罪深き英雄

【5 獣はアイを叫ぶ】
   〜 罪深き英雄 〜
[愛を歌う5つのお題・サスナル編]



 騎士叙勲を受けてもまだ、1人前の騎士とは言えない。
 これから数人の若い騎士と組んで遍歴の旅をしながら腕を磨き、時には諸侯の傭兵として戦場で功績を上げなければ。

 騎士叙勲も儀式的なものだ。
 沐浴も、徹夜の祈りも、叙任者との刀礼も、拍車を銀から金に変えるのも。

 それでも、これがひとつの区切りになる。

 もう『フェルト男爵がエデルクナーベ』と、庇護者であるカカシの名で呼ばれることはない。
 廃絶された本当の家名を名乗ることができる。

 醜聞は広まっているから不利益を被るのは覚悟している。

 あいつに俺自身の名が届けば、それでいい。

「俺は皇帝騎士になる」

 騎士の最高称号を目指すのは誰も同じ。
 宮廷で策謀を巡らせてばかりいる奴らなら、俺が再興に固執しているか、帝位を狙っているとでも考えるだろう。
 
 皇帝騎士になるとことあるごとに繰り返していたあいつにさえ通じれば、構わない。

 いずれ皇帝に祭り上げられるあいつの一番近くに居てやれる、唯一の地位を俺は手に入れる。
 そして《絶対の忠誠を、君に捧げる》。



 【了】 
‡蛙女屋蛙姑。@ iscreamman‡
WRITE:2009/08/25
UP DATE:2009/08/27(mobile)
RE UP DATE:2024/08/19
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