカートのスリットからのぞく形のいい足を組む。
サンダルはヒールが高く、爪はきれいに整えられた上にサクラ色に染められていた。
髪も長く伸ばし、額当てはその髪を纏めるように使われている。
これから任務に出るとは思えない格好だが、サクラはこれぐらいで戦えなくなる忍ではない。
それに彼女本来の能力は、後方にあってこそ発揮されるのだ。
まあ、大概の相手なら、充分最前線でもやりあえるが。
「ナルトは?」
「まだだ」
むっかりと返すサスケに、何故かサクラは苦笑する。
「アイツ、変なトコだけカカシ先生に似ちゃったみたいね」
「……ったく、あのウスラトンカチがっ」
そう吐き出した途端、2人の間に金色の閃光が飛来した。
「わっりぃっ!」
「遅い」
「なにやってたのよっ!」
3人同時に誠意のない謝罪と、諦め混じりの叱責が交差する。
「やー、そこでイルカ先生に会っちまってよー。で、すっげえ、久しぶりだったから、つい……」
「何がつい、よ!」
どーせ、そのまま、一楽行こうとかしたんでしょう。
サクラに詰め寄られ、身を小さくするナルト。
だがその体躯は充分に成長している。
下忍の頃は、仲間内で一番小柄なほうだった。
それが数年前から里を離れて自来也の元で修行をするようになってからぐんぐん伸びだし、今では仲間内で一番の長身になっている。
体重のほうは秋道一族と競うだけ無駄というもの。
それでも、男らしくがっしりとした体格になりつつある。
忍者としてもすばらしく成長したものの、昔からの破天荒ぶりもそのままで、師匠から『里の狂気』の名も継いでしまった。
そんな2人を見上げるサスケの眼はちょっぴり陰を含む。
何故なら、時々はカカシに写輪眼の扱いを含めて教えを受けてきたものの、殆ど自己流で鍛錬してきた自分と彼らを引き比べてしまうのだ。
忍術や体術、そういった物に不足はない。
チャクラ量ではナルトに、知力ではサクラに敵わないが、それを補ってくれる写輪眼が自分にはある。
ただ、1つだけ、手に入らない物があった。
それは、見上げる先にある、2人の顔。
そう。
見上げているのだ。
サスケが、サクラとナルトを。
何故か、サスケの身長は下忍の頃から殆ど伸びていなかった。
考えても仕方のないことだと、サスケは分かっている。
だが、それでも思ってしまうのだ。
もしも、もしもあの時、この里を抜けて大蛇丸の下へ行っていたら。
───オレも、少しは背が伸びてたか……
はるか頭上で繰り広げられる仲間たちの言いあいを聞きながら。
【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2005/08/20
UP DATE:2005/08/23(PC)
2008/12/08(mobile)
RE UP DATE:2024/08/13
[見上げてごらん夜の星を]
うちはサスケ。
18歳。
上忍。
過去、実の兄に一族を殲滅させられ、復讐の力を求めて里を抜けようとしたり、色々あった。
けれど今は仲間たちと自分なりの強さを目指し、日々任務と修行に明け暮れている。
今日は久しぶりに最初の仲間たちとスリーマンセルでの任務。
多少張り切って、サスケは家を出た。
そのせいだろう、待ち合わせ場所にはまだ誰もいない。
しかし、下忍時代に散々上忍師の遅刻に煩わされてきただけあって、悲しいが、待つことには慣れている。
それに、仲間たちも待つ辛さを知っているから時間には来るだろう。
待ち合わせ場所である橋の欄干に持たれ、サスケは腕を組んだ。
案の定、たいして待ちもせずに薄桃色の髪を風になびかせて、サクラが眼前に下り立つ。
「サスケくん、お待たせ!」
「いや、時間どおりだぜ」
サスケが里抜けをしようとした後、なにやら思うところのあったらしいサクラは5代目火影となった綱手に弟子入りし、医療忍術のエキスパートとなりつつあった。
そればかりか、生来のチャクラコントロールを生かした綱手直伝の強力な技も幾つか習得し、色々な意味で綱手2世の異名を得るまでになっている。
サスケと同じように欄干に腰を引っ掛けるようにして、サクラは短いスカートのスリットからのぞく形のいい足を組む。
サンダルはヒールが高く、爪はきれいに整えられた上にサクラ色に染められていた。
髪も長く伸ばし、額当てはその髪を纏めるように使われている。
これから任務に出るとは思えない格好だが、サクラはこれぐらいで戦えなくなる忍ではない。
それに彼女本来の能力は、後方にあってこそ発揮されるのだ。
まあ、大概の相手なら、充分最前線でもやりあえるが。
「ナルトは?」
「まだだ」
むっかりと返すサスケに、何故かサクラは苦笑する。
「アイツ、変なトコだけカカシ先生に似ちゃったみたいね」
「……ったく、あのウスラトンカチがっ」
そう吐き出した途端、2人の間に金色の閃光が飛来した。
「わっりぃっ!」
「遅い」
「なにやってたのよっ!」
3人同時に誠意のない謝罪と、諦め混じりの叱責が交差する。
「やー、そこでイルカ先生に会っちまってよー。で、すっげえ、久しぶりだったから、つい……」
「何がつい、よ!」
どーせ、そのまま、一楽行こうとかしたんでしょう。
サクラに詰め寄られ、身を小さくするナルト。
だがその体躯は充分に成長している。
下忍の頃は、仲間内で一番小柄なほうだった。
それが数年前から里を離れて自来也の元で修行をするようになってからぐんぐん伸びだし、今では仲間内で一番の長身になっている。
体重のほうは秋道一族と競うだけ無駄というもの。
それでも、男らしくがっしりとした体格になりつつある。
忍者としてもすばらしく成長したものの、昔からの破天荒ぶりもそのままで、師匠から『里の狂気』の名も継いでしまった。
そんな2人を見上げるサスケの眼はちょっぴり陰を含む。
何故なら、時々はカカシに写輪眼の扱いを含めて教えを受けてきたものの、殆ど自己流で鍛錬してきた自分と彼らを引き比べてしまうのだ。
忍術や体術、そういった物に不足はない。
チャクラ量ではナルトに、知力ではサクラに敵わないが、それを補ってくれる写輪眼が自分にはある。
ただ、1つだけ、手に入らない物があった。
それは、見上げる先にある、2人の顔。
そう。
見上げているのだ。
サスケが、サクラとナルトを。
何故か、サスケの身長は下忍の頃から殆ど伸びていなかった。
考えても仕方のないことだと、サスケは分かっている。
だが、それでも思ってしまうのだ。
もしも、もしもあの時、この里を抜けて大蛇丸の下へ行っていたら。
───オレも、少しは背が伸びてたか……
はるか頭上で繰り広げられる仲間たちの言いあいを聞きながら。
【続く】
‡蛙女屋蛙姑。@iscreamman‡
WRITE:2005/08/20
UP DATE:2005/08/23(PC)
2008/12/08(mobile)
RE UP DATE:2024/08/13